ユベントスが公式サイト上で 2021/22 シーズン通期の決算(案)を発表し、2億5430万ユーロの赤字で終えることが明らかになりました。売上高や事業費の細かい内容を取り上げたいと思います。
収支の詳細は下表のとおりです
項目 | 2021/22 (通期) |
2020/21 (通期) |
---|---|---|
チケット販売 | 32,293,161 | 7,751,571 |
テレビ・ラジオ放映権 およびメディア収益 |
170,517,144 | 235,310,322 |
スポンサー/広告収益 | 142,538,542 | 145,907,636 |
製品・ライセンス販売 | 24,434,746 | 25,303,332 |
選手登録権益 | 40,782,790 | 43,179,105 |
他の収益 | 32,813,867 | 23,259,788 |
総収益 | 443,380,250 | 480,711,754 |
用具/サプリ等購買費 | (3,516,846) | (4,107,197) |
販売用製品購買費 | (9,745,706) | (11,765,499) |
外部サービス | (74,015,182) | (63,582,421) |
選手年俸/スタッフ費用 | (325,880,103) | (298,193,764) |
他の人件費 | (26,211,512) | (24,699,659) |
選手登録権への費用 | (31,853,535) | (37,328,857) |
他の支出費用 | (12,183,517) | (9,655,748) |
総事業費用 | (483,406,400) | (449,333,144) |
選手登録権の償却/評価損 | (173,360,643) | (197,437,118) |
有形/無形資産の償却 | (16,874,423) | (19,540,420) |
引当金 | (6,448,710) | (11,595,333) |
営業利益 | (236,709,927) | (197,194,261) |
金融利益 | 3,295,322 | 5,420,514 |
金融費用 | (19,165,850) | (16,617,595) |
JV費用 | 87,694 | 591,171 |
税引き前利益(損失) | (252,492,761) | (207,800,171) |
当期税金 | (2,588,366) | (2,967,812) |
繰越税金 | 767,820 | 882,551 |
当期利益(損失) | (254,313,307) | (209,885,432) |
2021/22 シーズンはスタジアムの収容制限が解除されたため、『チケット収入』が復調しました。しかし、それでも「コロナ前の 60% ほど」に留まっています。
売上高を落とした最大の要因は『放映権料』の減収です。2020/21 シーズンと比較すると「6000万ユーロ強のマイナス」となりました。これは 2019/20 シーズンの後半戦が2020年7月以降に組み込まれたことが要因です。
したがって、放映権料は「前年度との比較だけで論じるべきではない項目」と言えるでしょう。
また、売上高を引き上げていた『選手登録権益(≒選手の売却による移籍金収入)』は各クラブが2021年夏に移籍金の投入を見送ったことで “低空飛行” が続いている状況となっています。
赤字額が拡大した理由は「売上高は減少したのに事業費が増加したから」です。
『選手の年俸やスタッフ費用』は3000万ユーロ弱の増加を記録し、『外部サービス』も1000万ユーロ強の増加となっています。
支出の大きい項目での事業費が増えているのです。他の項目で支出額を削減してもカバーし切れないことが現実と言わざるを得ないでしょう。
なお、ユベントスは取締役会で『新たな3年計画』が採択されました。これにより「(選手の年俸など)人件費の削減」に本腰を入れることになるでしょう。
マロッタ GM 時代の『人件費』は年間2億3000万ユーロほどでしたが、パラティチ CFO 時代になると『人件費』は +30% に拡大して年間3億ユーロ超となりました。
その一方で売上高の主要項目(入場料・放映権料・スポンサー料の合算値)は「年間4億ユーロ弱で横ばい」だったのです。
『拡大路線』を採った成果が数字で示されなかったのですから方針転換は不可避です。今季や来季で満了する現行契約で高給を得ている選手たちへの風当たりが厳しくなることは避けられないでしょう。
スポーツビジネスの根幹である「現場が残した成績」が思わしくない現状に対し、経営陣がどのような判断を下すのかに注目です。