NO JUVE, NO LIFE!!

- FINO ALLA FINE - ユベントス関係のニュース記事を扱うサイト

戦術分析: チャルハノールによって引き起こされたブラックアウト(2019/20 セリエA第31節ミラン戦)

 ミランに 4-2 の逆転敗けを喫したユベントスですが、試合後にサッリ監督は「ブラックアウト」と表現しました。「原因不明」と言いたいのでしょうが、実際は「チャルハノール選手のプレーを制限できなかった」のが原因です。

 ディバラ選手の不在で攻撃が停滞した点も影響していますが、守備陣にある “穴” は別件として対処が必要と言えるでしょう。

画像:ミランに逆転敗けを喫したユベントス
PR

 

■ チャンネル(= CB と SB の間のスペース)を突かれた1失点目

 まず、1失点目は「ボヌッチ選手のハンド」が決め手になりましたが、そこに至る原因は「テオ・エルナンデス選手に “チャンネル侵入” を許したこと」です。

画像:ミラン戦での1失点目 - 1

 ケシエ選手からのパスを受けたテオ選手は外側で待つチャルハノール選手に展開。パスを出すと同時に自身は “チャンネル侵入” を狙ったスプリントを開始します。

 一方のチャルハノール選手はリターンパスを選択。この瞬間ではボールはどちらのチームが確保するかは分からないイーブンな状況でした。

画像:ミラン戦での1失点目 - 2

 ただ、ボックス内に侵入した時点でテオ選手が肩を入れてベルナルデスキ選手を吹き飛ばしてボールを確保。ボヌッチ選手のハンドを誘発する決定的な場面を作ることに成功しています。

画像:ミラン戦での1失点目 - 3

 ボヌッチ選手は第23節ベローナ戦でもハンドをしているため、今季2度目のハンドは批判の対象になるでしょう。とは言え、テオ選手(の侵入)かチャルハノール選手(のパスコース)のどちらかを制限できていれば、失点の確率を低くすることはできたはずです。

 虚を突かれた失点ではないだけに改善はそれほど難しいことではないと言えるでしょう。

 

■ ボヌッチが利き足ではない方のシュートコースを消しに走った2失点目

 次に2失点目ですが、これは「シュートに持ち込まれるのは止むを得ない」という攻撃でした。ミランのパスワークはそれだけ素晴らしく、ユベントスの守備陣には「シュートブロック」しかチャンスがなかったからです。

画像:ミラン戦での2失点目 - 1

 逆サイドで浮いていたレオン選手が中へのカットインを見せたため、ユベントスがラビオ選手がチェックに向かいます。そのため、レオン選手はケシエ選手に横パス。「ケシエ選手の前方が空いている」ことからベンタンクール選手はスペースを消しに動きます。

画像:ミラン戦での2失点目 - 2

 ただ、この動きで「チャルハノール選手へのパスコース」が生まれ、そこにボールを展開されてしまいます。

画像:ミラン戦での2失点目 - 3

 ユベントスはクアドラード選手がチャルハノール選手のチェックに向かいますが、チャルハノール選手はイブラヒモビッチ選手への縦パスを選択。

画像:ミラン戦での2失点目 - 4

 クアドラード選手に当たってボールスピードは弱まるもののイブラヒモビッチ選手にまでボールが届いたことでポストプレーが可能となり、ケシエ選手がボールを引き取る形になります。

画像:ミラン戦での2失点目 - 5

 決定機がケシエ選手に訪れたことで「シュート対応」が迫られたユベントスですが、ボヌッチ選手がマズい対応をしてしまいます。

画像:ミラン戦での2失点目 - 6

 ボヌッチ選手が比重を置いたのは「自身とルガーニ選手の間を突破され(て左足シュートを打たれ)る」とシナリオでした。ただ、ルガーニ選手がコースの大部分を消しており、判断を誤ったことは否定できないでしょう。

画像:ミラン戦での2失点目 - 7

 ケシエ選手は右利きですから、ボヌッチ選手がルガーニ選手の方に寄ってくれるほどシュートコースは広くなります。味方を信用したプレーができない DF に最終ラインを統率することは不可能と言わざるを得ないでしょう。

 

■ ロナウドの無警戒で軽率な持ち上がりが招いた3失点目

 3失点目は「ルガーニ選手の対応の不味さ」が目立ちましたが、そこに至る経緯を含めて修正しなければ同じ状況を作られることになるでしょう。なぜなら、ロナウド選手のプレーが発端だからです。

画像:ミラン戦での3失点目 - 1

 中盤にまで下がってボールを受けたロナウド選手はドリブルで持ち上がろうとしますが、ボナベントゥーラ選手の存在を軽視しており、サンドされる形でボールロストをしてしまいます。

画像:ミラン戦での3失点目 - 2

 上手く入れ替わったチャルハノール選手は前線に残っていたレビッチ選手に縦パスを供給。ミランはカウンターを発動させて攻撃陣がユベントス陣内になだれ込みます。

画像:ミラン戦での3失点目 - 3

 状況はユベントスが1人多い「4対3」ですが、ルガーニ選手は “プロフェッショナルファール” と止めることを決断。レビッチ選手を倒します。

画像:ミラン戦での3失点目 - 4

 「ここで倒すべきだったのか」との問いへの回答は「そうだ」になるでしょう。なぜなら、レビッチ選手とレオン選手はスピードがあるため、ボックス手前まで撤退した場合は「ボヌッチ選手が置き去りにされる」という現実があるからです。

 この問題を考慮すると、イエローで済む位置で倒すという判断は的確だったと言えます。ただ、ルーズボールをレオン選手に回収されたことが(ルガーニ選手にとっては)不運でした。

画像:ミラン戦での3失点目 - 5

 それでも自らの持ち場にまでは戻ったのですが、レオン選手のシュートがルガーニ選手に当たったことでコースが変わってシュチェスニー選手の守るゴールに吸い込まれ、逆転ゴールを許すことになりました。

画像:ミラン戦での3失点目 - 6

 ルガーニ選手がカウンター対応でもう少し上手く振る舞えたことは事実でしょう。ただ、カウンターを発動させたのは「ロナウド選手のミス」ですから、ここをチーム内で批判できないようだと同じ形での失点は起こり得ることは明らかです。

 

 防ぎようのない立て続けの失点で逆転を許したのなら、それは「ブラックアウト」と表現しても良いでしょう。ただ、ミラン戦の失点は「防げるもの」や「確率を大きく下げることができるもの」ばかりです。

 チャンピオンズリーグ制覇を見据えるなら、修正する必要がある守備時の “穴” です。サッリ監督がどのような修正策を講じるのかに注目です。