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『2023年夏に完全移籍となった時点でのケーンとロカテッリの残存簿価』は『買取義務に付随した移籍金』と同額ではない

 2024年夏の移籍市場でジュントリ FD は約2億ユーロの移籍金を投じ、チームの顔ぶれを大きく変化させました。この動きは評価されるべきですが、クラブの最重要課題である「収支のバランス」はリスキーなままです。

 ユベントスが採っている減価償却費の計上手法を知っていれば、ジュントリ FD の働きぶりを手放しで称賛することはできないからです。

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ケーンとロカテッリを完全移籍で獲得した時点の残存簿価は3000万ユーロと3640万ユーロではない

 ユベントスはケーン選手とロカテッリ選手を2021年夏に『買取義務が付随した2年間の期限付き移籍』で獲得。両選手は “契約の内容どおり” 2023年夏に登録権がユベントスに渡っています。

  • ケーン: エヴァートンから復帰
    • レンタル料: 700万ユーロ
    • 買取時の移籍金: 2800万ユーロ+ボーナス最大300万ユーロ
    • Transfermarkt に記述された移籍金: 3000万ユーロ
  • ロカテッリ: サッスオーロから加入
    • レンタル料: なし
    • 買取時の移籍金: 2500万ユーロ+ボーナス最大1250万ユーロ
    • Transfermarkt に記述された移籍金: 3640万ユーロ

 ユベントスは “2023年7月1日に” ケーン選手とロカテッリ選手の登録権を獲得したため、「資産である選手の獲得に投じた移籍金の減価償却が始まるのは2023年7月1日以降」と考えるのが一般的でしょう。

 しかし、これは完全な間違い。ユベントスはそのような償却をしていません。

 『このことを知った上で計算したユベントスの人件費』と『一般的な会計方法に基づいて計算したユベントスの人件費』に差異が出るのは当然です。

 『前者』では「今夏の移籍市場でジュントリ FD が行なった取引によるコスト圧縮は乏しい」となり、『後者』では「今夏の移籍市場でジュントリ FD はコスト圧縮と戦力補強を両立させた」となるのです。

 

ユベントスと契約を締結している選手の獲得総費用と残存簿価は公開情報

 ユベントス・フットボール株式会社は「契約を締結している選手に支払っている年俸」は非公表ですが、「契約を締結している選手の獲得に要した総費用と残存簿価」は半年ごとに公開しています。

 該当の記述があるのは年次報告書(と中間報告書)。

 2022/23 シーズンの年次報告書に「ケーン選手とロカテッリ選手の2023年6月30日時点(※ この時点で両選手の登録権はユベントスが借り受けている状態)での『償却済みの金額』と『残存簿価』」は下表のように記述されています。

表: 買取義務で保有権を獲得した時点での “実際の” 減価償却費
選手名 レンタル
費用
移籍金 償却済 残存簿価
【契約】
キエーザ
【'22年夏に完全移籍】
€10m €40m
+€10m
€2.2m €40.3m
【'25年夏】
ケーン
【'23年夏に完全移籍】
€7m €28m
+€3m
€17.7m €19.3m
【'25年夏】
ロカテッリ
【'23年夏に完全移籍】
Free €25m
+€12.5m
€12.4m €22.7m
【'26年夏】

 今夏の移籍市場でケーン選手が退団したことによる減価償却費の圧縮は965万ユーロ。1500万ユーロではありません。

 また、ロカテッリ選手との契約延長による減価償却費の圧縮も「756万ユーロ x 3年」が基準です。「1213万ユーロ x 3年」ではないため、圧縮の度合いが少なくなる “からくり” を考慮する必要があります。

 

ディ・グレゴリオとニコ・ゴンサレスの減価償却費は 2024/25 シーズンから始まる

 今夏の移籍市場でユベントスは4選手が期限付き移籍で加入しましたが、買取義務で加入したディ・グレゴリオ選手とニコ・ゴンサレス選手は今シーズンから減価償却が始まることでしょう。

 前者は「移籍金1800万ユーロでの完全移籍と同じ」、後者は「移籍金3300万ユーロでの完全移籍と同じ」と加入時のプレスリリースで明記されているからです。

 ディ・グレゴリオ選手とニコ・ゴンサレス選手の減価償却費(≒1000万ユーロ)を計上項目から外せるのであれば、人件費は昨シーズンよりも圧縮されることでしょう。

 ただ、そのためには「会計手法を再変更する」とともに「 “税務と会計監査が専門の” フェレーロ会長が承認する」ことが前提です。

 「『キエーザ選手を獲得した以前の方式』に戻すことは現実的ではない」ため、今夏以降の移籍市場で買取義務が付随する期限付き移籍で獲得した選手は『ケーン選手やロカテッリ選手の方式』で減価償却が行われることでしょう。

 だから、ユベントスの 2024/25 シーズンにおける人件費(=選手への年俸と減価償却費)は「昨年よりも増加している可能性がある」と主張する根拠になるのです。

 

 また、“2026年夏で現行契約が満了するアルトゥール選手” を2025年夏の移籍市場で減価償却費を下回る移籍金で売却してしまうと「損失分が 2024/25 シーズンの決算に遡って計上される」という問題も横たわったままです。

 “ソフトランディングの可能性を大型補強で閉ざしたユベントス” が『ピッチ上での結果』を元手に経営改善の度合いを進めることができるのかに注目です。