2018/19 シーズンからユベントスはイタリアで最初となるBチーム(= U-23)を発足し、セリエCを戦っています。ユベントスの「狙い」と「Bチームの現在地」を確認することにしましょう。
1:Bチームの目的は「22歳前後で選手を完成させ、セリエA相当のクラブに売却」すること
ユベントスがBチームを発足させた目的は「22歳前後で選手を “完成” させ、セリエAと同等の競技レベルを持つクラブに売却すること」でしょう。
これまではプリマベーラ(= U-19)がトップチームの直下に位置していましたので、「10代の時に選手として “完成” していること」が大前提でした。しかし、これでは “遅咲きの選手” が才能を開花させる前にキャリアを終えてしまうという問題が横たわっています。
そのため、「トップチームの庇護下で23歳まで在籍することが可能なBチーム」が設立されたと言えるでしょう。これにより、選手の育成スキームは以下のように変化すると考えられます。
プリマベーラからは「Bチーム昇格」が基本ルートとなり、「トップチーム経由で他チームにレンタル」は少数派になるはずです。肉体的・技術的に “完成” された選手でなければ、従来型スキームの対象になることはないでしょう。
2:初年度の目標である「セリエC残留」は達成の見込みであり、2年目以降の躍進が求められている
Bチームの現状ですが、「1年目の最優先目標である『セリエC残留』は達成できそう」という段階です。
23歳以下の選手に出場機会を与えるため、セリエCに残留することは絶対条件です。残り7節で降格圏との勝点差12を付けている状況ですから、「残留」は達成できると言えるでしょう。
したがって、2年目(= 2019/20 シーズン)以降は「Bチームを洗練させること」が要求されることになります。
- セリエCのトップハーフ(= セリエB昇格プレーオフ圏内)に位置する地力を付ける
- チームの哲学を反映した『ゲームモデル』を確立し、Bチーム内に根付かせる
Bチームは「完全な手探り状態」で産声を上げたのですから、ある程度の迷走は止むを得ません。しかし、2シーズン目となる来季以降は「迷走の度合いを少なくすること」でチームが成長したことを示す必要があります。
これが「チームとしてBチームが躍進した」と言える根拠になるでしょう。
3:「トップチームに定着できる選手」が下部組織に在籍しているかは “運” による要素が大きすぎる
ユベントスのトップチームに定着できる選手が下部組織から数多く出てくれば理想的なのですが、現実には難しいでしょう。なぜなら、「運による要素が大きすぎるから」です。
チャンピオンズリーグのタイトルを本気で狙うのなら、「世界最高峰の選手たちでチームを編成すること」が求められます。
ただ、『世界最高峰の選手』を “育成年代で” 引き当てられるかは「運」による要素が大きく、世界最高の育成組織を保持していることとは何の関係もありません。これはバルセロナやアヤックスが示していることです。
そのため、「年代ごとに選手を育成・売却することで、『世界最高峰の選手』を獲得するための資金源にする」というモデルに力を入れることが考えられます。
選手名 | |
---|---|
'97 | アウデーロ(2000万ユーロ)、リロラ(700万ユーロ+α)、ロマーニャ(760万ユーロ)、カッサータ(700万ユーロ)、ファビッリ(ジェノア) |
クレメンツァ | |
'98 | ロジェリオ(サッスオーロ) |
デル・ファベロ、ベルアット、ムラトーレ、M・ペレイラ、カスタノス | |
'99 | ー |
ロリア、ザナンドレア、L・フェルナンデス、オリビエリ | |
'00 | ケーン |
マコウン、ポルタノーバ、ニコルッシ、アンツォリン | |
'01 | ー |
バンデイラ、ゴッツィ・イウェル、ファジョーリ、ペトレッリ |
「世界最高峰の選手を毎シーズンに渡って輩出し続けること」は非現実な目標です。しかし、「世界最高峰の選手を獲得するための資金(= 約3000万ユーロ強)を毎シーズンに渡って輩出すること」であれば、可能性はあります。
プロビンチャ(= 地方のクラブ)であっても、セリエAのチームでポジション争いに挑む20代前半の選手には「1000万ユーロ前後」の値札が付くのです。
運の要素を極力排除し、移籍市場で 3000〜4000 万ユーロを費やせる予算を生み出し続ける方が合理的です。他チームのプリマベーラに属する選手も似た立場にあるのですから、先行性を活かせるかがポイントになるでしょう。
Bチーム(= U-23)の運営を上手く軌道に乗せることができるのか。ユベントスの長期的な経営戦略の行方にも注目です。