『フランス・フットボール』によりますと、「FIFA が若手選手の保有権を獲得し、売却益を得る手法は悪質」との理由で期限付き移籍を制限する方針を持っているとのことです。今年の10月に承認される可能性もあるだけに、展開を見守る必要がありそうです。
FIFA の懸念事項
FIFA が問題視しているのは次のようなスキームが横行しているからでしょう。
- 若手有望株選手の保有権を “青田買い” する
- 保有権を持つクラブは下部カテゴリに当該選手を期限付き移籍させる
- 成長した選手を売却し、利ざやを稼ぐ
「選手を発掘し、育成して売却益を得る」ことは問題ではありません。ポルトガルのクラブに代表されるように、保有権を持つ選手をクラブに所属させて成長を促し、ビッグクラブに売却するケースに懸念を示される理由などないからです。
ただ、別のクラブに多くの選手を期限付き移籍させるようだと、FIFA が「不適切」と見なすことになると思われます。当該選手の保有権を持つクラブで出場機会がなければ、そうした動きが活発化して当然だからです。
イタリアは構造的に期限付き移籍が多くならざるを得ない
イタリアはリーグの構造的に期限付き移籍をする選手数が多くならざるを得ません。それは過去に言及した「Bチームも U-23 も存在しないこと」が理由です。
プリマベーラ(U-19)が終わった時点で「トップチームの戦力」になれるのは世界で数人レベルでしょう。
近年ではキリアン・ムバッペ選手(現:PSG)ぐらいです。20台前半で頭角を現わす選手であっても、Bチームや U-23 を経てトップチームに定着しているのです。
この部分で改革が進まないイタリアは FIFA の規制による影響を大きく受ける可能性が高いと言えるはずです。
ユベントスは「期限付き移籍」の見直しを始めている
ビッグクラブにメリットが大きい期限付き移籍ですが、デメリットがない訳ではありません。1番のデメリットは「チーム事情で突如として出場機会が消滅すること」でしょう。
どれだけ良いパフォーマンスを見せていても、「チームの順位は固まったから、来季に向けた選手起用をする」と判断が下された時点で期限付き移籍中の選手は出場機会が得られなくなるのです。ベネチア(セリエB)に在籍する GK アウデーロ選手がこの問題に直面しており、あまり歓迎できることとは言えません。
ユベントスは対策として、セリエAに残留することが固いチームに若手有望株を完全移籍させ、買い戻しができるオプションを組み込む形に移籍戦略を変化させています。
- DF: フィリッポ・ロマーニャ(→ カリアリ)
- MF: ファブリツィオ・カリガラ(→ カリアリ)
- MF: フェデリコ・マッティエッロ(→ アタランタ)
- DF: ポル・リロラ(→ サッスオーロ)
リロラ選手を除く3選手はユベントスの『クラブ育成選手』であり、保有権を手放すことは考えられないことでした。選手の出場機会を確保する方向に変化しており、保有する選手数が整理される可能性も十分にあると思われます。
マロッタ GM を始め、ユベントスのフロント陣がどのような戦略でチーム力を維持するのかに注目です。