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コラム:「攻撃型のポゼッションチーム」として組織的に機能したアヤックスに完敗を喫したユベントス

 ユベントスの 2018/19 シーズンのチャンピオンズリーグはアヤックスに敗れ、準々決勝で終わりを告げました。「試合内容」は意外ですが、「試合結果」は妥当と言えるでしょう。そうなった原因について考察をしたいと思います。

画像:ユベントスの大会敗退を報じるガゼッタ・デッロ・スポルト
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1:アヤックスのスタイルは戦前に予想されたものだった

 まず、アヤックスのテン・ハフ監督が採用したシステムは戦前に予想された 4-2-3-1 でした。

 「攻撃重視のポゼッションサッカー」をするチームで、自陣内でデ・ヨング選手が(縦パスなどで)攻撃のスイッチを入れ、最前列のタディッチ選手が(0トップで)攻撃にアクセントを付けて2列目の選手が絡むという形が基本でした。

 アムステルダムで行われたファーストレグでも、アヤックスは 4-2-3-1 を採用。ロナウド選手にゴールは許したものの、1-1 で引き分け、勝ち抜けの可能性を十分に持ってセカンドレグを迎えたのです。

 

2:ファーストレグで明らかになった両チームの長所と短所

 ファーストレグは 1-1 で引き分けたものの、試合内容から両チームの力関係が次のように浮かび上がりました。

  • ユベントスに優位性(= アヤックスの問題点)
    • 中央でのデュエルで優勢(ルガーニとベンタンクール)
    • ロナウドの決定力とD・コスタの突破力
    • 相手に押し込まれた時の守備陣の強さはユベントスが上
  • アヤックスに優位性(= ユベントスの問題点)
    • 両サイドでのデュエルで優勢
      → ネレス対カンセロ、ツェイク対A・サンドロなど
    • マンジュキッチとの空中戦
    • ビルドアップの能力とハイプレスの精度はアヤックスが上

 どちらのチームも長所と短所を抱えており、「セカンドレグでファーストレグの内容から上乗せできた方が勝利に近づく」という状況にあったのです。

 

3:アヤックスの方が「相手陣内でプレーする時間を長くするための術」を持っていた

 第1戦では両チームともに「相手を自陣内に押し込んだ側が攻めあぐねる」という展開はほとんどありませんでした。

 これはアヤックスが「攻撃」に重きを置いたチームで、相手陣内でも通用する崩しのパターンを持っていたこと。その一方で「ブロックを自陣で構築する守備」は得意にしていないことが理由と言えるでしょう。

 これらを踏まえたアヤックスが「より積極的に前線からプレスを行う」という意識を強めてセカンドレグを迎えたことで、ユベントスは自陣の深い位置から脱出することができない状況に陥ってしまったのです。

画像:ユベントスのビルドアップを阻害するために必要なこと

 以前に指摘したように、ユベントスのビルドアップには “問題” があります。4-2-3-1 を採用するアヤックスがユベントスのビルドアップを阻害し、自陣から脱出させないことはそれほど難しい要求ではありません。

 ファン・デ・ベーク選手が少し下がり目でピアニッチ選手を見るだけでユベントスは蹴り出す以外の選択肢がなくなってしまうからです。前線に “ターゲットマン” が不在のユベントスが思うような攻撃ができなかったのは当然の結果と言えるでしょう。

 

4:アヤックス戦のセカンドレグではアッレグリ監督の采配ミスもあった

 チームとしての持ち味である「攻撃重視のポゼッション」を鮮明にしたアヤックスに対し、ユベントスのアッレグリ監督は采配ミスをしていました。

  1. ディバラに代えてケーンを投入
    • 「デ・ヨングのマーク」も期待するなら、ケディラが適任
      → 疲労度が少なく、空中戦も期待できるため
    • ケーンとロナウドのコンビはアトレティコ戦以来で、高度な連携は期待できない
  2. エムレ・ジャンを右 CB に下げた3バックでポゼッション
    • アトレティコ戦で使用済のため、相手も想定している
    • ファン・デ・ベークがエムレ・ジャンのマークに行き、ダブルボランチの一角がピアニッチを見ればプレスは容易

 アッレグリ監督は後半開始と同時にケーン選手を投入したのですが、これがチームの首を絞める結果となりました。

 「ケーン選手のロナウド選手との連携」は洗練されていない状況なのですから、コンビネーションは期待できません。1-1 で後半に入ったのですから、アトレティコ戦と同様に得点を取りに行く試合終盤までケーン選手の投入を我慢すべきだったと言えるでしょう。

 また、エムレ・ジャン選手を3バックに下げた判断も首を傾げざるを得ない采配です。サイドでの突破ができていない状況では “パスの出口” がないことに変わりありません。しかも、アヤックス側は微調整を行うだけでプレスの効果は継続するのです。

 根本的な問題は「相手のハイプレスを回避するパスワーク」を持たないことですが、アッレグリ監督の不味い采配がそれに拍車をかけたことは否定できないでしょう。

 

 ユベントスの現状は「ポゼッション(= ポジショナルプレー)」と「堅守速攻」のどちらかでのみ力を発揮する選手が混在しています。“良いとこ取り” ではなく、“中途半端” なチーム編成となっているのですから、アヤックスのように「組織として完成したチーム」に全く歯が立たないのです。

 ロナウド選手に多額の金銭を費やして獲得した以上、『攻撃重視のポゼッション』を重視したプレーモデルに舵を切る必要があります。それができるかが今夏の注目点でしょう。ユベントスのフロント陣がどのように大鉈を振るうのかに注目です。