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戦術分析: ナポリ戦での2失点はキエッリーニのキャプテンシーがあっても防ぐことは不可能

 2019/20 セリエA第21節ナポリ戦にユベントスは 2-1 で敗れました。「キエッリーニ選手の不在」や「メンタル面」を理由に弁解していますが、それは誤りです。それぞれの失点の場面と原因について言及することにしましょう。

画像:2019/20 セリエA第21節ナポリ対ユベントス
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■ 62分の1失点目は「雑なクロス」が発端

 まず、1失点目の大きな原因は「マテュイディ選手が上げた “あまりに雑なクロス”」です。

画像:セリエA第21節ナポリ対ユベントス1

 ディバラ選手からパスを展開されたマテュイディ選手は左サイドの深い位置からクロスを供給。これがペナルティーエリア内どころか、はるか手前にいたインシーニェ選手の方にボールが飛んでしまいます。

 「ボックス内で待ち構える攻撃陣のポジショニング」も批判の対象になり得るのですが、これは別途で触れることにしましょう。思わぬ形でボールが飛んできたインシーニェ選手は持ち前のテクニックでボールを回収。

画像:セリエA第21節ナポリ対ユベントス2

 反時計回りに素早くターンし、ロングカウンターを発動させます。ただし、この時点でユベントスはラビオ選手をカウントしなくても5選手が残っている状況でした。

画像:セリエA第21節ナポリ対ユベントス3

 「人数は足りている状況」だったのですから、カウンター対策そのものに原因があるとの認識を持つ必要があるでしょう。

 

■ 数的不利な相手にスペースを与え過ぎてカウンターを許した1失点目

 ロングカウンターを許す結果になったユベントスですが、ドリブルをするインシーニェ選手がユベントス陣内に入った時点では「6対4」と数的有利な状況にありました。

画像:セリエA第21節ナポリ対ユベントス4

 そこでナポリは最前線でスプリントをしていたミリク選手がスピードダウン。ユベントスの最終ラインとの間に距離を作るとともに、インシーニェ選手にパスの選択肢を与える動きをします。

 インシーニェ選手はベンタンクール選手にドリブルのコースを塞がれつつある状況だったため、こちらもスピードダウン。(右前で並走する)カジェホン選手とA・サンドロ選手が近い距離にいたこともあり、ミリク選手にボールを預けます。

画像:セリエA第21節ナポリ対ユベントス5

 ユベントスは戻って来たラビオ選手がミリク選手のチェックへと向かいますが、ミリク選手はそれよりも先にベンタンクール選手の背後を走るインシーニェ選手へのパスを展開。

画像:セリエA第21節ナポリ対ユベントス6

 ユベントスの最終ラインが下がり続けていたために時間とスペースがあったインシーニェ選手はミドルシュートを選択します。

画像:セリエA第21節ナポリ対ユベントス7

 枠を捉えたシュートはシュチェスニー選手がストップするも、こぼれ球をジーリンスキ選手が押し込んでナポリが先制することになりました。

 崩され方としては「第15節ラツィオ戦の1失点目と同じ」です。この時も相手のエース FW であるインモービレ選手を見ていたのは MF のベンタンクール選手で、最終ラインの CB 陣はブロックを作ることを優先し、相手に時間とスペースを与えていたからです。

 チーム内で最も守備力に長けているはずの DF 陣が相手 FW 陣と対峙するよりも、ゴールとの間にブロックを敷くことを優先しているのですから、クリーンヒットをもらうリスクは避けようがないと言わざるを得ないでしょう。

 

■ 86分の2失点も『完全ゾーンディフェンス』による弊害

 また、86分に喫した2失点目も『ゾーンディフェンス』による弊害が色濃く現れています。この場面はナポリの最終ラインからのフィードをエルマス選手が胸トラップでインシーニェ選手に預け、インシーニェ選手からの縦パスに反応する所から始まります。

画像:セリエA第21節ナポリ対ユベントス8

 抜け出しに成功したエルマス選手はそのままサイドライン際をドリブル。ユベントスはデ・リフト選手がスライドして対応し、ナポリのミリク選手は「広くなった CB 間」を突く形で前方にスプリントを開始します。

画像:セリエA第21節ナポリ対ユベントス9

 エルマス選手は縦方向にスプリントをするミリク選手へのパスを選択。ミリク選手はそのままドリブルで深い位置まで侵入します。

画像:セリエA第21節ナポリ対ユベントス10

 ミリク選手はここでクロスを入れたのですが、ゴール前に詰めるナポリの選手は不在。ボールはそのまま逆サイドまで流れる結果となりました。

 ただ、ユベントスの選手も(A・サンドロ選手がゴール前に絞っていたため)逆サイドは無人で結果的にカジェホン選手が回収に成功。そこからクロスが供給され、インシーニェ選手のボレーシュートでユベントスを突き放しました。

画像:セリエA第21節ナポリ対ユベントス11

 この場面で問題なのは「ユベントスの守備陣全員がボールウォッチャーになっていること」でしょう。誰もミリク選手やインシーニェ選手を見ていないのです。

 クロスを入れるミリク選手に付いていたボヌッチ選手は “デ・リフト選手の前方にある自らの持ち場” に向けて走っていますし、クアドラード選手も “持ち場” に向けて移動中です。この守り方は的確とは言えないでしょう。

 アッレグリ監督なら「ミリクの対応に当たったボヌッチは右(でマンマーク)」にし、「デ・リフトは左のスペースをケア」し、「クアドラードはインシーニェをマンマークで見る」と『ゾーンを一時的に解除』する形で守ったと考えられるからです。

 

 個々の選手がデュエルの際にミスをしているなら、メンタリティーなどでカバーできるでしょう。ただ、守備システムの “欠点” を上手く突かれているのですから、キエッリーニ選手がピッチ上にしても結果は同じです。

 ラツィオ戦で浮き彫りになった “欠点” を修正できている兆しが見えていないことはネガティブな要因です。修正の見通しが立つのかに注目です。