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イタリア・サッカー連盟、セリエA放映権の希望額での売却に暗雲が立ち込めたことで焦り出す

 イタリア・サッカー連盟(FIGC)のグラヴィーナ会長がミラノにあるボッコーニ商業大学での講演で「セリエAの放映権料が大幅下落すると修復不可能な損害が出る」と危機感を露わにしたと『トゥット・スポルト』が報じています。

 ただ、この問題は FIGC を含む機構側が蒔いた種が原因です。自業自得を言わざるを得ないでしょう。

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2024年夏から『新たな放映契約』が始まるセリエA

 まず、セリエAのイタリア国内向け放映権は(法律の上限である)3年契約で現行契約は 2023/24 シーズンに満了するため、2023/24 シーズン中に『新契約』を締結する必要があります。

 ちなみに現行の放映権料は以下のとおりです。

表: おおよその放映権料
セリエA プレミアリーグ
国内 国外 国内 国外
21/22 30億ユーロ 6.7億ユーロ
22/23 60億ユーロ 60億ユーロ
23/24
24/25 新契約

 セリエAは『イタリア国内向けの放映権料』は年10億ユーロ弱(約1000億円)。これはプレミアリーグの『イギリス国内向けの放映権料』の半分程度です。

 しかもプレミア勢は『イギリス国外向けの放映権料』も大きいため、これが他国リーグとの資金力が広がる理由となっています。

 プレミア勢との資金力の格差が広がらないようにするには「セリエAの放映権料を高く売ること」が重要になります。ただ、イタリアは機構側がその芽を摘み取ってしまったのです。

 

放送・配信事業者に不義理を働いたことが仇となったイタリア・サッカー界

 グラヴィーナ会長がセリエA放映権の価格下落に懸念を示した理由は「セリエAの国内向け放映権をリーグ機構側の希望額で購入してくれる放送・配信事業者が見当たらないから」です。

表: イタリア国内の主な放送・配信事業者
放映権 備考
DAZN Serie A, B 現在の配信事業者。FIGC による司法騒動で “解約祭り” の影響を被る
Sky Serie A,
UEFA
サブライセンスでセリエAを配信。メイン配信事業者だった前契約時にコロナ禍での放映権料問題で泣き寝入り
Mediaset Coppa 年2億ユーロまでのサブライセンスなら応札してくれるかも
Amazon UEFA CL 期待薄。「人気カードのみの独占配信を希望するのでは?」との見立て

 現行契約で放映権を有している DAZN は『FIGC のお気持ち制裁』で今季のセリエAが実質的に終戦したことによる “解約祭り” に直面。「現行の放映権料が割に合わない」と痛感させられたことでしょう。

 そのため、DAZN イタリアが「年10億ユーロ弱の放映権料」を購入する可能性は期待できません。

 次に DAZN の前に『セリエAのイタリア国内向け放映権』を有していたスカイ・イタリアは「コロナ禍での日程変更による放映権料の値下げ」を拒絶されて泣き寝入りを強いられた過去があります。

 スカイは「年10億ユーロ弱の放映権料」を落札しなかったため、現在はサブライセンスでの配信となっているのです。機構側の希望額に応じる可能性は少ないと言わざるを得ないでしょう。

 メディアセットやアマゾンは「配信プラットフォームは有しているものの収益を確保できる可能性が高い人気カードだけを放送したい」という立場です。『リーグ全体の放映権料』を一括で購入することは望めないでしょう。

 

CONI が「ユベントスの勝点を剥奪する処分は不当」としても後の祭り

 FIGC (やセリエA)が「CONI (イタリア五輪委員会)の控訴審で勝点剥奪の判決は不当とされれば問題ない」と考えているのであれば大きな代償を支払うことになります。

 放映権は「最終順位に至るまでの過程」に付く価格なのです。

 ところが、キャピタルゲインゲート問題では “特定のチームだけ” に恣意的な処分を科したことで過程が歪められてしまいました。

 放送・配信事業者が「帳尻を合わせたので問題ない」との主張に理解を示すことはないでしょう。過程が歪められたことで生じる(視聴者離れなどの)損害を被るのは放送・配信事業者だからです。

 CONI が判決を覆すだけでは「後の祭り」であり、FIGC の連盟裁判所の体質が変わらない限りはカルチョの衰退は進行し続けることになると思われます。

 

 『スーパーリーグ構想』への批判的な見解がリーグ機構や協会から示されていますが、「『スーパーリーグ構想』の方が『既存の統治体系』よりもマシ」と考える人が増えては逆効果です。

 セリエAや FIGC の立ち振る舞いは「スーパーリーグ構想推進派のアシスト勢力」となっており、スーパーリーグ構想の行方を見極めた上で放映権料を確保したい放送・配信事業者が慎重になるのは想定されたことと言えるでしょう。