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コラム: ユベントスが 2021/22 シーズンの時点で採用中の若手育成方針で FIGC から文句を言われる筋合いはない

 イタリア代表がカタールW杯のプレーオフで敗退したことを受け、イタリア・サッカー連盟(FIGC)のグラビーナ会長が「クラブ側の育成体制に問題がある」と試合後の記者会見で言及していました。

 UEFA が『クラブ内育成制度枠』を設けているため、ユベントスも若手育成に尽力していることは事実です。ユベントスが FIGC から「若手育成への投資」で文句を言われる筋合いはないでしょう。

画像:ユベントスのプリマベーラ
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Bチーム(= U-23)を設立して “舞台” は整えたユベントス

 2018/19 シーズンからBチーム(= U-23)を運用しているユベントスは『若手選手を育成するスキーム』が過去記事で言及したように確立済みです。

画像:Bチームを用いた新しい選手育成スキーム

 プリマベーラは U-19 と定義されているものの、ユベントス・プリマベーラの主力は18歳になる2004年生まれを中心に編成されています。

 しかも、スーレ選手やミレッティ選手など今年19歳の誕生日を向ける “プリマベーラ年代” の選手であってもBチームの主力として引き上げる「飛び級」も行われています。したがって、ユベントスは必要な措置を講じていると言えるでしょう。

 

ユベントスは「段階を踏むこと」を重要視

 10代の若手有望株がセリエAで輝くことを望む人はいるでしょうが、それは例外であることに留意する必要があります。それにユベントスでは「段階を踏むこと」を重要視しています。

表: 下部組織出身の若手選手の現状(2021/22 シーズン)
下部組織出身の主な選手
トップ
チーム
主力
控え ケーン、ピンソーリョ
セリエA
(中・下位)
アウデーロ、ドラグシン、デッリ・カッリ、フラボッタ、カスタノス、ポルタノーバ、(ロベッラ)
Serie B
(or スペイン2部)
GK
DF ベルアット、コッコロ、カペッリーニ、ゴッツィ、(ガッティ)
MF ディ・パルド、ファジョーリ、ラフィア、ラノッキア
FW F・コレイア、A・マルケス、オリビエリ、ザニマッキア
U-23
(Serie C)
ニコルッシ、スーレ、アケ、ミレッティ、デ・ウィンター、リッチオ
Primavera
(U-19)
(候補者多数のため割愛)

 「『所属カテゴリー』で抜きん出た成績を(少なくとも半年間は継続して)残した選手が『1つ上のカテゴリー』に挑戦している」と言えるでしょう。ここで問題となるのは『期待値』です。

  • 若手有望株が持つ『期待値』をどう活用するか?
    1. (セリエAの)トップチームでポジション争いをするために行使
    2. 『今より1つ上のカテゴリー』で主力待遇を得るために行使

 “セリエAの上位に位置するクラブのプリマベーラに所属する選手” はトップチームで出場機会を得るには「3段階の飛び級」が基本的に必要です。

 ここで『期待値カード』を使っても「控え待遇」からスタートは避けられません。しかも、数少ない出場機会が巡って来た時に「一発回答」ができなければ、実績を積み重ねられないまま若手有望株の期間が終わってしまう問題があります。

 しかし、「セリエB(またはセリエC)で突出したプレーをシーズンを通して見せた」との実績があれば『1つ上のカテゴリー』への扉を “実力で” 開くことができます。どちらが良いかは価値観の違いであり、当事者の意向を尊重すべきでしょう。

 

若手有望株にとっての一番の大敵は「長期離脱を強いられる大怪我」

 若手選手を育成する上で大敵となるのは「長期離脱を強いられる大怪我」でしょう。前十字靭帯を断裂してしまうと、半年から1年ほどの離脱を強いられてしまうからです。

 その間の成長はストップしてしまいますし、『期待値カード』の効力も薄れてしまうことが理由です。

 また、翌シーズンの所属先チームにも影響が及ぶことは否定できません。選手契約が残っている間は「保有権を持つチーム」が面倒を見てくれますが、ブランクを埋めるプレー機会を確保できるチームを見つけることは簡単ではないからです。

 

“多種多様な点取り屋” をどう育成するのかが最大の問題

 “イタリア代表” が抱える育成の問題としては「点取り屋の育成をどうするか」が最も深刻なはずです。

 クラブチームは「自前で育成できなかったポジション」は国外から選手を獲得することが可能ですが、イタリア代表は『その解決策』を使うことはできません。したがって、「点取り屋の育成」が重要になるのです。

 ただ、画一的な育成方針で点取り屋を輩出すると決定力不足に直面するリスクがあります。これは『型』に沿った育成をすると、相手の対策で簡単に封じられてしまうケースが生じるからです。

 したがって、「 “型破りな FW” も育つ環境を整えられるか」が FIGC の課題になるでしょう。

 

 クラブチームはイタリア代表や FIGC の下請けではありません。20歳前後の若手有望株の積極的な起用は「選手個人」と「FIGC」にはメリットばかりですが、リスクはすべて「クラブ」が背負わされているのです。

 若手選手に経験を積ませたいのなら、セリエAに『U-21 イタリア代表』を “20番目のチーム” として参入させるなど手はあります。クラブは「代表チームのために選手を育成しているのではない」という現実を踏まえて対処する必要があるはずです。