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戦術分析: サッリの守備コンセプトが抱える欠点を上手く突いたラツィオ(2019 スーペルコッパ)

 12月にラツィオと2度対戦したユベントスはどちらも 1-3 で敗れました。守備で抱えている欠陥をラツィオのインザーギ監督に上手く突かれていましたので、その部分を指摘することにしましょう。

画像:ラツィオに連敗を喫したサッリ監督
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■ スーペルコッパの前半16分すぎの場面に問題点が集約されている

 サッリ監督は「守備のラインが低い時に失点をしてしまう」と嘆いていますが、スーペルコッパで1失点目を許した前半16分すぎに「今のユベントスが抱える守備の問題点」が集約されています。

画像:2019 SuperCoppa Juv-Laz 1

 ラツィオの右 WB ラッザリ選手がボールを持ち上がり、ミリンコビッチ=サビッチ選手に戻した場面ですが、明らかな “欠陥” が存在します。

 それは「ペナルティーエリア直前の右ハーフスペースに陣取るインモービレ選手を “逆サイドのハーフスペース” を担当する MF のベンタンクール選手が見ている」という点です。

 相手チームのエース FW がボックス近辺で待ち構えているなら、CB がマークに付くことでしょう。しかし、サッリ監督のユベントスは逆サイドを担当する MF が “本来の持ち場” を外れてマークに付き、完全フリーの選手(= L・アルベルト選手)を作っているのです。

 この状況では守り切れる方がおかしいと言わざるを得ないでしょう。

 

■ デ・シリオがデュエルでルリッチを圧倒すれば、守備の欠陥は隠し切れた(かもしれない)

 中にカットインしたミリンコビッチ=サビッチ選手は正面でフリーになっているL・アルベルト選手にボールを預けます。

画像:2019 SuperCoppa Juv-Laz 2

 この時、DF ラインの裏を狙うインモービレ選手がボールを要求しているのですが、L・アルベルト選手の身体が左サイドを向いていたため、より確実な「大外のルチッチ選手への展開」が選択されます。

画像:2019 SuperCoppa Juv-Laz 3

 ユベントスの守備は「ボールホルダーのルリッチ選手にはデ・シリオ選手が対応」し、ボックス内では「4-3 のゾーンディフェンス」で守る形を選択しています。

 ここで、デ・シリオ選手がルリッチ選手とのデュエルを制してくれれば事なきを得たのですが、そうは行かず、クロスを上げられてしまいます。

画像:2019 SuperCoppa Juv-Laz 4

 試合後の採点で「ミリンコビッチを見れなかったA・サンドロ」が厳しい批判をされていますが、これは筋違いでしょう。

 なぜなら、A・サンドロ選手はインモービレ選手を見ているため、背後のミリンコビッチ=サビッチ選手も見るのは不可能だからです。

画像:2019 SuperCoppa Juv-Laz 5

 その結果、ミリンコビッチ=サビッチ選手がボールの処理に成功。自らシュートは打てなかったものの、マークされていなかったL・アルベルト選手にボールが渡り、先制点が生まれました。

 ラツィオはユベントスの守備陣形が抱える “穴” を状況に応じて的確に突いていたのですから、これは事前のスカウティングで問題が浮き彫りにされていたと見るべきだと言えるでしょう。

 

■ 73分の2失点目も似た形でゴールを許している

 1度だけなら「偶然」で済ますことは可能ですが、2度も続くことは必然の度合いが増します。2失点目を許した72分すぎからの試合の流れを確認することにしましょう。

 ラツィオは左サイドから組み立てていたものの、パスコースが制限されている状態でした。そこでカタルディ選手が右サイドに余っていたラッザリ選手へのサイドチェンジを展開します。

画像:2019 SuperCoppa Juv-Laz 6

 この攻めは「定石」と言えるものですし、どのチームも選択肢に入っている一般的なものです。『3バックのチーム』と『4バックのチーム』が対戦した時に起きるミスマッチを活用したものですから、両チームともに想定内と言えるでしょう。

 ボールを受けたラッザリ選手は素早く処理して前進。J・コレア選手もサポートに入ります。

画像:2019 SuperCoppa Juv-Laz 7

 ユベントスの守備はマテュイディ選手も加えた5人ですから、戻りは迅速と言えるでしょう。一方でJ・コレア選手はボールキープから、オーバーラップをして来たラッザリ選手を裏のスペースに走らせるパスを出します。

画像:2019 SuperCoppa Juv-Laz 8

 すると、ユベントスの守備は前半17分に起きた「ルリッチ選手のチェックにデ・シリオ選手が向かった時」と同じ状況になります。今回はA・サンドロ選手が “迎撃” に向かいましたが、中では 4-3 のブロックが構築され、ゾーンディフェンスが採用されています。

 この場面でも大外にいるラツィオの選手を(ユベントスの守備陣が)捉えられていないことは明らかです。

画像:2019 SuperCoppa Juv-Laz 9

 ラッザリ選手がクロスを入れるとニアでパローロ選手がフリック。これがルリッチ選手への絶好のラストパスとなり、ラツィオが勝ち越しに成功しています。

 「インモービレ選手が SB の注意を引き付けていること」や「大外で待つラツィオの選手からリターンをもらう動きをする選手がいること」は1失点目の時と同じです。戦術的な狙いを完遂したラツィオに軍配が上がったのは当然の結果と言わざるを得ないでしょう。

 

 とは言え、ラツィオが見せた攻撃パターンはアッレグリ前監督が良く使っていたものです。クロスを入れる際に中央(のニア)にケディラ選手かマテュイディ選手を侵入させ、ボックス内でロナウド選手が高さ勝負をすると見せかけて、本命は大外から飛び込んで来るマンジュキッチ選手という手法が原型です。

 ゾーンで守るチームには良く効く戦術ですから、この “欠陥” を改善できなければシーズン後半戦は厳しい戦いが続くことになるでしょう。休暇中に改善策を確立させ、チームに落とし込む手腕をサッリ監督が見せられるのかに注目です。