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【コラム】 ポグバの移籍金をどう有効活用するか

 ポグバ選手がレアル・マドリードに移籍するための交渉が始まりそうだとの報道がメディアで本格化し始めました。

画像:移籍が起こりそうなポグバ

 実際に移籍するとなった場合、その移籍金の金額は1億ユーロを超えると見られています。その資金をどう有効活用すべきかを考察することにしましょう。

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 まずユベントスですが、移籍を希望する選手がクラブに多額の移籍金を残してくれるのであれば、ファンは移籍を受け入れるという傾向を持っています。

 レアル・マドリードに移籍したジダン選手のケースや、バイエルンに移籍したビダル選手がその例だと言えるでしょう。ただし、反発を招かなかった最大の理由はクラブのフロント陣が選手の移籍金を上手く活用し、チームのレベルを引き上げることに成功したからです。

 例えば、ルチアーノ・モッジGM(当時)はジダン選手が希望したことを受け、水面下で以下の4選手の獲得交渉を行い、チームへの加入を実現させました。

  • ジャンルイジ・ブッフォン(GK、パルマ)
  • リリアン・テュラム(DF、パルマ)
  • パベル・ネドベド(MF、ラツィオ)
  • マルセロ・サラス(FW、ラツィオ)

 サラス選手だけは怪我でインパクトを残せなかったのですが、残る3選手はいずれも “レジェンド” としてファンから崇められる存在ばかりです。このことを彷彿とさせるような効果のある取引を移籍市場でできるかが鍵になると言えるでしょう。

 

 もちろん、注意しなければならないこともあります。特に、選手の移籍金そのものが非常に高騰しており、目当ての選手をリーズナブルな価格で獲得することが難しくなっていることはファンとしても理解しておかなければなりません。

 しかし、クラブの財政運営が厳しいため選手売却の必要が生じた訳ではありません。したがって、純粋に選手補強費として移籍金を使うことができることはポジティブなことです。

 ポグバ選手の移籍金で獲得すべき選手の条件を抜き出すと次のような項目になると思われます。

  • 主軸の1人として5年前後は活躍が見込める
  • 高いクオリティーを有している
  • 移籍金が高すぎない(5000万ユーロ未満)
  • ユベントスの現主力選手とポジションが重複しない

 上記を踏まえた上で、実際にどの選手にオファーを出すべきかを考察することにしましょう。

 

 MFの補強は不可欠

 ポグバ選手が移籍するとなれば、MFを本職とする選手を最低1人は補強しなければなりません。ピアニッチ選手が加入したため、現状ではマルキージオ、ケディラ、ポグバの3選手が在籍していますが、そこからポグバ選手が抜けるのです。

 現状の戦力を維持・向上させるにはピアニッチ、マルキージオ、ケディラの3選手だけでは不十分なのは明らかです。そのため、最低でも1選手は補強する必要があります。

 タイプとしてはトップ下でも高い能力を発揮できる攻撃的MFか、マルキージオ選手のようにレジスタを任せられる能力を有しているMFが獲得候補となるでしょう。

  • 攻撃型MF
    • マレク・ハムシク(28、ナポリ)
    • オスカル(24、チェルシー)
  • 守備型MF
    • アンドレ・ゴメス(22、バレンシア)
    • ハビエル・マスチェラーノ(32、バルセロナ)
    • グジェゴシュ・クリホビアク(26、セビージャ)

 マルキージオ選手は怪我で来シーズン前半戦は出場が難しいため、守備でも貢献が見込める選手の方を優先すべきと言えるでしょう。ストゥラーロ選手やレミナ選手のように成長が見込める若手選手がいますが、上述した選手ぐらいの即戦力選手は獲得したいところです。

 

 DFやFWは成長が期待できる若手有望株に

 MF陣と比較すると、DFおよびFW陣は即戦力のレギュラー選手を求めているという状況ではありません。ただ、若返りが必要になることだけは確かであり、2年後や3年後に絶対的な主力として成長するような有望株の選手を獲得することが求められています。

 イタリア版ホームグロウンルールが本格始動することを考えると、「若手有望選手をプリマベーラで3年間育成する」という目的でスカウト網を最適化するために費やすという戦略も考えられることです。

 DFやFWはレギュラー格の選手が移籍しない限り、即戦力選手の獲得にポグバ選手の移籍金をつぎ込む必要はありません。この点がMFと大きく異なる部分と言えるでしょう。

  • DF
    • マッティア・デ・シリオ(23、ミラン)
  • FW
    • ドメニコ・ベラルディ(21、サッスオーロ)
    • ミヒー・バチュアイ(22、マルセイユ)

 メディアに名前が出ている選手はあまり多くありません。アッレグリ監督が現在のレギュラー選手のクオリティーに不満を持っていない限り、即戦力選手の獲得に乗り出すことはないでしょう。

 プリマベーラ出身選手をトップチームに定着できるチャンスを与えることも必要になりますから、良いバランスを保って補強戦略を遂行する必要があるものと思われます。

 

 “ブッフォンの後継者獲得用資金” として金庫に保管

 ポグバ選手の移籍によって得た移籍金を今夏に使い切らなければならないという理由はありません。獲得したい選手がいないのであれば、見送ることも判断の1つです。

 ユベントスではブッフォン選手が2シーズン後に引退する可能性が高く、いずれは後継者探しをしなければなりません。レアーリ選手などをローン移籍という形で経験を積ませていますが、ブッフォン選手の後継者となるレベルにまで成長するかは神のみぞ知ることです。

 ブッフォン選手が引退を決断した時、ユベントスが保有権を持つGKが後継者として認められるレベルになければ、移籍市場で即戦力GKを補強する必要が生じます。そのような事態に見舞われた場合に、ポグバ選手の移籍金をストックしておくという戦略もアリと言えるでしょう。

 

 移籍市場で大金を費やすチームより、良い選手を獲得したチームの方が良いことは当然です。そして、必要がないと判断すれば、獲得を翌シーズン以降に延期することを決断する勇気も必要になります。

 ファンやメディアから「補強しろ」「金を使え」と批判されることもありますが、明確な補強戦略やプロジェクトを持っていれば、批判を受け流すことは容易にできるでしょう。ポグバ選手の移籍金はパニックボタンを押さないことの重要性を教えてくれる良い教材になると思われます。