サッリ監督が就任したユベントスが徐々にプレー内容を向上させています。この部分を「パスマップ」の観点から見ていくことにしましょう。データは between the posts のものです。
■ パスワークが機能した試合の特徴
ユベントスのパスワークが機能した10月の代表戦ウィーク前の試合で見られたパスマップは以下のものです。
- 正六角形の頂点にパスを受ける選手がいる
- レジスタ(≒ ピアニッチ選手)が正六角形の中央に陣取る
- レジスタが最も多くボールに触れる
サッリ監督のスタイルは「レジスタに毎試合150回のボールタッチを要求する」というものですから、ユベントスではピアニッチ選手のボールタッチ数が増えることになります。
また、前後左右さまざまな場所に “ピアニッチ選手を経由して” ボールを送り届けられているかも重要と言えるでしょう。
■ 試合内容が低調だった 2019/20 シーズン序盤の特徴
一方、試合の内容が低調だったシーズン序盤戦で見られたパスマップの特徴は以下のものです。
- 正六角形の形が大きく崩れている
- 頂点が1つ欠けている
- 右 SB が低い位置でボールに多く触れている
- レジスタが正六角形の中央でボールに触れていない
- “レジスタ以外の選手” がボールに最も多く触れている
サッリ監督のスタイルで肝になるレジスタが最もボールに触れていないのですから、試合内容が低調になるのは当然です。リスク管理のために「『右 SB』が『偽 CB』として3バックになること」を選択したとしても、「ボールに触れる際は高い位置を取ること」を意識する必要があります。
また、FW やトップ下で起用される3選手は「CB と SB の間(= ハーフスペース)でボールを引き出すこと」が求められます。これは「ピアニッチ選手からの縦パス」だけでなく、「SB などからの斜めのパス」も対象となります。
ただ、全員が「ボールを引き出す役割」で結果を出す必要はありません。「パスコースを作る動きをする役割」も重要になるため、ピッチ上にいる攻撃陣で上手く役割分担ができているかが鍵と言えるでしょう。
■ 課題は「ピアニッチの代役を務められる選手が未知数」
サッリ監督が抱えている課題は「ピアニッチ選手の代役をどうするか」です。ピアニッチ選手が先発出場をしなかったセリエA第4節ベローナ戦のパスマップは以下のとおりです。
この試合ではレジスタの位置に入っていたベンタンクール選手が “消えて” いましたが、これがパスマップからも示されています。
パスワークが機能する前でしたから、改善点は散見されている状態です。そのため、試合内容が向上した現状でピアニッチ選手の代役を務められる選手を用意することが重要になります。
クラブと代表の双方でフル稼働は望めませんし、負傷など予期せぬ事態に見舞われた場合に備えておく必要があります。サッリ監督が過密日程の中でどのようにチームを成熟させようとするのかに注目です。