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コラム: 散々な試合内容でもクラブ内から『アッレグリ監督交代論』が聞こえてこない理由

 ガゼッタ・デッロ・スポルト』が「内容の乏しいアッレグリ監督の交代論がユベントス内から浮上してこない」と不思議がる記事を掲載しています。これはピッチ上ではなく、ピッチ外の理由が影響しているからです。

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チャンピオンズリーグ出場権を数シーズン諦める経済的余裕はない

 まず、ティフォージが希望する『ポゼッション型への移行』には必要条件が存在します。具体的には「チャンピオンズリーグ出場権を数シーズン諦めること」です。

 この条件を満たすことが “現在のユベントス” には不可能なのです。

 パラティチ CFO 時代の拡大戦略でユベントスは大幅赤字を計上。UEFA と FFP の和解協定を締結しているため、さらなる赤字を計上することはできません。

 だから、クラブは「内容よりも(チャンピオンズリーグ出場権の確保という)結果」を重視して『アッレグリ続投』を選択しているのです。

 

“CL制覇を目的とするチーム” でヨーロッパリーグに出場してもクラブ経営は赤字

 次に、クラブの優先順位が「チャンピオンズリーグの出場権を確保すること」になっている理由は『チャンピオンズリーグに勝つための年俸体系』が残存しているからです。

表: 推計年俸の比較
選手名 年俸 選手名 年俸
Szczesny (33) €6.5m GK Perin (30) €1.7m
Cuadrado (34) €5m RSB DeSciglio (30) €1.7m
Bonucci (35) €6.5m CB Gatti (24) -
Rugani (28) €3.5m CB Bremer (26) €5m
A. Sandro (32) €6m LSB Danilo (31) €5m
Pogba (30) €8m RMF Fagioli (22) -
Paredes (28) €5m DMF Locatelli (25) €3m
Rabiot (28) €7m LMF Miretti (19) -
Di Maria (35) €7m RWG Kean (23) €3m
Vlahovic (23) €7m CF Milik (28) €3.5m
Chiesa (25) €5m LWG Kostic (30) €3.5m
€66.5m 合計 €29.9m

 この年俸体系が維持できる理由は「チャンピオンズリーグ出場で得られる大会賞金」です。

表2: UEFA からの賞金額(2022/23 シーズン)
CL EL
本戦出場給 €15.64m €3.63m
係数給 €32.969m
(4位)
€4.224m
(※ 1位)
GS
成績給
1勝 €2.8m €1.1m
1分 €0.93m €0.55m
決勝T
進出給
プレーオフ X €0.5m
ラウンド16 €9.6m €1.2m
準々決勝 €10.6m €1.8m
準決勝 €12.5m €2.8m
決勝 €15.5m €4.6m
優勝賞金 €4.5m €4m

 チャンピオンズリーグは出場給と係数給で約4800万ユーロ。これがヨーロッパリーグだと計800万ユーロです。

 ヨーロッパリーグの大会報酬では『高給組』の年俸をカバーし切れません。赤字決算だと FFP に抵触しますし、セリエAのリーグ戦が「月曜開催」となることでのチケット収入の落ち込みも発生します。

 これらの理由で「内容よりも結果」をクラブ上層部が求めているのです。

 

アッレグリ監督の立場も安泰ではない

 アッレグリ監督の立場は 2023/24 シーズンも安泰なのかと言いますと、答えは「NO」です。

 チャンピオンズリーグ出場権を確保できずに FIGC から勝点剥奪の “泣きっ面に蜂” となれば、『再建モード』に強制移行させられてしまうからです。

  1. アッレグリ監督を解任し、チーム戦術を植え付けることに長けた【トレーナー型の指揮官】を招聘
  2. 以下の選手を中心に “カンピオナートのみ” に専念
    • GK: ペリン
    • DF: デ・シリオ、ガッティ、ブレメル、ダニーロ
    • MF: ファジョーリ、ロカテッリ、ミレッティ
    • FW: スーレ、ケーン、コスティッチ(イリング)
  3. レンタル移籍組の呼び戻しは可
    • DF: カンビアーゾ、デ・ヴィンテル
    • MF: ロヴェッラ、ニコルッシ
  4. 上述の選手以外に「手取り年俸総額3000万ユーロ」までは組み込みが可能

 ただし、上述のことが起きる可能性が高いのは2024年の夏でしょう。2023/24 シーズンはアッレグリ監督に託した方が経営陣にはメリットが大きいからです。

  • アッレグリ監督に 2023/24 シーズンも託すと、
    1. 補強に関する上層部との衝突リスクが低い
    2. 『選手補強の費用対効果』ではなく『試合内容の乏しさ』に批判が向かう
    3. 高給取りの選手が愛想を尽かして出て行くのは渡りに船

 親会社 Exor のエルカン会長は「持続可能な経営」を注文しているため、「試合内容」は評価基準の最上位には位置しません。これがティフォージやメディアと経営陣の間に齟齬が生じる理由と考えられます。

 

 FIGC (イタリア・サッカー連盟)がセリエAでの獲得勝点の反映に対する “調整” を今後も行うことが予想されるのです。

 それなら、人件費を『チャンピオンズリーグ経由での収入がなくても決算赤字にならない水準』にまで圧縮することを最優先とし、本格再建に向けた準備を整える状況での適任はアッレグリ監督だと思われます。