ユベントスは2024年夏の移籍市場で「現行契約が残り1年となるケーン選手の放出に動く」と見られています。
この動きは特別なことではありませんが、後々に「ケーン選手の放出」の弊害でクラブ経営が苦しくなるでしょう。経営再建に欠かせない『Next Gen プロジェクト』の瓦解が加速するからです。
クラブに “2度も” 梯子を外されているケーン
ケーン選手をこのまま放出すると何が問題かと言いますと、「ユベントスがケーン選手を複数回に渡って冷遇している」からです。
'19年夏 (当時19歳) |
サッリ監督が就任。「イグアインが絶対的レギュラーに君臨」と予想されたのでエヴァートンに完全移籍 |
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'21年夏 (当時21歳) |
アリヴァベーネ CEO の『育成重視路線』を受けてチームに復帰。2025年夏までの契約 |
'22年1月 (当時21歳) |
“ケーンと同じ2000年生まれで CF のヴラホヴィッチ” を移籍金8000万ユーロ超で獲得 → 出場機会を得ることが極めて困難に |
'24年夏 (24歳) |
取り巻く状況は変わっておらず、「今夏での退団が有力」との報道が相次ぐ |
しかも、ケーン選手は単なるユベントスの下部組織出身の FW ではありません。「アンダー世代のイタリア代表に飛び級で選出されていた9番」なのです。
「 “アンダー世代のイタリア代表に飛び級で選出されている9番” ではユベントスのトップチームでポジション争いに参戦させてもらえない」とのメッセージは『育成に注力するクラブ方針』にとってマイナスでしかないでしょう。
小粒化が否めないBチームの FW 陣
その証拠にユベントスのBチームやプリマヴェーラに在籍する FW 陣は(『9番』を中心に)小粒化が進行しています。
内部昇格 | 外部出身 | |||||
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選手名 | 年齢 | G | 選手名 | 年齢 | G | |
19/20 | オリビエリ | 20 | 4 | モタ | 21 | 7 |
20/21 | ペトレッリ | 19 | 5 | A・マルケス | 20 | 7 |
21/22 | セクロフ | 19 | 4 | クドリッジ | 18 | 2 |
22/23 | セクロフ | 20 | 4 | ペコリーノ | 20 | 6 |
23/24 | チェッリ | 20 | 6 |
例えば、“クラブは2024年1月の移籍市場で(セリエBのクレモネーゼから)Bチームに復帰した21歳のセクロフ選手” との契約を2027年夏まで延長しましたが、ケーン選手がトップチームに戻ってきたのは21歳の時です。
また、“Bチームで研鑽を積みつつプリマヴェーラの苦境を救ったアンジェレ選手” は2005年2月生まれの19歳。今夏の移籍市場で「トップチームでの出場機会を見込めない」との理由でチームを離れてケーン選手と肩を並べられる立ち位置です。
これらの現実を直視できないとクラブ経営で痛手を負うことになるでしょう。
“高値が付きやすいポジション” で育成枠に蓋をするのは愚の骨頂
サッカーはライト層から「90分もプレーして 0-0 って何?」と言われるほど得点が入りにくいスポーツであり、選手の評価額は「得点に直結する仕事ができる選手ほど高くなる傾向」があります。
ところが、ユベントスは高値が付きやすいポジションほど内部昇格の若手有望株がトップチームで冷遇されているのです。
- CF: イグアインとヴラホヴィッチがブロック
- ケーンがしわ寄せを受ける
- WG: キエーザとの契約延長に動く
- ユルディズ、スーレ、イリングの誰かが割りを食う
- 中盤 MF: アルカラスとファジョーリ
- ミレッティとノンジェが不遇で不憫
現状は「高額な移籍金で獲得した『外部からの加入選手』に出場機会が優先的に与えられているので『内部昇格選手』にポジションを得るチャンスは訪れない」となっています。
“他クラブが移籍金を払って獲得を試みる逸材” がユベントスの下部組織を敬遠する傾向は強まりますし、“原石” を確保できないと『Next Gen が輩出した若手有望株』は出現しません。
“移籍金が二足三文にしかならない成長の余地が限られた選手” が『Next Gen の輩出した若手有望株』に化けることはないからです。
親会社のエルカン会長は『株主宛のレター』で「Next Gen が輩出した若手を活用した経営再建」と記していますが、現場は「運用10年を区切りに Next Gen の廃止」に向けて動いているような働きぶりです。
足並みが揃っていない状態では「赤字だけが残る」という結末が有力であるため、現場責任者が方針転換をどのタイミングで試みるかが重要になると思われます。