イタリア審判協会は公式サイト上でセリエA第6節ユベントス対サレルニターナ戦での VAR に関する判定に対する見解を発表いたしました。「開き直り」と言わざるを得ない見解を示しており、火に油を注ぐ結果になるでしょう。
物議を醸すことになった発端
問題の場面は 2022/23 セリエA第6節ユベントス対サレルニターナ戦の95分に発生しました。
ユベントスはクアドラード選手が入れた左 CK をミリク選手がヘディングで合わせてゴールネットを揺らしたのですが、ボヌッチ選手がミリク選手のシュートに触れようとしたために “VAR の介入で” オフサイドを宣告。
ミリク選手の逆転ゴールは幻に終わり、試合は 2-2 の引き分けで終わったはずでした。
ところが、『スカイ・イタリア』が試合直後に「(キッカーのクアドラードを邪魔する役割だった)カンドレーヴァが残っていたので VAR による誤審」と指摘。
ピッチ上の副審は「ミリク選手のゴールが決まった際にオフサイドの判定を下していなかった」ため、明らかな誤審として「介入した VAR」と「主審」が糾弾される事態となっているのです。
イタリア審判協会による弁明
本件に対し、イタリア審判協会は異例とも言える弁明を現地9月12日付で発表しました。ただ、内容は火に油を注ぐことになるでしょう。
- 技術部門は VAR の映像を確認した
- “戦術用と定義されたカメラ” は VAR で利用できない
「VAR で利用可能な映像からボヌッチのオフサイドと判定した我々は適切」と開き直っているも同然です。
この対応は審判への信用を地に落とすものでしょう。“判定が難しい微妙な場面で審判をサポートするための VAR” が『明確な誤審』の引き金となり、試合結果を歪めてしまったからです。
VAR への依存度が増した審判員の慢心が原因
今回の誤審は「VAR の慢心」が最大の原因と思われます。「VAR にはゴール前の映像しか提供されていないのだから仕方ない」との主張は擁護にはなり得ません。
ショートコーナーで再開した際に “味方からのリターンパスを受けたキッカー” が「オフサイド」を取られるケースが見受けられるからです。このプレーは「VAR の対象」です。
また、オフサイドの判定は「オフサイドを取られた選手に周囲にいる相手選手」だけでなく「プレーとは関係のない離れた位置にいた選手」のポジションも影響します。
上述したプレーに関する VAR の介入は「映像でオフサイドだったかの根拠」が示されるのですから、「ゴール前カメラではカンドレーヴァのポジションは確認できなかった(ので誤審は止むを得ない)」はあまりにお粗末です。
プロの審判員が「素人同然の基準」で VAR による介入をし、それが『明確な誤審』だったのです。再発防止策を講じることなく幕引きをすることは困難でしょう。
VAR による誤審が問題となったイングランドでは審判協会が見直しに「全面協力」を打ち出しました。
同様のミスが発生したイタリアで審判協会が事態をどのように収束させるのかが注目点になると思われます。