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欧州スーパーリーグ構想が再始動、UEFA と真っ向から対峙する方針が示される

 ヨーロッパ・スーパーリーグ(ESL)の実施に向けて動く『a22 スポーツ・マネジメント』が新たな構想を発表したと『スカイ・イタリア』などが報じています。

 現状では「UEFA チャンピオンズリーグを彷彿させる大会フォーマット」が採られており、UEFA と真っ向から対峙することになるでしょう。ただ、クラブや選手が惹かれる要素があることも事実です。

 今後の展開を見守る必要はありますが、現時点で発表されている『10の原則』を見ていくことにしましょう。

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欧州スーパーリーグの『10原則』

 スーパーリーグ構想を実現するために動いている『a22 スポーツ・マネジメント』が示した10個の原則は以下のとおりです。

  1. 60〜80クラブで構成されるオープンな大会。成績に基づく昇格・降格
  2. 各国内のコンペティションにも参加すべき
  3. 年間収入の安定性と予測可能性を高める必要があるので「シーズン最低14試合」を保証
  4. 選手の健康状態は試合数を決める上での重要な要素
  5. 経営リスクを背負っているクラブが大会を管理すべき
    • 持続可能性を高める必要がある
    • 競争を歪める資本注入ではなく、創出される資源に応じた支出
    • 年俸と移籍金は収入の一定割合までに制限
  6. 若い世代に人気がある世界最高のエンターテイメントでなければならない
  7. アウェイサポーターの動員数と試合中継の向上が課題
  8. 女子サッカーの発展に向けた資金拠出
  9. 地域の連帯のために最低でも年4億ユーロの分配を非参加クラブに行うことが目標
  10. サッカー界は EU の価値観・法律・基本的自由を受け入れなければならない

 “現状では” UEFA チャンピオンズリーグをモデルにしたフォーマットが提示されています。

 最も大きな違いとなるのは「クラブ側がコンペティションの管理権限を持つこと」でしょう。NFL, NBA, MLB, NHL などアメリカのプロスポーツで採られている『労使と機構の関係』に基づく運用体系を目指していると考えられるからです。

 

欧州スーパーリーグに対する見立て

 『a22 スポーツ・マネジメント』が発表した欧州スーパーリーグ構想に対する現時点での見立てを以下に示しておきたいと思います。

 

Q. なぜこのタイミングでスーパーリーグ構想が復活したの?

 2023年1月末にマドリードの裁判所が「UEFA や FIFA はスーパーリーグ推進派に制裁を加えれない」との判決を出したからです。

 欧州司法裁判所からは「UEFA の立場を支持する意見表明」が出されていますが、懲戒権は「UEFA 主催の大会とスーパーリーグを掛け持ちした場合」に限定されると思われます。

 “スーパーリーグ構想を表明した段階のクラブ” に制裁をかけた場合の損害賠償は UEFA の支払い能力を超過していることでしょう。だから、このタイミングで『構想』が再発表されたのです。

 

Q. オープンな大会に変更した理由は?

 「クローズな大会形式で発足する必要性がないことに気づいたから」でしょう。スーパーリーグが発足すると参戦クラブは UEFA や親 UEFA の各国協会から追放される可能性が大です。

 UEFA や親 UEFA の各国協会が「門戸を閉ざす」のですから、スーパーリーグ側が『閉じた大会形式』を最初から採用する必要性がなくなったのです。

 

Q. シーズン最低14試合で収益性は確保できるの?

 試合数は最も流動的な部分です。“最低14試合を保証” は「スーパーリーグに参加するクラブが各国の国内リーグにも参戦していること」が前提の話でしょう。

 実際には “各国リーグから追放されたクラブ” によるスーパーリーグ内での対戦が行われると予想されます。

 仮に16クラブだとホーム&アウェイによるリーグ戦で年間30試合です。選手のコンディションに配慮した運営が現状よりも容易になるでしょう。

 

Q. FIFA W杯に出場できなくなる選手が出てしまうのでは?

 その可能性は低いでしょう。FIFA は『クラブW杯』でも収益を上げたいのです。『クラブW杯』で「スーパーリーグ勢」と「UEFA 勢」が雌雄を決するとなれば、FIFA は儲かります。

 「クラブW杯でしのぎを削った選手たちが今度は母国のために『FIFA W杯』を戦う」という “儲かる構図” を捨てるとは考えにくいからです。

 

Q. 一部のサッカークラブは大会の管理権限まで要求する理由は?

 FIFA や UEFA は “サッカークラブが年俸を支払っている選手” を強制的かつ無償で『自分たちが主催する大会』に招集する権限を有しています。

 このことに「経営リスクに見合った権限がないのはおかしい」との不満がクラブチームから出ているのです。

 負傷離脱中の選手はプレーで貢献できないため、離脱はクラブにとって損失です。しかし、FIFA や UEFA は「気持ち程度の見舞金」を払うだけで経営的な損害とは無縁です。

 クラブの資本へのタダ乗りに反感が出るのは驚くことではないでしょう。

 

Q. サラリーキャップの導入で持続可能性が高まるの?

 『アメリカのプロスポーツで採用されているサラリーキャップ』が導入されるのなら、持続可能性は飛躍的に高まります。最大の狙いは「選手年俸の可視化」でしょう。

 リーグが一括で販売した放映権料を参加チームに分配することで「チーム総年俸の下限」を絶対値で決めれます。この規則があれば “私腹を肥すオーナー” の排除が可能です。

 また、「チーム総年俸と移籍金の上限は収入の一定割合まで」と決めておくことで『謎の錬金術』に手を染める動機が薄れます。「無い袖は触れない」と割り切れることで経営の持続可能性は高まるからです。

 

 UEFA など『反スーパーリーグ派』は「提唱された内容は検討されたものばかり」などと腐すことでしょう。しかし、“それらの検討を踏まえて採用されたはずの運営方針で結果が示されていない現実” があるのです。

 この現実から目を背ける限り、『スーパーリーグ構想』が消滅することはないと思われます。