ユベントスの現所属選手が “サッリボール” に適用できるのかを考察するシリーズの最終回となる第3回目は守備を担う GK と DF です。それでは細かく見ていくことにしましょう。
■ サッリボールで GK や DF に要求される主な項目
サッリ監督は「ショートパスを主体に前進する(= チーム全体を押し上げる)こと」に念頭を置いたチーム作りをする指揮官です。そのため、以下の要素が求められることになるでしょう。
Po | 役割 |
---|---|
GK |
|
CB |
|
SB (7番の後方) |
|
SB (11番の後方) |
|
GK や CB が足元の技術を求められることが特徴ですが、「SB が左右で求められる役割が異なる特殊性」があります。
両 SB が攻め上がる前提ではなく、前方に(カットインを担当する)『7番』がいる方の SB がより攻撃的な仕事を期待される傾向にあります。そのため、左右どちらのサイドに『7番』の選手が配置されているかが大きなポイントと言えるでしょう。
■ ユベントス SB 陣のサッリボールに対する適性
CB を本職とする3選手は足元の技術に問題はないため、適性を確認する必要はないでしょう。一方で SB の適性は次のとおりです。
左サイド | 右サイド | |||
---|---|---|---|---|
7番の後 | 11番の後 | 7番の後 | 11番の後 | |
デ・シリオ | △ | △ | 〇 | |
A・サンドロ | 〇 | 〇 | ||
カンセロ | △ | 〇 | ||
スピナッツォーラ | △ | ? | △ | ? |
ロジェリオ | 〇 | △ |
A・サンドロ選手は左ウィンガーが『7番』でも『11番』でも適応可能ですが、右サイドではウィンガーを務める選手によって SB の1番手となる選手が変わる状況にあります。
したがって、この状況を現場の責任者であるサッリ監督がどのように評価するかに賭かっていると言えるでしょう。
■ 補強の必要性
守備陣で補強の必要があるのは「センターバック」です。これは CB を本職とする選手が現時点で3選手しかおらず、単純に頭数が不足しているからです。そのため、最低でも1選手は獲得する必要があります。
一方でサイドバックは足りています。サッスオーロに期限付き移籍していたロジェリオ選手が戻ってくるため、A・サンドロ選手を除く4選手の中から1選手を放出し、バランスを保ちたいところです。
もしくはコンバートで CB の枚数を増やすという “ギャンブル” もありでしょう。この場合は「多額の移籍金を費やすことを回避できる」というメリットがありますが、「コンバートに失敗する」というリスクもあります。
筋肉系のトラブルが少なく、ターンオーバーに消極的なサッリ監督の下でなら、「SB から CB へのコンバート」は検討に値するものと考えられます。
■ 現 GK/DF 陣への寸評
なお、現守備陣のサッリボールに対する寸評は下表のとおりです。
寸評 | |
---|---|
シュチェスニー | 正GK候補。ローマ時代にポゼッションサッカーをしており、適応についての問題はない見込み |
ペリン | 足元の技術が評価されているのではないため、おそらく第2GK が濃厚 |
キエッリーニ | 左利きの CB という強みを持つが、年齢的にフル稼働が難しいことがネック |
ボヌッチ | ボール保持時の能力は世界屈指だが、守備での対応には不安を残す悩ましい存在 |
ルガーニ | エンポリ時代にサッリボールを2年も経験済。CB の一角を占めることが求められる選手 |
デ・シリオ | 前方が『11番』なら、主力として計算できる選手。攻撃力を期待するのは酷 |
A・サンドロ | 左 SB の揺るぎない1番手。他チームに引き抜かれた場合の穴は大きすぎる |
カンセロ | 右 WG に『7番』を配置するなら、右 SB の1番手。『11番』なら、止むを得ず放出とすべき |
スピナッツォーラ | 突破力はあるが、SB としての守備力は未知数な点が多いことが懸念点 |
ロジェリオ | サッスオーロでポゼッションサッカーを2年プレーしていたことが強み。A・サンドロに次ぐ存在 |
A・サンドロ選手を除き、どの選手にも「序列を2番手にする理由」が存在することが特筆事項です。そのため、サッリ監督による選別が重要になるでしょう。
左サイドに『7番』を置くなら、カンセロ選手の放出は可能です。(バランスを取ることに長けたデ・シリオ選手が1番手になるため)
ただ、適任者が(現状では)ロナウド選手しか見当たらないため、右サイドに『7番』を置くことが現実的です。そうなると、カンセロ選手の放出は “自殺行為” であり、フロント陣は「補強戦略の見直し」を迫れることになるでしょう。
サッリ監督がターンオーバーを積極的に用いる指揮官ではないため、豊富な選手層を誇る必要はありません。守備陣については「センターバックに誰を補強し、サイドバックから誰を放出するのか」が注目点になると考えられます。