先日、ユベントスは公式サイト上で 2017/18 シーズン前期の決算を発表しました。今回は貸借対照表 (B/S) とキャッシュフローで示された項目を確認することにしましょう。
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バランスシート(貸借対照表、B/S)
項目 | 流動資産 | 固定資産 | 全体 | |
---|---|---|---|---|
金融資産 * | ー | 4.1 | 4.1 | |
現金および現金同等物 | 72.1 | ー | 72.1 | |
金融資産の部:合計 | 72.1 | 4.1 | 76.2 | |
金融債務 | スポーツ信用銀行 | (16.1) | (34.0) | (50.0) |
銀行 | (66.5) | (97.1) | (163.6) | |
金融サービス会社 | (92.2) | (50.0) | (142.2) | |
金融負債の部:合計 | (174.8) | (181.1) | (355.9) | |
純金融負債 | (102.7) | (177.0) | (279.7) |
半年前(2017年6月30日時点)から大きく変わった点は「現金および現金同等物が大きく減り、金融サービス会社からの債務が増えたこと」です。この理由は「選手の移籍による支払いが増えたため」との言及があります。
移籍金4000万ユーロ(ボーナスは別)で加入したベルナルデスキ選手の件を例にしましょう。
- ユベントスは3年分割で移籍金を支払う
→ 年間1333万ユーロの支出が発生 - 会計上は契約年数で償却する
→ 5年間に渡って年800万ユーロずつ計上すれば問題なし
支出を1度に計上しても良いのですが、(高額なこともあり、)複数年に分割して償却することが一般的です。その際、移籍金支払い用の資金を用立てる必要があり、金融機関から一時的に借り入れることは問題ないと言えるでしょう。
シュチェスニー選手やデ・シリオ選手の移籍でも同様のオペレーションをしていると考えられるため、それほど問題視する必要はないと思われます。
項目 | 流動資産 | 固定資産 | 全体 | |
---|---|---|---|---|
金融資産 * | ー | 4.1 | 4.1 | |
現金および現金同等物 | 140.0 | ー | 140.0 | |
金融資産の部:合計 | 140.0 | 4.1 | 144.1 | |
金融債務 | スポーツ信用銀行 | (6.0) | (37.0) | (43.0) |
リース会社 | ー | ー | ー | |
銀行 | (67.6) | (76.9) | (144.5) | |
金融サービス会社 | (39.1) | (80.0) | (119.1) | |
金融負債の部:合計 | (112.7) | (193.9) | (306.6) | |
純金融負債 | 27.3 | (189.8) | (162.5) |
キャッシュフロー
2017/18 シーズン前期における資金の流れを示すキャッシュフローは下表のとおりになりました。
項目 | 2017/18 (前期) |
2016/17 (前期) |
|
---|---|---|---|
税引き前損益 | 46,288,703 | 80,563,484 | |
非 現 金 項 目 |
償却・減価償却・評価損 | 59,583,296 | 45,062,921 |
退職給付引当金等 | 1,932,772 | 4,139,601 | |
選手登録権の利得 | (74,141,922) | (115,800,010) | |
固定資産の処分利得 | - | 7 | |
選手登録権の損失 | 69,182 | 197,030 | |
経常外収入と費用 | - | (332,350) | |
関連会社等に対する持分 | 542,737 | 365,883 | |
金融収益 | (2,182,730) | (2,103,696) | |
金融費用 | 6,401,050 | 6,063,605 | |
売掛金と非金融活動の変動 | (11,489,508) | (24,745,103) | |
支払債務と非金融負債の変動 | (41,131,754) | 11,498,070 | |
法人税等の支払額 | (7,659,373) | (3,689,702) | |
退職給付引当金の活用 | (1,361,181) | (2,898,301) | |
営業活動によるCF | (23,148,729) | (1,687,561) | |
選手登録権への投資 | (101,930,884) | (157,585,625) | |
選手登録権関係の支払い増減額 | (48,090,282) | 45,494,951 | |
選手登録権の売却 | 86,292,621 | 149,873,988 | |
選手登録権関係の債権増減額 | (2,152,559) | (25,198,844) | |
選手登録権支払いの債権増減額 | (15,748,311) | 24,685,934 | |
他の固定資産への投資 | (8,444,138) | (5,432,778) | |
Jビレッジプロジェクトの返済 | - | (2,100,000) | |
投資の購入 | (833,300) | - | |
他の固定資産の処分 | 31,605 | 170,295 | |
利息収入 | 50,140 | 39,187 | |
投資活動によるCF | (90,825,109) | 29,776,813 | |
新規ローン | 40,000,000 | - | |
中長期ローンの返済 | (7,396,353) | (5,804,001) | |
中長期信用供与枠の使用 | 50,000,000 | - | |
ファクタリング会社の使用 | (26,901,466) | (8,909,149) | |
金融リースの返済 | - | (7,681,129) | |
ローンの利息 | (1,319,764) | (1,438,346) | |
その他の金利負担 | (1,758,082) | (1,554,449) | |
金融活動に関するその他の活動 | (103,687) | 116,757 | |
財務活動によるCF | 50,520,648 | (25,270,317) | |
当期キャッシュフロー | (61,453,190) | 2,818,935 |
営業 CF と投資 CF はマイナス、財務 CF はプラスとなっています。ここから、「金融機関から資金を借り、選手登録権の支払いに充てた」と読み取れます。
昨年度が(ポグバ選手の売却などで)好調すぎたという点は否定できません。本年度はクラブとしての経営力が問われるだけに、後半戦で良い数値を残すことができるのかに注目です。