2022/23 シーズンが終了しましたので、ユベントスの選手・監督への評価を行いたいと思います。評価は A〜D の4段階、A が最高評価です。 最終回となる第5回目の評価対象は FW 陣です。
フェデリコ・キエーザ(25):C
キエーザ選手が 2022/23 シーズンに記録した出場成績は下表のとおりです。
大会名 | 試 | 得点 | 時間 | |
---|---|---|---|---|
2022/23 (出場時間率:29.3%) |
セリエA | 21 (6) | 2 (5) | 843' |
UEFA CL | 1 | 0 | 16' | |
UEFA EL | 7 (3) | 1 (1) | 401' | |
イタリア杯 | 4 (2) | 1 | 223' | |
合計 | 33 (11) | 4 (6) | 1483' | |
全試合 | 56 | ー | 5070' |
前十字靭帯断裂からの復帰を目指すシーズンとなったため、戦力として実質的にプレーできたのは後半戦のみ。その中でもシーズン全体での出場時間率は 30% に達しました。それだけ序列が高いことを意味しているのでしょう。
来季は「トラップ時の繊細さ」と「周囲の状況に応じた的確なプレー選択」が課題になるはずです。
キエーザ選手は『圧倒的なトップスピードで上述の課題など “七難” を覆い隠してきた選手』です。現状の推定年俸ですら費用対効果に見合っていないため、課題の克服状況が評価に直結することになるでしょう。
ユベントスよりもポゼッション型が色濃いイタリア代表での立場が『先発選手候補』ではなく『ロングカウンター要員』となっている現実を直視する必要があります。
ドゥシャン・ヴラホヴィッチ(23):C
エースとして大きな期待が寄せられたヴラホヴィッチ選手が残した出場成績は次のとおりです。
大会名 | 試 | 得点 | 時間 | |
---|---|---|---|---|
2022/23 (出場時間率:58.1%) |
セリエA | 27 (22) | 10 (2) | 1931' |
UEFA CL | 5 (5) | 1 (1) | 413' | |
UEFA EL | 8 (5) | 3 (1) | 465' | |
イタリア杯 | 2 (2) | 0 | 136' | |
合計 | 42 (34) | 14 (4) | 2945' | |
全試合 | 56 | ー | 5070' |
出場時間率は公式戦全体で 60% 弱。何よりも費用対効果が見合わなかったことが尾を引きました。
ヴラホヴィッチ選手は「ミリク選手のポストプレー」と「ケーン選手の魔法のワンタッチ」の “両方を” 兼ね備えていて費用対効果が見合う推定年俸なのです。どちらもない現状では厳しい評価を受けるのは必然でしょう。
「CF が手にする決定機が少ないことが問題」との擁護をミリク選手やケーン選手にもしているのなら説得力はありますが、ヴラホヴィッチ選手を擁護する目的だと逆効果です。他の CF も状況は同じだからです。
相手 CB に監視されると何もできなくなっていまう状況を改善することが来季の課題となるでしょう。
アルカディウシュ・ミリク(29):B
マルセイユから期限付き移籍でユベントスに加入しているミリク選手が 2022/23 シーズンに残した成績は以下のとおりです。
大会名 | 試 | 得点 | 時間 | |
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2022/23 (出場時間率:41.8%) |
セリエA | 27 (17) | 7 (1) | 1589' |
UEFA CL | 5 (3) | 2 | 338' | |
UEFA EL | 4 (1) | 0 | 125' | |
イタリア杯 | 3 | 0 | 69' | |
合計 | 39 (21) | 9 (1) | 2121' | |
全試合 | 56 | ー | 5070' |
40% 強の出場で9得点1アシストと「控え CF」の立場で十分な成績を残しました。
悔やまれる点としては「得点やアシストのほとんどがシーズン前半に記録されたこと」です。2023年1月末に左太ももを負傷して約2ヶ月の離脱を強いられるなど、尻すぼみになったことが少し残念でした。
それでも費用対効果に見合った活躍だったことは事実です。完全移籍に切り換えるだけの価値はありますし、その場合は「シーズン全体を通してコンスタントに活躍すること」が目標になるでしょう。
モイゼ・ケーン(23):B
ケーン選手が記録した出場成績は下表のとおりです。
大会名 | 試 | 得点 | 時間 | |
---|---|---|---|---|
2022/23 (出場時間率:28.4%) |
