2019/20 シーズン後半戦が再開しますが、サッリ監督を迎えたユベントスは失点数の増加が懸念材料となっています。“穴” を突かれる形で失点を重ねており、どのように修正策を講じるのかが注目点と言えるでしょう。
■ 自陣に押し込まれた時も「守備のラインが低すぎること」が問題
サッリ監督は「ハイラインを設定することを好む指揮官」ですが、それができていないことが問題です。しかし、失点数が増えている理由は「相手に押し込まれた時の守備ラインが下がりすぎること」です。
その典型例はスーペルコッパのラツィオ戦でも見られました。
ラツィオの先制点となった前半16分の場面ですが、これは DF ラインが下がり過ぎています。ペナルティーエリア手前(の右ハーフスペース)に陣取るインモービレ選手を(逆サイドのハーフスペースを守るはずの)MF ベンタンクール選手が見ているのです。
ボヌッチ選手ら DF ラインの選手はペナルティーエリア内で最終ラインを形成しているのですから、これはサッリ監督の守備コンセプトに問題があると言わざるを得ないでしょう。おそらく、アッレグリ監督であれば以下の守備を敷いていたはずです。
インモービレ選手は左 CB のボヌッチ選手がマーク。中盤 MF はJ・コレア選手とL・アルベルト選手へのパスコースを切るポジショニングをしていれば、守備が瓦解するまでには至らなかったでしょう。それだけ守り方は要改善なのです。
■ 王者リバプールは「アッレグリ監督の守り方」を採用している
ちなみに、王者リバプールの守り方はアッレグリ時代のユベントスと似た形です。19節レスター戦での守備を例に出すことにしましょう。
84分の場面ですが、レスターは CB のソユンク選手が持ち上がり、左サイドでアレクサンダー=アーノルド選手のタックルをかわして中央にまで侵入しています。
この時、リバプールの守備陣は MF ララーナ選手が最終ラインに下がって4バックを形成。“ペナルティーエリアの手前” に最終ラインを置く形を採用しています。
ソユンク選手は右サイドへの展開が不可能だったため、ドリブルの向きを変更。リバプールは最終ラインからララーナ選手が最終ラインから “迎撃” に向かうも、大外でボールを呼ぶバーディ選手へのラストパスを通されてしまいます。
しかし、J・ゴメス選手がバーディ選手へのチェックに向かい、「ニアを狙ったシュート」に選択肢を限定することでシュートはサイトネット。レスターはチャンスを活かすことはできませんでした。
時間とスペースがあれば、エース級の選手はゴールを決める確率が上がることでしょう。サッリ監督の守り方はそれを許しているのですから、後半戦での改善点となるはずです。
■ 完全ゾーンディフェンスの弊害も無視できるものではない
また、相手チームが深い位置にまで攻め込んだ際の守り方も改善する必要があります。
相手がサイドでペナルティーエリアの高さにまで持ち上がった時、サッリ監督は「『4-3 の守備ブロック』を『中央のレーン』に作り、『完全ゾーン』で守ること」を基本にしています。
セットプレー時なら、『完全ゾーン』でも守れるでしょう。しかし、オープンプレーでは “誰も見ていないエリア” が存在していることは問題となります。
具体的には「『ニアとファーのハーフスペース(= 2箇所)』と『ペナルティーエリアの手前』を見ている選手がいない」のです。
(1度なら偶然ですが)2失点ともに同じ形で攻められていたのですから、守備の問題点がラツィオに認識されていたと言わざるを得ないでしょう。
“特定の状況で浮き彫りになる弱点” を放置したままだと、シーズン後半戦には徹底的に突かれる事態を招くことでしょう。そうなると失点数が減る見込みはありません。サッリ監督が「自陣深い位置での守備」という課題にどう対応するのかに注目です。