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コラム: ジュントリ FD らユベントスの新執行部はどこで何を間違えたのか

 アッレグリ前監督との別れ方は「スマート」とは言えないものでした。“悲しい別れ” になることが決定済みだったとしても、“当事者全員がマイナスイメージを負う別れ方” は回避できたはずです。どこで何を間違えたのかを考察することにしましょう。

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衝突は不可避だったアッレグリ監督とユベントスの現・経営陣

 ジュントリ FD が目指すと思われる『スタイル』は「サッリ監督時代のナポリ」であり「スパレッティ監督時代のナポリ」でしょうから、2023年夏の時点でアッレグリ監督と決別したかった思惑は理解できます。

 また、その思惑を敢行できなかった事情(=あまりに高リスクだった現実)も理解されるでしょう。

  • アッレグリ監督を解任したい理由
    1. 再就任から2シーズンは無冠
    2. 引いて守る消極的なスタイル
    3. ベテラン(の経験値)を重用するため、若手育成と相反する
  • アッレグリ監督を解任できなかった理由
    1. 新監督を雇用する経営的な余裕なし
    2. 「有事のリーダー」であり、チームの顔
    3. 現・経営陣は就任直後で実績なし

 ただ、アッレグリ監督との2025年夏までの契約を延長する考えを持っていなかったのであれば、新執行部は発足した2023年夏の時点で『必要最低限の行動』を起こしている必要がありました。

 ところが、現・経営陣はそれらの行動を起こしていなかったのです。したがって、「ジュントリ FD やスカナヴィーノ CEO らの “落ち度” がそもそもの元凶」と言わざるを得ないでしょう。

 

ジュントリ FD やスカナヴィーノ CEO は2023年夏の時点で何をしておくべきだったのか

 おそらく、ジュントリ FD は以下の項目を2023年夏の時点でアッレグリ監督に “通達していなかった” と思われます。

  1. 自らの職務権限
    • 自分(=ジュントリ)が FD でチーム、選手、監督を評価する立場であること
    • チームが今季目標を達成するために FD として必要なサポートは行う
    • 財務上の制限があるため、補強リクエストを満たすのは簡単ではない
  2. チームのスタイルおよび選手の起用方針
    • 例:ポゼッション率を高めて相手陣内に攻め込み、自ら仕掛けるチームスタイルの確立
    • 「今季を見据えた選手起用」と「来季以降を見据えた選手起用」のどちらを優先するのか
  3. 監督の評価基準
    • シーズン終了後に親会社の意向も踏まえた評価を行う
    • クラブの要求した今季目標をすべて達成したとしても、親会社や大口スポンサーが「続投に否定的」なら解任を通告せざるを得ない

 アッレグリ監督に伝えていたのは「(経営面で必要不可欠な)チャンピオンズリーグ出場権確保は至上命令」と「実質的にセリエA専念のシーズンなので Next Gen 輩出組の若手選手で登録枠を埋める」の2点 “だけ” だっただと思われます。

 Bチームでは『アッレグリ監督とは真逆のスタイル(≒ポゼッション型)』で選手が育成されていますし、新執行部は「アッレグリ監督に要望や評価基準を細かく伝える必要はない」と判断したのでしょう。

 ところが、この『事なかれ主義』が裏目に出る結果となりました。

 

アッレグリ監督が示してしまった『別解』

 ジュントリ FD は「アッレグリ監督は新執行部が考える『正解』には辿り着けない(ので今季終了後には解任理由ができる)」と高を括っていたのでしょうが、アッレグリ監督が『別解』を示したことで計算が狂いました。

  1. ジュントリ FD (や反アッレグリ派)が描いた『正解』
    • ヴラホヴィッチやキエーザを活かした『モダン・フットボール』
    • ポゼッション型のチームスタイルで(主に FW 陣の)選手評価額とチームのイメージを高め、スポンサーを獲得することで経営を再建
    • Next Gen 輩出組は外部から選手を獲得するための軍資金
  2. アッレグリ監督が 2023/24 シーズン前半戦で示した『別解』
    • 『特定のスタイル』に固執せず、勝点をコンスタントに獲得
      • スクデット大本命のインテルとのマッチレースを展開して前半戦を折り返す
    • Next Gen 輩出組を含む若手に出場機会を配分
      • 実績の少ない若手有望株は出場すれば評価が高まる
        • 例: ユルディズ、ニコルッシ等
      • シーズン開幕前の予想を上回るチーム成績を残すと DF/MF 陣の評価が上昇
        • 例: ガッティ、カンビアーゾ等
    • 次世代の若手有望株が魅力を感じる選手起用をし、トップチームで飽和した Next Gen 輩出組を売却して経営改善

 2023/24 シーズン前半戦にアッレグリ監督が示していた『別解』を採っていたとしても、目的である「経営再建」と「持続可能性の確立」の達成はできたと思われます。

 ただ、その場合は「ヴラホヴィッチとキエーザの損切り」が不可避な状況であり、それは現・執行部の思惑に反するものでした。だから、2024年1月の移籍市場以降から “妨害工作” に手を染めたのでしょう。

 

昨夏の時点で『評価基準』などを真摯に伝えていれば、問題が深刻化することはなかった

 ジュントリ FD が2024年1月以降に起こした問題行動は主に以下の3つ。これらは「妨害工作」と言われても止むを得ないものです。

  • ボランチ2選手を(選手の不祥事で)欠くも1月の移籍市場で補充せず
  • その代わりに2列目タイプのアルカラスを出場機会保証付きで獲得
  • メディアに「チームが一枚岩ではない」と書かせて不協和音を起こさせる

 選手補強に関してはボナヴェントゥーラ選手に「ユベントスのチーム総予算内での年俸+半年契約」を提示する “だけ” に留めておけば良かったのです。

 選手側が『オプションが付与した1年半契約』を求めたり、所属クラブのフィオレンティーナが獲得を拒否すれば、ジュントリ FD は「許容された予算範囲内で最善は尽くした」とアッレグリ監督に堂々と弁明できます。

 そうした行動は起こさず、逆に “チームのプラスにならない行動” に打って出たのですから反感を買うことは受け入れなければならないでしょう。

 また、2023/24 シーズン後半戦にチームが大失速した際に「監督解任」の可能性すら示唆できない事情を作っていたことが響きました。

  • 2023/24 シーズン後半戦にアッレグリ監督を解任するための根拠
    1. 成績不振: 2024年2月以降にチームは大失速
    2. クラブ方針との相違: 若手有望株の先発起用が明らかに減少
    3. 上層部の意向との相違: 守備的な戦術を採用

 「上層部の思惑に反する『守備的な戦術』を用いて『若手有望株の起用』も少なくなった上にチームが成績不振」だった訳です。この状況で「何もしなかった」のですから、アッレグリ監督には『評価基準』を通達してなかったのでしょう。

 2023年夏の時点で上述した『評価基準の通知』など FD としてやるべきことを “普通に” やっていれば、上述の理由を根拠に2024年3月の国際Aマッチデー期間前後に『最後通牒』は可能だったからです。

 

 要するに、雷に打たれたくない(=名指し批判をされたくない)との『事なかれ主義』で決断を先延ばしにしたことが最悪の結果(=「ユベントスが下手を打った」とのイメージ悪化)を招いたのです。

 組織の長として「 “通常の対応をしていれば発生を防げた問題” が大事になったこと」は猛省しなければなりませんし、余波の影響は現・執行部の責任で対応に当たる必要があります。

 ユベントスの執行部がどのような挽回策を講じるのかに注目です。