サッリ監督を招聘した 2019/20 シーズンのユベントスですが、チームが空中分解する恐れがある不安要素を抱えていることも事実です。杞憂に終われば良いのですが、その点を指摘しておくことにしましょう。
■ ロナウドの『7番』が不発で、『9番』での起用を要求する可能性
最大の懸念点は「ロナウド選手からの不満でチームに不協和音が生じること」でしょう。サッリ監督はロナウド選手を左サイドで『7番』の仕事を期待していますが、これが不満を溜め込むに原因になり得るからです。
- 『7番』の仕事は「カットインから相手の守備を崩すこと」
- 対応する相手はシュートコースを消す守備を優先
- 「ブロックされる」か「アシストに回る」かの選択が迫られる
→ 得点から遠ざかる
厄介なのは「『7番』が得点に強い意欲を示すほど、相手チームは守りやすくなる」という問題があることです。
“『9番』へのパスコースを探しながら、自らのシュートコースが空いている場合は枠内にシュートを飛ばしてくる『7番』” が守備側からすれば最も守りにくい存在です。ロナウド選手がこの仕事をできる選手ですが、得点数の激減も覚悟する必要があります。
バロンドールを獲得する近道は「チームの勝利に貢献する印象的な仕事(≒ ゴール)を続けること」ですから、「バロンドール候補から降りる覚悟があるのか」が突きつけられているのです。
ロナウド選手は「世界最高の選手であり続けること」を目標に掲げています。『7番』で起用された時のゴール数が伸び悩やば、『9番』の位置に陣取るという “造反” が起きる可能性はあります。
そうなると、チームが前線から機能不全に陥ってしまいます。このリスクに向けた対応策は準備しておく必要があると言えるでしょう。
■ スピード不足の主力 CB に、守備力に不安を抱える右 SB
ポゼッションを志向するサッリ監督は DF ラインを高い位置に設定します。そうなると、DF の背後に広大なスペースが生まれるため、個々の DF にはスピードとカバー能力が要求されます。
ところが、主力 CB の待遇が用意されているボヌッチ選手とキエッリーニ選手はスピードが不足しており、これは戦術で補える要素ではありません。アッレグリ監督のように「ラインを低く設定する」しか解決策がないからです。
また、右 SB も不安要素です。
候補であるデ・シリオ選手とダニーロ選手はどちらも「帯に短し襷に長し」の状態で決定打に欠きます。“守備時のデュエル” で劣勢だったことが昨季のチャンピオンズリーグでは致命的となりました。
そのため、この部分が改善できるかが今季の注目的になります。
■ 攻撃のベースサイドを固定できない中途半端な状況
サッリ監督がユベントスで苦しむ可能性があるのは「攻撃の基本となるベースサイドを固定できないこと」でしょう。なぜなら、ナポリやチェルシーの時とは異なり、ボールを頻繁に触れることに適した選手が左右に分散しているからです。
左サイド | 右サイド | |
---|---|---|
ロナウド | WG | D・コスタ |
ラビオ | MF | ケディラ (エムレ・ジャン) |
A・サンドロ | SB | ダニーロ / デ・シリオ |
キエッリーニ (ボヌッチ) |
CB | デ・リフト |
対面する相手選手を剥がすことに長けた WG は「右のD・コスタ選手」です。一方でビルドアップ時に技術で違いを生み出せる MF と SB は「左のラビオ選手とA・サンドロ選手」という状況です。
CB は攻め上がった SB が空けたスペースのケアも要求されますが、スピード不足の左 CB がネックになります。
攻撃のベースサイドには「クリバリ選手やダビ・ルイス選手のような走力を兼ね備えたタイプ」が望ましいため、配置という点でもリスクがあると言わざるを得ないでしょう。
■ 不安要素の解決策は「駆け込み補強でのキエーザ獲得」
ユベントスが 2019/20 シーズンに直面することが予想される問題を解決するには「キエーザ選手を獲得すること」が効果的です。
- 獲得の利点
- 左サイドの『7番』で起用可能
→ 左を攻撃のベースサイドにできる - ロナウドを『9番』に回せるため、不満分子と化すリスクはゼロ
- 左サイドの『7番』で起用可能
- 獲得に対する問題点
- 7000万ユーロに近い移籍金
→ 「ベルナルデスキ+金銭」をオファー
- 7000万ユーロに近い移籍金
「ベルナルデスキ+金銭」でキエーザ選手を獲得できれば、不安要素の大部分を解消できます。攻撃のベースサイドが「左」に設定され、ロナウド選手をゴール・ゲッターの仕事に専念させられるのです。
対戦相手が「ユベントスの左サイド」をケアするなら、スペースが多く存在する「右」でD・コスタ選手にボールを預けてチーム全体を一気に押し上げることが可能になります。
ユベントスのフロント陣が「勝つこと」を最優先にしているのであれば、このぐらいの大鉈を振る必要があります。キエーザ選手の獲得が難しいなら、ディバラ選手の『偽9番』で “『9番』のスペース” をロナウド選手のために空けておくべきと言えるでしょう。
シーズン開幕前に不安要素として指摘できる項目にどのような対策が準備されているのか。この点にも注目して見る価値はあると考えられます。