『カルチョ・エ・フィナンツァ』が「ユベントスが 2018/19 シーズンに選手売却で1億ユーロを超える収益を出した」と報じています。これは事実ですが、弊害としてトップ・プロスペクト(= 若手有望株)不足という状況に陥っています。
将来に向けて大きな不安を残す要因であるだけに、状況を確認することにしましょう。
■ ユベントスが 2018/19 シーズン中に売却した主な選手
ユベントスが “2018/19 シーズン中に” 売却したと『カルチョ・エ・フィナンツァ』のリストで記載されていた選手は以下のとおりです。
選手名 | 売却額 | 収益額 |
---|---|---|
スピナッツォーラ (26, ローマ) |
2950万ユーロ | 2660万ユーロ |
カルダーラ (25, ミラン) |
3500万ユーロ | 2158万ユーロ |
アウデーロ (22, サンプドリア) |
2000万ユーロ | 1990万ユーロ |
マンドラゴラ (22, ウディネーゼ) |
2000万ユーロ | 1366万ユーロ |
ストゥラーロ (26, ジェノア) |
1800万ユーロ | 1290万ユーロ |
オルソリーニ (22, ボローニャ) |
1500万ユーロ | 1050万ユーロ |
チェッリ (23, カリアリ) |
900万ユーロ | 807万ユーロ |
合計 | 1億4650万ユーロ | 1億1322万ユーロ |
7選手の売却で「1億4650万ユーロの売却額と1億1322万ユーロの収益」を記録したとされています。
ただ、リストには6月30日にサッスオーロに売却されたロジェリオ選手は含まれていません。
ですから、実際にユベントスが 2018/19 シーズン中に(選手の売却によって)手にした売却額は1億5000万ユーロ超、収益額は1億2000万ユーロ超となっていることでしょう。
■ 20〜25 歳の若手有望株選手の保有権が軒並み手放された
何が問題かと言いますと、「ユベントスが保有権を持っていた “イタリア人のトップ・プロスペクト(= 若手有望株)” が軒並み売却されたこと」です。
「FIFA がローン移籍の上限を設ける」と噂されており、若手有望株選手を従来どおり囲い込むことが難しくなることは予想されています。しかし、2018/19 シーズン中にユベントスが保有権を手放した選手の半分以上は「手放す時期は適切だったのか」と疑問符が付く状況です。
売却された選手以外に同様の期待が持てる選手が現時点でいれば良いのですが、現状ではその立場にいると言える有望株選手はほとんどいません。
選手名 | |
---|---|
'97 | アウデーロ(2000万ユーロ)、リロラ(700万ユーロ+α)、ロマーニャ(760万ユーロ)、カッサータ(700万ユーロ)、ファビッリ |
クレメンツァ | |
'98 | ロジェリオ(?ユーロ) |
デル・ファベロ、ベルアット、ムラトーレ、M・ペレイラ、カスタノス | |
'99 | ー |
ロリア、ザナンドレア、L・フェルナンデス、オリビエリ | |
'00 | ケーン |
マコウン、ポルタノーバ、ニコルッシ、アンツォリン | |
'01 | ー |
バンデイラ、ゴッツィ・イウェル、ファジョーリ、ペトレッリ |
クラブに1000万ユーロ超のプラス効果をもらすことが確実なのは2000年生まれのケーン選手のみ。他のプリマベーラ出身選手がセリエAで通用するまでには(少なくとも 1〜2 年の)時間を要すると考えられます。
また、セリエAのクラブに期限付き移籍している若手有望株選手は不在です。ピアツァ選手が該当するものの、獲得には相応の移籍金を有しています。そのため、同じ扱いはできないと言えるでしょう。
■ 「若手選手売却による損失の穴埋めが使用不可になること」が問題
トップチームに定着前のプロスペクト選手を売却したことによる最大の弊害は「クラブの損失を穴埋めできる選択肢が消滅すること」でしょう。
ユベントスは直近2シーズン(= 2017/18 および 2018/19)の決算は好調とは言えません。「FFP に抵触する恐れがある決算」となりつつあるだけに、経営上の制約が補強戦略に出ることは時間の問題となっています。
「資産を切り崩す」ことは経営における選択肢の1つです。この行動に出ることに問題はありませんが、「資産の大部分を売却する」との決定は「かなり深刻」との印象を与えるに十分すぎます。
しかも、「今後数年は『若手有望株選手の売却による収益増』を使えない」という制限がクラブに課される形となります。これはクラブが使える “錬金術” を封じられることと同じです。
この認識を持たずにフロント陣が「拡大路線」を邁進すると、今後 1〜2 シーズンでクラブ経営が行き詰まる恐れがあります。
「補強に費やす資金を確保することが年々難しくなっている」との認識を経営陣が持ち、クラブの拡大路線を “膨張路線” から修正することができるのかに注目です。