『サッカーダイジェスト』にイタリア在住の片野道郎氏が “UEFA FFP で影響を受けるクラブ” の代表格としてユベントスを挙げています。ただ、「片野氏の想定したほどの影響をユベントスが被ることはない」と指摘しておく必要はあるでしょう。
2021/22 シーズンの決算と 2022/23 シーズンの決算は別物
ユベントスは公式サイト上で決算書を掲載しているので「おおよその財務状況」を確認することは可能です。
2021/22 | 2022/23 【前期】 |
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【前期】 | 【通期】 | ||
売上高 … (A) | €223.1m | €443.4m | €276.2m |
選手年俸 スタッフ費用 |
€161.7m | €325.9m | €131.3m |
選手登録権 への費用 |
€13.4m | €31.9m | €5m |
選手登録権の 償却 |
€84m | €173.4m | €74.6m |
Squad Cost … (B) | €259.1m | €531.2m | €210.9m |
(B) / (A) | 116.1% | 120% | 76.4% |
片野氏の主張で問題なのは「2021/22 シーズンの数値を使っていること」と「スカッドコストの漏れがあること」の2点です。(片野氏の計算だと『選手登録権の費用』が含まれていない)
ユベントスが『2021/22 シーズンの決算内容』で UEFA FSR (Financial Sustainability Regulations) の目標値を超過する 120% を記録していたことは事実です。
しかし、FSR が導入されるのは “2022年6月" から。スカッドコスト(Squad Cost)の規制が発動するのは「2023/24 シーズンから」なのです。これらの事実を無視した煽りは問題と言わざるを得ません。
2022/23 シーズン前期の “スカッドコスト” が売上高に占める割合は 76.4%
ちなみに、ユベントスが公表している 2022/23 シーズン前期の決算書から計算したスカッドコストが売上高に占める割合は 76.4%。FSR で 2023/24 シーズンに定められた 90% を大きく下回っています。
これが「ユベントスは UEFA FFP/FSR で片野氏の想定したほどの影響を被らない」と言える根拠です。
ユベントスにとって影響が大きいのは「キャピタルゲイン疑惑での勝点剥奪によるチャンピオンズリーグ出場権の喪失(=約1億ユーロの売上高の減少)」でしょう。
“費用対効果が優れない高給取りの選手” をチームで抱えておく余裕が失われてしまったからです。
高給取りの選手をチームに残すための資金を「若手有望株の売却益で捻出」することは合理的とは言えません。だから、高給取りで費用対効果が見合わない選手を中心に移籍記事が出ているのです。
ユベントスは「費用対効果が見合わない高給取りのベテラン選手が契約満了で退団することによる新陳代謝」が “今後も” 続くだけです。今夏(2023年夏)から始めなければならない状況ではありません。
チーム事業費の圧縮は必要ですが、その理由が『片野氏が主張する根拠』とは異なる点に留意は必要です。