リーグ戦で3試合ぶりの勝利を手にしたことでピルロ監督は上機嫌で試合後の会見に応じていましたが、課題が露呈しなかった訳ではありません。今回はピンチを拡大し、失点を招く原因になっている MF 陣の守備にスポットを当てることにしましょう。
■ 前半32分の同点ゴールを許した時の守備
スポットライトを当てるのは前半32分にスペツィアのポベガ選手が同点ゴールを決めた場面です。このシーンでユベントスの MF 陣が見せた守り方は「微妙」なものでした。
理由は「中央のスペースが空くから」です。
守備時に中央のスペースが空いたままなら、相手チームがそこでボールを引き出すことは容易になります。“中央の持ち場” を担当する MF はシステムによって異なりますが、ピルロ監督のユベントスでは担当が曖昧になったままなのです。
この問題を修正できなければ、対戦相手に突かれることになります。それではスペツィア戦で失点した前半32分の場面を細かく見ていくことにしましょう。
■ 釣り出されたダニーロが空けたスペースにバルトロメイの侵入を許す
発端となったのはダニーロ選手がボールを保持したベルデ選手のマークに付いたことで、背後にスペースが生じたことでしょう。ベルデ選手はそのスペースにパスを出し、バルトロメイ選手が回収に向かいました。
ただ、これは試合中に起こり得ることであり、ミスではありません。
ユベントスはボヌッチ選手が対応に向かい、バルトロメイ選手を見ていたベンタンクール選手が「ボヌッチ選手の空けたスペース」を埋めるために戻っています。
また、マッケニー選手も DF ラインの前で適切なポジショニングを取っており、ここまでの対応に問題はありません。しかし、この後に問題点が露呈することになります。
■ 逆サイドからゴール前に駆け上がるポベガを誰も見ていない
ボヌッチ選手がバルトロメイ選手と対面して時間を稼ぐことに成功している間に、ダニーロ選手が戻って来て加勢しており、ボールホルダーへの対応は的確に行われています。
ところが、中央では「ゴール前に詰めるポベガ選手を誰も見ていない」という問題が起きています。
システム的に対面していたマッケニー選手は「逆サイドのケア」を優先させ、ポベガ選手の動きを見ていません。また、レジスタ起用のアルトゥール選手も『中央のレーン』ではなく、『(ユベントスの)左ハーフスペース』を戻っている最中です。
この動きは「選手の自己判断」と言うより、「チームの守備戦術」に基づく動きと考えられます。そのため、2列目(や3列目)から飛び出して来る選手を捕まえ切れないようだと決定機を作られ続けることになってしまうでしょう。
■ ゴール正面でフリーの相手へのパスコースが存在
ユベントスの MF 陣の守り方に問題があるのは「ポベガ選手にラストパスが出る直前」を確認すれば明らかです。
ゴール正面で「どフリー」となり、パスコースも存在するのです。守備側の人数がいる状況でこのような場面が作られるのは大問題と言わざるを得ません。
ポジショニング的に止むを得ないのは「ボヌッチ選手の空けたスペースを埋めるために戻ったベンタンクールセンスだけ」でしょう。アルトゥール選手とマッケニー選手の守り方には改善点が多く存在します。
- 戻る際に首を振って周囲を確認しないの?
- ゾーンディフェンスなら、中央のスペースを空けるなど論外
- マンツーマンなら、ポベガをフリーした責任は重い
アルトゥール選手はポベガ選手の位置を把握する守り方をしていれば、(ポベガ選手への)パスコース上にまで戻ることは時間的にできたはずです。しかし、それをせずにラストパスを通されてしまいました。
この状況で打たれたシュートを DF や GK が防ぐのは並大抵のことではありません。昇格組のスペツィアだから1失点で済んでいるのであり、強豪を相手にするとバルセロナ戦のように複数失点となってしまうことでしょう。
ポゼッションを志向するサッリ監督の時も「守備ブロックを活用した守り方」に難があり、そこを突かれたことで勝点を取りこぼす失点を積み重ねる結果となりました。ピルロ監督が守備面で前任者との違いを見せることができるのかに注目です。