『トゥット・スポルト』によりますと、トリノ地検によるユベントスの不正会計疑惑に対する予審請求が担当判事によって却下されたとのことです。検察側の世論誘導による効果は限定的と現段階で言えるでしょう。
ユベントスはトリノ地検から不正会計疑惑に関する捜査を受けており、トリノ地検は本件に対する予審請求を行ったものの担当判事によって却下されたとトゥット紙が報じています。
なお、予審請求を退けた裁判所の見解は以下のとおりとのこと。
- キャピタルゲインの水増し不正疑惑
- 検察が(リーク情報などで)主張するほどの確実性はない
- スポーツ司法では「無罪」が確定
- 一般司法の裁判所は「サッカー界の確立した慣習」の立場
- 検察は『一般司法の見解』を覆そうと奔走中
- 新型コロナが及ぼした経済的影響
- “予測不能なパンデミックの状況” が考慮され、「免責」はないが「軽減」はあり得る
- この間での行政犯罪は普段とは異なる顔を持つと裁判所は思い出させたいようだ
- 増資の実施
- 調査や疑惑を知った後もユベントスの株主は増資をしている
- クラブの経営方針は正しいとの確信があったと推測される
ポイントとなるのは『所属選手の評価額』ですが、一般司法は「選手の獲得交渉を行うクラブが『選手の評価額』を決めるのはサッカー界の確立した慣習」との立場を採っている模様です。
これを覆すには「商品の価値は『公定価格』に基づいて決まる」などの “統制経済” が司法の場で認定される必要があります。したがって、検察側の主張が全面的に認定されるのは極めて困難と言わざるを得ないでしょう。
トリノ地検は「(5年にも渡る)盗聴捜査」をしていたことが明るみに出たのですから引き返すことはできません。有罪判決を勝ち取れなければ、捜査責任者のキャリアが潰えるのは不可避です。
だから、裁判が始まる前の時点で「ユベントスは有罪である」との世論を構築するための情報提供をメディアに対して行っていたのでしょう。
捜査当局が『自分たちが優位になる情報』だけをメディアにリークするのは日本でもあることです。「捜査関係者によりますと〜」の枕詞で始まるニュースは起訴前には頻繁に流れるものの、裁判が決まると見聞きしなくなる “あれ” です。
そのため、検察(=トリノ地検)側の主張だけで判断することは事実を見誤るリスクが存在します。
『和解』の可能性は「盗聴捜査で取得した情報のメディアへの提供」によって潰えた状態と言えるでしょう。検察当局との法廷闘争がどのような結末を迎えるのかにも注目です。