イタリア・サッカー連盟(FIGC)は公式サイト上で「ユベントスのアニェッリ前会長に給与不適切計上問題など16ヶ月の職務停止処分および罰金が科された」と発表いたしました。
ただ、その一方でローマの行政司法裁判所が「イタリアのスポーツ司法制度は『EU 法』の理念に反する」との訴えを受理しました。こちらの案件の方が大きな影響を及ぼす可能性があると言えるでしょう。
アニェッリ前会長は『給与の不適切計上問題』で「16ヶ月の職務停止処分」を科されたことにより、『キャピタルゲイン疑惑』と合わせて「約3年の職務停止処分」となりました。
FIGC や UEFA は『スーパーリーグ構想』の首謀者(の1人)をサッカー界から実質的に追放できた訳ですから、枕を高くして眠ることができるでしょう。
以前と同様に「FIFA を頂点にした各大陸・各国サッカー協会は独占的な立場にある」と “不文律” で確認可能な状態に戻ったからです。
ところが、イタリアのスポーツ司法制度には新たな火種が生じました。
カルチョポリで表舞台から去ったユベントスのアントニオ・ジラウド元 CEO が進めていた法廷闘争でローマの行政裁判所が「スポーツ司法は EU 法の一般原則『効果的な司法保護』に反するとの訴えを審理する」と表明したのです。
- イタリアのスポーツ司法制度が抱える問題:
- 仕事を剥奪する裁定は『スポーツの正義』にのみ関わるのか?
- 株式会社への損害を被る懲戒手続きは一般司法を排除できるのか?
- 一般司法がスポーツ司法に対して有する管轄権は損害賠償のみなのか?
→ スポーツ司法の裁定は一般司法で覆せないのか?
一般司法で無罪となったカルチョポリでは「スポーツ司法が下した評決を撤回させる」などの『効果的な法的救済』は現在も採られていませんし、損害賠償請求についての判決も出ていません。
法治国家の司法機関は “スポーツ司法がカルチョポリで下した評決による実害を被ったままの被害者” が訴えた案件を粗雑に扱えないだけに FIGC や CONI (イタリア五輪委員会)が窮地に追い込まれる可能性は十分にあるでしょう。
ジラウド元 CEO の執念がどのような結末を迎えるのかに注目です。