『ガゼッタ・デッロ・スポルト』などイタリアの主要メディアがユベントスとローマがスピナッツォーラ選手とルカ・ペッレグリーニ選手のトレードでクラブ間合意に達したと報じています。両クラブとも売上高確保が目的と言えるでしょう。

■ 6月末までに売上高の確保が必要な両クラブ
ユベントスとローマはどちらも「FFP の関係で6月末までに売上を確保する必要があるクラブ」です。ただ、売上確保が思うように進行していないという共通点があります。
ユベントスは「カンセロ選手の放出」で目的を達成しようとしたものの、交渉の進展は停滞がちです。これはサッリ監督が放出に難色を示した可能性もあり、当初の予定を転換していたとしても不思議ではありません。
一方のローマも FFP を遵守するためには「選手の放出」は不可避であり、ジェルソン選手やエル・シャーラウィ選手が対象として取り上げていました。しかし、こちらも交渉はまとまらず。
その結果、困ったクラブ同士が “結託” して帳尻合わせに動いていることが『交換トレード』が出た理由と考えられます。
■ 交換トレードでユベントスとローマが得るもの
今回の交換トレードで該当の両クラブが得るのは「会計上の売上」です。
- ユベントス
- 得:ペッレグリーニ選手+差額1000万ユーロ
- 失:スピナッツォーラ選手を2500万ユーロで放出
- ローマ
- 得:スピナッツォーラ選手
- 失:ペッレグリーニ選手を1500万ユーロで放出
スピナッツォーラ選手もルカ・ペッレグリーニ選手も下部組織出身であるため、移籍金の全額を「クラブの売上高」として計上することが可能です。
ユベントスは2500万ユーロ、ローマは1500万ユーロを計上できるのですから、FFP を遵守する上でも大きいと言えるでしょう。
■ ユベントスがルカ・ペッレグリーニを獲得する理由は極めて乏しい
噂されている交換トレードは「クラブの財政面」が理由で、ユベントスがペッレグリーニ選手を獲得する理由が乏しいことが問題です。選手の代理人を務めるミノ・ライオラ氏にアピールする以外の効果を見出すことは難しいでしょう。
- ルカ・ペッレグリーニ
- 1999年3月生まれのイタリア人 SB
- 今季後半戦はカリアリでプレー
- U-20 W杯では 3-5-2 の左インサイドハーフでプレー
→ 左 WB はトリパルデッリ(ユーヴェの下部組織出身)
- ロジェリオ
- 1998年1月生まれのブラジル人 SB
- 今季はサッスオーロで左 SB のレギュラーとしてプレー
- イタリアの『協会内育成選手』
- ユベントスの下部組織出身
理由は「2シーズン連続でサッスオーロに期限付き移籍をしているロジェリオ選手がいるから」です。
ペッレグリーニ選手が “下部組織出身のスピナッツォーラ選手とロジェリオ選手を切るに値するプレー” を見せているなら、今回のトレードを敢行することは合理的です。しかし、そのようなプレーを見せることはできていません。
また、ロジェリオ選手がいるため、サッスオーロからクロトーネ(セリエB)に期限付き移籍をしたトリパルデッリ選手に U-20 イタリア代表で左 WB のポジションを奪われたこともマイナス評価です。
昨夏はイグアイン選手の “処分” に困ったフロント陣が「カルダーラ選手とボヌッチ選手のトレード」という愚行に出ましたが、今夏は「スピナッツォーラ選手とペッレグリーニ選手のトレード」で同じ轍を踏む可能性は十分にあります。
現状は「クラブ間合意」の段階ですから、選手がトレードに対して拒否権を発動しても反感を買うことはないでしょう。どのような結末を迎えるのかに注目です。