10月8日にイギリス・ロンドンで行われたイベントでユベントスのアニェッリ会長が「CL の試合数を増やそう」と発言したことに対し、欧州のリーグ連盟で構成される組織のオルセン会長が反発していると BBC が報じています。ただ、反発の内容が悪く、墓穴を掘る形になっています。
■ アニェッリ会長の発言とオルセン会長の反発
欧州クラブ協会(= ECA)のトップを務めるアニェッリ会長は10月8日に行われた『リーダーズ・ウィーク』で基調講演を行い、「チャンピオンズリーグを6チーム・6グループで行うこと」をプランとして言及しました。
この計画案に対し、欧州の主要リーグで構成される『ヨーロピアン・リーグス』のラース=クリスター・オルセン会長が反発。「過密日程で選手の健康が損なわれる」と批判したのです。
ただ、このオルセン会長の発言は迂闊でした。なぜなら、アニェッリ会長の計画通りに改革が進むと、「現状の試合数は変化しない」という “仕掛け” が施されているからです。
■ アニェッリ会長は「主要国のリーグは18チームで構成されているべき」と言及している
オルセン会長の発言が迂闊と断言できる理由は「アニェッリ会長が18チームで構成される国内1部リーグを求めているから」です。それにより、リーグ戦とチャンピオンズリーグの試合数は次のように変化します。
- 現行
- リーグ戦: 20チーム(全38節)
- CL のグループステージ: 4チーム x 8グループ(全6節)
- (アニェッリ会長の)改革案
- リーグ戦: 18チーム(全34節)
- CL のグループステージ: 6チーム x 6グループ(全10節)
欧州の主要リーグは「20チーム」で構成されていますが、アニェッリ会長は「18チームにすべき」と以前から要求しています。これによって「リーグ戦の4試合が削減」されるため、CL で4試合増えたとしても全体の試合数は変わらないのです。
この点を見落とし、「選手の健康」を理由にアニェッリ会長のプランを批判したオルセン会長は墓穴を掘ったと言わざるを得ないでしょう。
■ 「選手のコンディションを懸念しているなら、『18チームによるリーグ制』を支持できるはずだ」との踏み絵に迫られる
オルセン会長は「選手のコンディションが懸念される」との理由に『アニェッリ会長の改革案』に反対の意を表明しましたが、この理由だと「各国リーグを18チームに削減することに消極的」と逆に批判されてしまいます。
アニェッリ会長は『18チームによる国内リーグ』になった方が都合が良いのですから、“踏み絵” を迫ることでしょう。また、「リーグ戦の減少」に文句を言うクラブや放送局に対しては「強豪チーム同士の対戦がある CL や EL の方が収益が増えるのでは?」と切り崩しを図ることが可能です。
したがって、過密日程で収益をアップさせているリーグ機構が「選手のコンディション」を理由にビッグクラブを批判することは得策ではありません。
批判をするなら、「金の亡者」や「スタジアムを訪れる国内のファンを軽視している」という内容に留める必要があるからです。『スーパーリーグ構想』もあるため、当事者による批判合戦は熱を帯びることになるでしょう。どのような大会フォーマットに落ち着くのかに注目です。