2023/24 シーズンのチャンピオンズリーグ出場権を逸したことでユベントスは否が応でも「出直し」を余儀なくされました。
今後は親会社 Exor の意向が色濃く反映された『経営再建プラン』が採られると予想されるため、先行きを整理しておくことにしましょう。
プライオリティーは持続可能な経営環境の確立
まず、クラブの最優先事項は「持続可能な経営環境の確立」に設定されるでしょう。具体的には「(親会社からの補填を頼りにしない)独立採算制の確保」です。
ユベントスは “以前から” 親会社 Exor のエルカン会長から「持続可能な経営を」と注文を付けられていましたが、マロッタ GM が退任した後は当期赤字額が拡大する一方でした。
事業費の増加分に合わせて売上高を伸ばすことができていれば、収支のバランスを保つことは可能です。
しかし、現実は「事業費を増やしたものの売上高を伸ばせずに赤字額が拡大した」のです。したがって、『増えた事業費の削減』から着手することは定石と言えるでしょう。
2023/24 シーズンは「年俸規律の回復」と「将来への布石」がテーマ
2023/24 シーズンにクラブ経営陣が最優先で行うのは「パラティチ CFO 時代に締結された『費用対効果の合わない現行契約』の清算」になるでしょう。
選手名 | 年俸 | 選手名 | 年俸 | |
---|---|---|---|---|
Szczesny (33) | €6.5m | GK | Perin (30) | €1.7m |
Pinsoglio (33) | - | |||
Cuadrado (34) | €5m | RSB | DeSciglio (30) | €1.7m |
Bonucci (35) | €6.5m | CB | Gatti (24) | - |
Rugani (28) | €3.5m | CB | Bremer (26) | €5m |
A. Sandro (32) | €6m | LSB | Danilo (31) | €5m |
Pogba (30) | €8m | RMF | Fagioli (22) | - |
Paredes (28) | €5m | DMF | Locatelli (25) | €3m |
Rabiot (28) | €7m | LMF | Miretti (19) | - |
Di Maria (35) | €7m | RWG | Soule (20) | - |
Vlahovic (23) | €7m | CF | Milik (28) | €3.5m |
Kean (23) | €3m | |||
Chiesa (25) | €5m | LWG | Kostic (30) | €3.5m |
Iling (19) | - | |||
€66.5m | 合計 | €29.9m |
高給組で “今季の” 費用対効果が見合ったのはシュチェスニー選手とラビオ選手ぐらい。他の選手によるピッチ上での貢献度は「半分の年俸額でどうなのか」という水準だったからです。
そのため、高給組には「契約満了での退団」か「今夏での退団勧告」が行われると予想されます。
また、2023/24 シーズン中に「2024/25 シーズン以降に向けた種を蒔いておくこと」も重要です。
具体的な目標は「Bチーム(= Next Gen)で洗練された選手のトップチーム定着」です。今季中に得た課題を組織としてどう克服するかが『将来への布石』となるでしょう。
Bチームは「アヤックス」と「ベンフィカ」のどちらをロールモデルにするのか
ユベントスはイタリアでセカンドチームを持つ唯一のクラブであり、Bチームから輩出される若手有望株をトップチームに組み込まない手はありません。
アヤックスやベンフィカなど手本とすべきクラブが実在しているからです。ただ、両クラブは特徴が異なります。
- アヤックス型
- 基本となるチーム戦術(4-3-3)で統一
- 育成部門で導入しやすい
- 高値での売却先が同じ戦術を採るビッククラブに限定
- ベンフィカ型
- 試合の流れを読むことも重要視
- 育成組織を機能させるハードルが高い
- 汎用性の高い選手が輩出されるので選手売却時に優位
どちらのクラブを参考するかは経営陣の責任で明確にすべきでしょう。担当者が変わることで『クラブの基本方針』まで揺らいでしまうのは好ましくないからです。
ユベントスの経営陣が『新 SD の人選』や『アッレグリ監督の去就』に関して静観しているように見えるのは「2023/24 シーズンの SD や監督が誰であっても経営目標に与える影響は軽微」という現実からあるからです。
“聖域なき大胆なコストカットができる有能な SD” と “歪な選手層に文句を言わずに結果を出すために尽力する監督” が 2023/24 シーズンのユベントスを率いているものと思われます。