UEFA は公式サイト上で「サッカー大会の創設に関する事前審査および承認を行う項目が欧州司法裁判所で違法と判断された」と認めました。
UEFA は「該当の審査プロセスは改善されているので問題ない」と弁明していますが、欧州司法裁判所は複数項目の違法を指摘しています。今後は『ボスマン判決』と同等の影響が生じても不思議ではないでしょう。
過去記事で紹介しましたが、2022年12月に欧州司法裁判所のアタナシアス・ラントス法務官が「FIFA や UEFA の地位は合法」との『見解』を発表。UEFA はその見解に満足する声明を発表していました。
ただ、裁判での判決は「UEFA 敗訴」でした。
- 主文: FIFA と UEFA は優越的地位を乱用して(競争と自由を阻害して)いる
- 競争は経済活動であり、競争の自由を尊重しなければならない
- 大会の主催と放映権料の取得は経済活動
- 『競争のルール』と『移動のルール』を尊重しなければならない
- “支配的地位にある企業” が『潜在的競合企業が市場にアクセスする条件』の決定権を持っている
- 透明性、客観性、非差別性に欠く
- 承認、管理、制裁に関するルールは『サービスを提供する自由』への不当な制限と見なさざるを得ない
- 競争は経済活動であり、競争の自由を尊重しなければならない
UEFA の主張が認められなかったのは「競争を制限するような契約を結ぶことでネット広告分野での支配的な地位を固めてきた」との理由で2019年3月にグーグルが独禁法違反と判断されたことと同じロジックでしょう。
「グーグルはダメだが FIFA や UEFA はセーフ」と断言できる法的根拠がなければ、他業種で『UEFA 型カルテル』が形成されるお墨付きを与える結果になってしまうからです。
マスコミがあまり報じていない内容としては “欧州司法裁判所のシュプナール首席法務官” が示した「クラブ育成選手や協会育成選手の登録枠は『競争の自由』を妨げている」との見解が今回の判決に反映されていることです。
「 “支配的地位にある UEFA” が『(ヨーロッパ出身の選手と)潜在的に競合する(非欧州圏出身の)選手が(UEFA チャンピオンズリーグなどの)市場にアクセスする条件』の決定権を(育成枠という形で)握っていること」も問題視されたのです。
競争は「才能」や「実績」で行うものであり、「出身」や「(出身地との関係性が高くなってしまう)学歴」による参加資格の選別は差別性を含んでしまいがちです。
だから、登録枠に関する違法性も指摘されたのでしょう。
今回の判決によって「 “各大陸および各国で独占的地位による殿様商売をしていたサッカー協会” と競合する競技運営団体の存在は合法」と認められました。
クラブ側は「どの競技団体が運営するリーグに参戦するか」を選べることになったのです。UEFA や各国サッカー協会が『従来どおりの姿勢』であれば、クラブの要望が反映されやすい方への流出が起きることになるでしょう。
競争相手の存在が現実味を帯びてしまったため、今後は「発言」ではなく「行動」で大会運営側がクラブから評価されることになりました。「FIFA や UEFA が『ボスマン判決』を超える影響を受けても驚きではない」と思われます。