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コラム: “サイドバックの入れ替え” を敢行したユベントスの狙いは「会計上の収益を今夏に出すこと」なのでは?

 2019年夏の移籍市場でサイドバックのトレードを2件成立させたユベントスですが、「戦力的な上乗せに成功した」とは言い切れません。新戦力がフィットするかは未知数ですし、別の狙いがあると言えるでしょう。その理由を考察したいと思います。

画像:ユベントスの新フロント陣
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■ カンセロを売却しても、キャッシュフローはマイナス

 今夏に移籍が成立したユベントスのサイドバックによるキャッシュフローの収支は下表のとおりです。

表1:2019年夏の移籍市場収支(キャッシュフロー)
選手名 2019年 2020年 2021年 2022年
L.スピナッツォーラ € 9.83m € 9.83m € 9.84m
ロジェリオ
J.カンセロ € 21.7m € 21.7m € 21.6m
合計収入額 € 31.53m € 31.53m € 31.54m
J.カンセロ € 13.47m € 13.47m
L.ペッレグリーニ € 7.33m € 7.33m € 7.34m
ダニーロ € 12.3m € 12.3m € 12.4m
合計支出額 € 43.1m € 43.1m € 29.74m
収支 - 11.57m - 11.57m 1.8m

 ユベントスは「ダニーロ選手とのトレードによってプラス効果が生じた」と発表していますが、「カンセロ選手をバレンシアから獲得した際の移籍金の支払いが残っていること」には触れられていません。

 そのため、今夏に移籍が決定したサイドバック陣の移籍金の動きに焦点を当てると「大幅なマイナス」になるのです。

 ダニーロ選手とスピナッツォーラ選手は「似たタイプの選手」ですから、カンセロ選手を売却するのであれば、「スピナッツォーラ選手に賭ける」という選択肢もあったはずです。しかし、それをしなかったのは会計上の理由があるからでしょう。

 

■ “今夏の会計上の収支だけ” は大きなプラスを計上できる

 今夏にユベントスが行ったサイドバックの取引はキャッシュフローでは「マイナス」です。しかし、会計上の収支は “今夏に限っては” 大きな「プラス」を計上しているのです。

表2:2019年夏の移籍市場収支(会計上)
選手名 2019年 2020年 2021年 2022年
L.スピナッツォーラ € 29.5m
ロジェリオ
J.カンセロ € 65m
合計収入額 € 94.5m
J.カンセロ € 32.32m
L.ペッレグリーニ € 4.4m € 4.4m € 4.4m € 4.4m
ダニーロ € 7.4m € 7.4m € 7.4m € 7.4m
合計支出額 € 44.12m € 11.8m € 11.8m € 11.8m
収支 50.38m - 11.8m - 11.8m - 11.8m

 ただし、これは『選手の獲得費』を減価償却することで、支払いを将来に先送りしているだけです。そのため、トータルの収支では “ほぼトントン” です。

  • 今夏にユベントスが行った SB の移籍による会計上の収支:
    • 収入額: 9450万ユーロ
    • 減価償却の残額: 9132万ユーロ
      • カンセロ: 3232万ユーロ
      • ペッレグリーニ:2200万ユーロ
      • ダニーロ:3700万ユーロ
    • 収支: 318万ユーロ
  • カンセロ選手のみを売却した場合の会計上の収支:
    • 収入期待額: 5500万ユーロ(仮)
    • 減価償却の残額: 3232万ユーロ
    • 収支予想額: 2268万ユーロ(仮)

 長期的な視点からは「カンセロ選手のみを放出すること」が正解になります。ただ、「今夏(= 2019年夏)に会計上の収支で大幅なプラスを記録する必要がある」のであれば、2件のトレードは適切と言えるでしょう。

 つまり、それ以外には戦力的にも会計的にもサイドバックの移籍を成立させる必要性を見出すことはできないのです。

 

 大型補強の噂がメディアを賑わせていますが、選手補強および放出の動きから「会計的には “火の車” である可能性が高い」と指摘できるレベルです。

 だから、クラブの会計に大きなプラスをもたらすことが可能なディバラ選手やルガーニ選手を売却することにフロント陣が躍起になっているのでしょう。短期的な収益に固執した自転車操業は遅かれ早かれ行き詰まるでしょう。

 マロッタ GM を切った判断のマイナス面が生じていることは否定できません。現フロント陣が上手く挽回できるのかに注目です。