2019/20 セリエA第23節ベローナ戦に 2-1 で逆転敗けを喫したことでユベントスを取り巻く環境が騒がしくなっています。この2失点は止むを得ないものとは言えないため、原因についての言及をすることにしましょう。
■ 判断ミスとポジショニングミスが高い代償となった1失点目
まず、1失点目の発端となったのは76分にベローナのペッシーナ選手が左サイドのライン際に陣取るラゾビッチ選手に展開するところです。
ここにパスを通されるのは止むを得ないですし、ユベントスはクアドラード選手が即座にチェックに向かっています。そのため、ボールを受けたラゾビッチ選手は「中へのパス」を選択しています。
スペースに戻されたパスにユベントスはベンタンクール選手が、ベローナはペッシーナ選手が反応し、ボールの回収に向かいます。
1点目はここでの判断(= ベンタンクール選手がヒールキックでクリア)が結果的に致命傷となりました。なぜなら、クリアを狙ったボールがペッシーナ選手に当たって跳ね返り、ユベントスのゴール方向に向かってしまったからです。
ボールの進行方向にいたピアニッチ選手が右足を伸ばすも、ボールキープまでには至らず。
ボールの軌道を少し変えるだけに留まり、それが(不運にも)プレッシャーをかけていたボリーニ選手に当たり、DF の裏への抜け出しを許す結果となりました。
デ・リフト選手とボヌッチ選手の間を難なく突破したボリーニ選手はシュチェスニー選手との 1対1 を制し、同点弾となりました。では、分岐点になった瞬間のプレーをもう少し掘り下げることにしましょう。
■ 「ベンタンクールのヒールキック」と「デ・リフトのポジション」は厳しく査定されるべき
1失点目の分かれ道になったのは「ベンタンクール選手がヒールキックでのクリアを試みた場面」でしょう。ユベントスにとってアンラッキーな形でボールが動いてしまったものの、判断次第で失点を確率を低くできたはずだからです。
- 「ヒールキックでのクリア」を狙ったベンタンクールの判断
- 「ピアニッチへのパス」が可能だったのでは?
- ヒールキックによるクリアは誰が回収?
- デ・リフト(とボヌッチ)のポジショニング
- クアドラードが抜かれた場合に備えるのは適切だが、ボールが中に戻った後も『右外』のレーンに留まったのはどうか?
- ボヌッチは『中央』のレーンにいたため、『右のハーフスペース』をケアする CB が不在だった
責任の割合は「ベンタンクール選手の安易な判断」が大きいです。
ただ、『完全ゾーン』を採用するサッリ監督のシステムで『右ハーフスペース』を開けた CB の2人のポジショニングも「リスク管理」の面で問い質されるべきものと言えるでしょう。
■ 2失点目は「デ・リフトのミス」が起因
次に2失点目ですが、直接の原因は左手でヘディングシュートを妨害したボヌッチ選手の責任です。ただ、そのプレーの呼び水となったのは「CK を与えることになった守備」にあります。
83分の場面でユベントスはベローナにプレッシャーをかけ、最終ラインまでボールを下げさせました。ここでクンブラ選手がロングキックを選択。
このプレーは「ボールを捨てる」に等しい判断によるものであり、「攻撃陣は適切にプレッシングをしていた」と評価されるべきものです。ところが、これを “フリーの” パッツィーニ選手が落とします。
ユベントスの最終ラインには3選手がいたにも関わらず、誰もロングボールを競り合っていないのです。この状況は厳しく問い質されるべきでしょう。
(もし、ルガーニ選手がこのようなプレーをしていれば猛バッシングを受けていたはずだからです)
パッツィーニ選手が落としたボールをベローナはボリーニ選手が、ユベントスは(遅れて)デ・リフト選手が回収に向かいます。
結果はボリーニ選手が先にボールを回収し、その時点でデ・リフト選手と入れ替わり、ドリブルを開始。
ペナルティーエリアに侵入したボリーニ選手がシュートを放つも、これはボヌッチ選手が身体に当てて CK に逃れました。(ミスが絡んだ)流れの中での失点は回避したものの、この左 CK でボヌッチ選手がハンドで PK を献上しています。
どちらの失点も「シュートシーンでの対応」にミスはありませんでしたが、「決定機を作り出してしまう不味い守備」ではあったことは事実です。
しかも、サッリ監督が主力と認定して重用している選手が絡んでいるのですから、監督と当該選手の責任は免れないでしょう。
シーズン前半戦なら「新コンセプトへの適応中だから」との理由がありますし、こうしたミスが出ることは止むを得ないことです。
しかし、戦術が落とし込まれているはずのシーズン後半戦で主力選手がやってはならないミスであることに変わりありません。擁護できないミスですから、改善要望に勢いが出るのは自然なことです。サッリ監督が修正できるのかに注目です。