セリエAの第9節を終えて4勝5分と “ドロー・コレクター” になっているピルロ監督のユベントスですが、前任のサッリ監督と同じ問題を抱えつつあります。「守勢に回った際にスペースが空いていること」は問題と言えるでしょう。
■ ベネベント戦の失点はショートコーナーへの警戒を完全に怠ったこと
ベネベント戦で勝点を取りこぼすことになったのは「前半49分の失点」ですが、その原因は「ミスにミスが重なったから」です。具体的に指摘することにしましょう。
まず、右 CK を許したユベントスは全員がペナルティーエリア内を固めることを選択します。
ところが、『ショートコーナー』の選択肢をユベントスは最初から除外しており、ベネベントがショートパスを出したことに気づいたディバラ選手が慌ててカバーに向かいます。
しかし、レティツィア選手がボールを確保。ディバラ選手は遅れるものの、レティツィア選手の右足でのクロスは防ぐことには成功します。
ただ、クロスとパスコースを両方を寸断することはできず、CK を蹴ったカプラーリ選手にボールを持たれてしまいます。
カプラーリ選手は「(利き足とは逆の)左足でのクロス」を入れれたのですが、中央の状態がベネベントに良いとは言えないこともあり、スキャッタレッラ選手へのパスを選択します。
ユベントスは「ショートコーナーが無警戒」というミスはしたものの、ディバラ選手の献身で直接的な影響は回避できました。ですが、この後のプレーで手痛い代償を支払うことになります。
■ アルトゥールがペナルティーエリア外まで蹴り出せていれば…
カプラーリ選手からボールを受けたスキャッタレッラ選手は右ハーフスペースに侵入するカプラーリ選手へのリターンパスを選択します。
一方、ラインを押し上げていたユベントスはスキャッタレッラ選手の動きが正面で見えていたアルトゥール選手が急ブレーキ。自身の背後を狙ったパスに備えます。
展開はアルトゥール選手の読みどおりの位置にパスが来たため、ここでクリアかと思われました。
しかし、左足でのトラップになったことでボールはペナルティーエリア内までしか飛ばず。エリア手前で見守る形になっていたレティツィア選手が押し際をボレーで合わせて同点ゴールを決めるユベントス側から見て悔やまれる展開となりました。
アルトゥール選手が「足元にボールを落とす」か「エリア外まで蹴り出す」かのどちらかができていればシュートはなかったでしょう。中途半端な対応だったことが代償になったことは否めません。
■ 「攻撃時のポジショニング」に比較すると「守備時のポジショニング」があまりに雑
ピルロ監督のスタイルは「サッリ監督と似ている」と言えるでしょう。ボールを保持した際の志向はビルドアップ時に独自色が出るため『違い』を感じますが、抱えている問題は同じだからです。
- ファイナルサードでの崩しの型や方向性が不明瞭のまま
- 守備時にスペースが空いた際の『埋める基準』が未設定
サッリ監督も「逆サイド(の大外レーン)に展開されての攻め上がり」を許したり、「押し込まれた際に左右のハーフスペースを見る選手が不在」という問題を抱えたままでシーズンを終えました。
スペースを常に埋めておくことは不可能ですが、空いたままにしておくことは問題です。「サイドライン際からのクロス」は止むを得ないにしても、「ペナルティーエリア内のハーフスペースで相手選手を自由にすること」は防ぐ『動きの基準』は用意しておくべきでしょう。
ベネベント戦だと「ディバラ選手とキエーザ選手の2人でカプラーリ選手とレティツィア選手を見ることで消せていれば理想」でした。
こうした細かい動きを要求していくことで手堅い守備は可能になりますが、攻撃に重きを置くピルロ監督がそれをできるのかが問題です。中盤 MF のパフォーマンスを含めて改善できるのかに注目です。