レガ・セリエAは公式サイト上で「人種差別は許されない」との声明を発表いたしました。
ルカク選手への人種差別問題に対して発表されて声明なのですが、「 “特定条件下の人種差別にのみ” 反対する」とのリーグ機構側の姿勢が示されていることが問題です。根本的な解決にはならないと思われます。
アメリカに拠点を置くエージェントが騒いだことが理由
現地4月4日(火)に行われたコッパ・イタリア準決勝ファーストレグで人種差別チャントを浴びせられたルカク選手の件が大事になったのは「選手の代理人エージェントが遺憾の意を表明したから」です。
A statement from the President of Roc Nation Sports International, Michael Yormark on tonight’s incident involving Romelu Lukaku pic.twitter.com/VSrNOupwdh
— Roc Nation Sports International (@RocNationSI) 2023年4月4日
ルカク選手はラッパーの Jay-Z が立ち上げたロック・ネーションと契約しており、「弊社のクライアントが黒人差別を受けた」と “アメリカを拠点にする” エージェントが訴えました。
だから、アメリカ市場を失いたくないリーグ機構が普段ではあり得ないほどのスピードで対応したのです。
- レガ・セリエA: アメリカ国内向けの放映権を高値が売却したい
- FIFA: 次回の2026年W杯がアメリカで開催
ただ、問題なのは「アメリカに拠点を置く代理人エージェントと契約中の黒人選手への人種差別」しか機構側が動いていないことでしょう。そこが問題です。
ユベントスに所属する選手への人種差別は不問
具体的に言うと、ユベントスに所属する選手に対する人種差別では今回のルカク選手のような対応は全く採られていません。
- ケーン、マテュイディ: アウェイでのカリアリ戦で今回のルカクと同様の人種差別チャントを受ける
- ベナティア: 国営放送 RAI の衛星中継取材時に人種差別発言を浴びせられる
- コスティッチ: 今季第23節スペツィア戦、第25節ローマ戦、第27節インテル戦で人種差別チャントを受ける
上述したいずれの件も「人種差別的なチャントは確認されなかったので不問」となっています。
モウリーニョ監督は今季第28節ローマ対サンプドリア戦でサンプドリアのスタンコヴィッチ監督への人種差別チャントと止めるよう促したことで称賛されているようですが、これは茶番劇です。
第25節でユベントスと対戦した際に “(スタンコヴィッチ監督と同胞の)コスティッチ選手への人種差別チャント” を取り締まっていれば、スタンコヴィッチ監督への人種差別チャントが起きる可能性は低かったと考えれるからです。
ユベントスは自前スタジアムに多焦点カメラが設置済であり、「差別反対の姿勢と対処に必要な措置」をこれまでと同様に採ることでしょう。プレミアリーグのクラブと同等の対応が可能ですし、不測の事態でもないからです。
「(リーグ機構側が取り締まりに消極的な)ユベントスの所属選手が人種差別チャントの被害を受けたとアメリカで騒がれた場合」にレガ・セリエAが今回と同じ対応をするのかが注目点になると思われます。