ユベントスは公式サイト上で取締役会に承認された 2023/24 シーズン前期の決算書(PDF)を掲載いたしました。UEFA 主催大会への出場辞退が影響して売上高は6000万ユーロの減少を記録し、半期で9510万ユーロの赤字を計上する散々な経営状況となっています。
なお、主な項目の数値は下表のとおりです。
年度 | 変化量 | |||
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項目 | 2023/24 | 2022/23 | 数値 | % |
売上高 | 173.3 | 233.4 | (60.1) | -25.75% |
選手登録権益 | 17.3 | 42.8 | (25.5) | -59.58% |
事業費 | 205.5 | 210.6 | (5.1) | -2.42% |
償却費 | 67.7 | 84.7 | (17.0) | -20.07% |
事業収支 | (82.6) | (19.1) | (63.5) | 322.46% |
税引き前損益 | (93.4) | (25.9) | (67.5) | 260.62% |
当期損益 | (95.1) | (29.5) | (65.6) | 222.37% |
2023/24 シーズン前期の売上高は前年同期から約6000万ユーロの減少を記録。「UEFA 主催大会への出場辞退」という事情があるため、売上高の落ち込みは想定内でしょう。
- チケット販売: 約400万ユーロの減少
- UEFA CL の主催試合が3試合分
- 放映権収入: 約4700万ユーロの減少
- CL 不出場による大会賞金および放映権料
- スポンサー収入: 約1000万ユーロの減少
- CL 不出場によるメディア露出の減少
経営的に減収は痛手ですが、いずれの項目に関しても「そのぐらい落ち込むであろう」と予想はされていました。
一方で前年度は「2950万ユーロの赤字」だったのが今年度は「(前年の3倍超となる)9510万ユーロの赤字」にまで膨らんだことは大問題です。その原因は「人件費の圧縮が全く進まなかったから」です。
選手年俸 &スタッフ費用 |
選手登録権の 償却・評価損 |
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2022/23 【前期】 |
3000万ユーロの削減 (€161.7m → €131.3m) |
1000万ユーロの削減 (€84m → €74.6m) |
2023/24 【前期】 |
300万ユーロの削減 (€131.3m → €128.2m) |
1400万ユーロの削減 (€74.6m → €60.1m) |
選手獲得に費やした移籍金の『減価償却費』は「2022/23 シーズン前期よりもさらに少ない額」にまで圧縮されています。その一方で『(選手の年俸が主たる要素の)人件費』は「全く削減されていない状況」です。
しかし、ユベントスは2023年夏に実績豊富なベテラン勢が退団。代わりにチームに加わったのは “下部組織出身の若手選手” です。にも関わらず、「人件費の圧縮分が半期で計300万ユーロ」は不自然すぎるでしょう。
退団した選手 | Po | 新加入選手 | ||
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選手名 | 年俸 | 所得税 | ||
ボヌッチ | €6.5m | €6m | CB | ハイセン |
クアドラード | €5m | €4.2m | WB | T・ウェア |
カンビアーゾ | ||||
パレデス | €5m | €2.1m | MF | ニコルッシ |
ディマリア | €7m | €3.2m | FW | ユルディズ |
X | €23.5m | €15.5m | 合計 | X |
「(フィオレンティーナに期限付き移籍中の)アルトゥール選手の年俸をほぼ全額負担」した上で「ユベントスと現在契約下にある選手または監督を含むスタッフ陣に『税別で1000万ユーロ超の年俸』を今年度から “新たに” 分配」しない限り、このような決算書の数値にはならないからです。
クラブは「2023/24 シーズン後期に増資が完了するので『キャッシュフロー』と『今季終了時点での金融負債』は大きく改善される」と(精一杯の)ポジティブな見立てを言及していますが、「人件費の削減に失敗している現実」の方が重くの伸し掛ることでしょう。
このままでは夏の移籍市場での補強が全くままならないため、フロント陣がどのように策を講じるのかに注目です。