セリエA | 28 (11) | 6 | 988' |
UEFA CL | 5 (1) | 1 | 108' | |
UEFA EL | 5 (3) | 0 | 234' | |
イタリア杯 | 2 (1) | 1 | 109' | |
合計 | 40 (16) | 8 | 1439' | |
全試合 | 56 | ー | 5070' |
序列は CF の3番手。出場時間率は 30% 弱に留まりましたが、1500分にも満たない出場時間かつターンオーバーが採られた試合での出場が多かった状況で8得点は立派と言えるでしょう。
今季のプレーでの評価されるべきは「プレスバックに代表される守備やポストプレーの精度向上など公式記録での数字では示されにくい部分での成長があったこと」です。
理不尽な批判を浴びせられる立場でしたが、それに値しない献身性と貢献度があったことは事実です。自分を見失わずにプレーし続けることが来季のテーマになるでしょう。
アンヘル・ディ・マリア(35):Bー
PSG からフリーで加入したディ・マリア選手が 2022/23 シーズンに残した出場成績は下表のとおりです。
大会名 | 試 | 得点 | 時間 | |
---|---|---|---|---|
2022/23 (出場時間率:44.3%) |
セリエA | 26 (15) | 4 (4) | 1364' |
UEFA CL | 3 (2) | (3) | 146' | |
UEFA EL | 7 (7) | 4 | 555' | |
イタリア杯 | 4 (2) | 0 | 183' | |
合計 | 40 (26) | 8 (7) | 2248' | |
全試合 | 56 | ー | 5070' |
シーズン中盤は眩い輝きを放っていましたが、シーズン序盤にコンディション不良で苦しんだこととシーズン最終盤にスペイン勢などテクニック型のチームとの対戦で試合から消えて続けたことがマイナス評価の理由です。
ディ・マリア選手には「若手選手にとっての手本」という面も期待されていたため、来季以降に(同胞でもある)スーレ選手など FW の若手有望株が成長曲線を描く要素の1つになったのかで評価が上乗せされることになるでしょう。
マティアス・スーレ(20):B
Bチームからトップチームに昇格したスーレ選手が記録した出場成績は次のとおりです。
大会名 | 試 | 得点 | 時間 | |
---|---|---|---|---|
2022/23 (出場時間率:10.6%) |
セリエA | 13 (4) | 1 | 419' |
UEFA CL | 3 | 0 | 41' | |
UEFA EL | 2 | 0 | 17' | |
イタリア杯 | 1 (1) | 0 | 60' | |
合計 | 19 (5) | 1 | 537' | |
全試合 | 56 | ー | 5070' |
出場時間率は公式戦全体での 10% ほど。537分の出場時間でしたが、セリエA初得点を決めたことが来季以降の成長を大きく促す要因になることが期待されます。
来季の課題は「身体作り」です。スーレ選手自身が「フィジカル的な準備がまだできていない」との発言を残している段階であり、特に身体面での成長を待つことが必要になるでしょう。
必然的に「コンスタントな出場機会を得るためにスーレ選手にとって理想的な所属先はどこか」が問われることになります。今夏の移籍市場で去就が注目されることになると思われます。
サムエル・イリング(19):B+
イリング選手が 2022/23 シーズンにトップチームで残した成績は下表のとおりです。
大会名 | 試 | 得点 | 時間 | |
---|---|---|---|---|
2022/23 (出場時間率:11%) |
セリエA | 12 (1) | 1 (1) | 309' |
UEFA CL | 1 | (1) | 20' | |
UEFA EL | 4 (1) | 0 | 156' | |
イタリア杯 | 1 (1) | 0 | 74' | |
合計 | 18 (3) | 1 (2) | 559' | |
全試合 | 56 | ー | 5070' |
出場時間率はスーレ選手とほぼ同じ 11%。出場時間も559分と変わらないのですが、トップチームで残したインパクトが大きく異なりました。
左サイドからの仕掛けはトップチームどころか UEFA のコンペティションでも十分に通用するレベルであり、WB としてプレーされる中で守備面での貢献も高まる成長を見せていたことが評価されるべき点です。
来季は「1500分前後の出場時間」を記録することが目標となりますし、それを達成するだけのポテンシャルは備わっています。そのためには「シーズンを通してチームに貢献するコンディション作り」が鍵となるでしょう。