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交換トレードを使った UEFA FFP の “抜け穴” を突く方法

 ユベントスとバルセロナがピアニッチ選手とアルトゥール選手の交換トレードを成立させた理由として「UEFA ファイナンシャル・フェアプレーの制裁回避」が理由として指摘されています。この抜け穴の使い方について言及することにしましょう。

画像:ユベントスのフロント陣
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■ 2019/20 シーズン会計期に売上高を記録することが最大の狙い

 ピアニッチ選手とアルトゥール選手の交換トレードが成立した理由は「クラブ会計上の事情」があるからです。まず、会計で『どの規則』を適用するかは各クラブの自由です。

  1. 選手の売却益を計上するタイミングは?
    1. 退団が決定した時
    2. 移籍金が支払われた時
  2. 選手獲得に擁した費用を計上するタイミングは?
    1. 獲得が決定した時
    2. 移籍金を支払う時
    3. 減価償却を行う時

 どのタイミングで売上高や費用を計上しても(会計のルール上は)良いのですが、“経営” をしているのですから、「クラブの利益が最大化となるタイミングで計上される」ことが王道です。

 そのため、売上高は「選手の退団が決定した時点で一括計上」され、獲得費は「選手との契約年数で減価償却」が採られています。

 だから、『交換トレード』が “抜け穴” として利用可能であり、2019/20 シーズンの会計年度中の移籍成立にユーヴェとバルサが奔走したのです。

 

■ ピアニッチとアルトゥールのトレードによる影響

 ピアニッチ選手とアルトゥール選手の交換トレードがユベントスのクラブ会計に与える影響を図示すると以下のようになります。

画像:ピアニッチとアルトゥールの交換トレードによるユベントスの会計への影響

 ユベントスが欲しかったのは「2019/20 の売上高」です。

 ピアニッチ選手の『売却益(= 6000万ユーロ)』は『残りの減価償却費(= 約1200万ユーロ)』や『連帯育成金』などを『差し引いた額(= 4000万ユーロ強)』を利益として計上できます。

 その一方でアルトゥール選手の獲得費が会計上に現れるのは「2020/21 シーズンの会計」からです。

 UEFA がファイナンシャル・フェアプレー(FFP)で見ているのは「会計」だけですから、“時間差を利用した会計テクニックを使うクラブ” が現れることになるのは予想されたことと言えるでしょう。

 

■ ユベントスは『交換トレード』を使った “粉飾決算” の常習犯

 ユベントスとバルセロナの間で行われた『交換トレード』がファンから不評を買っているのは「クラブ経営上の理由」によるものだからでしょう。「編成上の理由」で行われた交換トレードなら批判を招くことは少ないと言えるからです。

 また、ユベントスの場合は常習的に『交換トレード』を使った粉飾に手を染めていることが問題です。

表: ユベントスが行った交換トレード
シーズン 放出した選手 獲得した選手
'17 夏 2017/18 ロマーニャ
【760万ユーロ】
デル・ファブロ
【450万ユーロ】
'18 夏 2018/19 カルダーラ
【3500万ユーロ】
ボヌッチ
【3500万ユーロ】
'19 夏 スピナッツォーラ
【2950万ユーロ】
ペッレグリーニ
【2200万ユーロ】
2019/20 カンセロ
【6500万ユーロ】
ダニーロ
【3700万ユーロ】
'19 冬 M・ペレイラ
【OP: 800万ユーロ】
A・マルケス
【820万ユーロ】
'20 夏 ピアニッチ
【6000万ユーロ】
アルトゥール
【7200万ユーロ】
P・モレノ
【1000万ユーロ】
F・コレイア
【1050万ユーロ】

 今季サッスオーロでコロナ禍の前までで18試合に出場しているロマーニャ選手は2017年夏にカリアリへの売却されましたが、当時の実績から「移籍金300万ユーロ弱」は十分な評価です。そこにセリエBでの実績までしかないデル・ファブロ選手の評価額が “不自然に” 上乗せされているのです。

 『交換トレード』で動いた金額は毎シーズン増加傾向にありますし、錬金術に手を出していることは否定できないでしょう。パラティーチ CFO は拡大路線を進んでいますが、クラブ財政は火の車です。危ない橋を渡る必要のない安定した経営に戻ることができるのかに注目です。