イタリアサッカー連盟(FIGC)が公式サイト上でユベントスのアニェッリ前会長に下した「16ヶ月の職務停止処分」についての判決理由(PDF)を公表していましたので紹介いたします。“何も影響を与えそうにないこと” がニュースと言えるでしょう。
FIGC が問題視したのは「新型コロナの影響でリーグ戦が中断されたために年俸の支払いが凍結・放棄となった際の会計報告が不適切だった」ことです。
ユベントスは「不適切な会計問題の幕引き」との交換条件で “キャピタルゲイン疑惑” での『和解』を FIGC と締結。アニェッリ前会長のみが法廷闘争を続ける状況となっていました。
FIGC はアニェッリ前会長に「16ヶ月の職務停止処分を科した理由」を公表したのですが、大きな影響が生じることはないでしょう。戦いの場は『イタリアのスポーツ司法』ではないからです。
まず、アニェッリ前会長は “一般司法でのキャピタルゲイン疑惑による職務停止処分の抗告” を取り下げています。取り下げの理由は「ジラウド元 CEO による訴訟の審理を優先させるため」です。
- ジラウド元 CEO の提訴が結審すると、
- 原告(=ジラウド元 CEO)の勝訴
→ “一般司法の権限が及ばないスポーツ司法” にメスが入る - 原告の敗訴
→ イタリアのスポーツ司法制度は体制が維持される
- 原告(=ジラウド元 CEO)の勝訴
“スポーツ司法が有罪としたカルチョポリ” で表舞台から去ったジラウド元 CEO は一般司法では無罪でした。
しかし、スポーツ司法がカルチョポリで下した一連の判決や処分は「そのまま」です。また、損害賠償も行われておらず、損害を及ぼした管轄団体の組織改革も行われていません。
現状でアニェッリ前会長が「一般司法で無罪を勝ち取ったとしてもジラウド元 CEO と同じ状況になるだけ」です。したがって、アニェッリ前会長に対するスポーツ司法の判決が与える影響は限定的でしょう。
UEFA 主催大会への出場可否に対する裁定にどの程度の影響が及ぶのかが唯一の注目点になると思われます。