セリエA第14節サッスオーロ戦でファンブルによる勝ち越しゴールを許したブッフォン選手(のパフォーマンス)が批判され、議論となっています。カッサーノ氏は「デ・リフトの対応が悪い」と主張していますが、戦術面からチームの動きを確認することにしましょう。
■ サッスオーロ戦で起きたプレーの内容
問題の場面は12月1日に行われたセリエA第14節サッスオーロ戦の47分に起きました。右サイドでクアドラード選手がジュリチッチ選手からのプレスを受けて前を向けなかったため、中央にボールを戻します。
この時、ブッフォン選手はデ・リフト選手に対処を任せるとともに、左サイドでフリーになっていたA・サンドロ選手にボールを展開するよう指示を出しました。
しかし、デ・リフト選手がボールが入ってきた右サイドへと蹴り返します。
すると、そのボールが中に絞って来たカプート選手の足元へと入り、ボールの回収に成功したカプート選手のシュートがブッフォン選手のファンブルを誘発し、サッスオーロが逆転に成功したのです。
失点の確率を大きく引き上げたのは「デ・リフト選手のクリアがカプート選手に渡ったこと」でしょう。しかし、そのプレーを誘発させたのはブッフォン選手の指示にあるだけに、ブッフォン選手に対する責任は妥当なものと言えるはずです。
■ ブッフォンの指示は的確だったが、状況が見えていないことが致命的
「(フリーの)A・サンドロにボールを付けろ」との指示は的確です。しかし、その指示を遂行できない状況にデ・リフト選手が置かれていたことをブッフォン選手は見落としているのです。これがあまりに致命的でした。
具体的に言うと、「デ・リフト選手に付いていたボガ選手の存在を完全に見落としている」からです。
クアドラード選手が中央にボールを戻した際、ボガ選手はデ・リフト選手から約 3m ほど自陣よりの位置にいました。しかし、デ・リフト選手がボールを蹴り返した時には「ほぼ真横」にいるのです。
もし、デ・リフト選手が(ブッフォン選手の指示に従って)A・サンドロ選手に展開しようとしていたなら、背後からフルスプリントで迫って来ていたボガ選手の出した右足にブロックされてボール奪取を許していたことでしょう。
迫られているのが分かっているから、「左サイドへの展開」という選択肢を捨てざるを得なかったのです。したがって、デ・リフト選手をスケープゴートにしてまでブッフォン選手を擁護することは問題と言えるでしょう。
■ どう対処すべきだったのか
現実的に可能な対処方法としては以下の方法を採るべきだったと考えられます。
戻されたボールはデ・リフト選手に処理を任せ、ブッフォン選手はカバーに回るために後ろに下がります。それと同時に「ゴール右のスペースにボールを落とせ」とデ・リフト選手に指示を出し、落とされたボールをブッフォン選手自身が回収してA・サンドロ選手に展開という形が理想です。
サッリ監督が志向する「ボール保持」のコンセプトを満たしていますし、現実的な対処策と言えるでしょう。
しかし、実行できたかは不透明です。なぜなら、ブッフォン選手の能力次第だからです。DF に任せるという「素早い判断力」に加え、「フットワーク」と「足元の技術」が要求されるからです。
GK と DF の連携には改善の余地が残っています。今回の失点については「指示を出した側の責任」も問われるべきと言えるはずです。