直近3試合で9失点とユベントスの守備陣に大きな問題が発生しています。攻撃でカバーするにも限度があるため、修正は不可避と言えるでしょう。今回はセリエA第33節サッスオーロ戦で見られた問題点を言及したいと思います。
■ ポジショナルプレーを駆使するサッスオーロに翻弄された
サッスオーロ戦での3失点の原因を整理すると以下のようになります。
- 相手の術中(= ポジショナルプレーによる狙い)にはまってしまった
- ポゼッションで相手をおびき寄せ、逆サイドでフリーの味方に素早く展開
- ボールを受けた選手はドリブルで持ち上がり局面を逆転させる
- クリアを狙ったチェックが運悪く『相手へのパス』になった
デ・ゼルビ監督は「ボールを保持してい攻撃すること」に重点を置いたチーム作りをするため、ユベントスは「サッスオーロがボールを持った際にどう守るか」がポイントでした。
サッリ監督は「前線からのプレスでボールを奪う」という選択肢を採ったのですが、この場合は「プレスが外される」という問題が付いて回ります。サッスオーロ戦での3失点は「ボールの取り所を外されたこと」と「奪還を狙ったチェックが裏目に出た」という2つが大きな理由と言えるでしょう。
■ 1失点目の場面(29分)
まず、1失点目の場面です。自陣の深い位置からボールを繋ごうとするサッスオーロに対し、ユベントスは前線からプレスを仕掛けます。
ロナウド選手がボランチの一角であるマニャネッリ選手にプレスをかけたのですが、サッスオーロは相棒のロカテッリ選手が逆サイドでフリーになっているミュルドゥル選手に展開。ほぼ理想的な形でハイプレスを無効化にします。
ボールを受けたミュルドゥル選手の前方にいるのはA・サンドロ選手(と味方のベラルディ選手)だけですから、ドリブルによる持ち上がりを選択します。
当然、ドリブルのコースは内側です。これは逆足のウィンガーであるベラルディ選手が大外に張っているため、的確な判断と言えるでしょう。
ここまでは「想定内」のはずですし、ユベントスはベンタンクール選手が一気に間合いを詰めてボール奪取を狙います。
しかし、そのボールがA・サンドロ選手に当たって跳ね返り、ユベントスにとっては最も飛んで欲しくなかったカプート選手の足元に行ってしまいます。
カプート選手はデ・リフト選手を背負いながら、上手く反転ターン。ユベントスの守備陣が作ってしまったスペースにラストパスが出ます。
そのチャンスをジュリチッチ選手が決め切って1点を返すことに成功します。
この失点は「ベンタンクール選手のクリアが飛んだ方向が不運だったこと」と「DF 間のスペースを突かれたこと」が問題となりました。
クリアについて「方向はどうなのか」などの贅沢は言えない状況ですから、ゾーンディフェンスでスペースが生じたことが改善点になるでしょう。
■ 3失点目の場面(54分)
3失点目の発端となったのは左サイドからの展開です。サッスオーロはスローインを入れたキリアコプロス選手がリターンを受け、これをジュリチッチ選手に預けます。
ジュリチッチ選手はデ・リフト選手を背負いながらボールを落とし、キリアコプロス選手へのワンツーが成立します。
ユベントスの守備陣はデ・リフト選手が釣り出されたためにスペースができており、そこを目掛けてキリアコプロス選手はドリブルでボールを持ち込みます。
しかし、危険を察知したダニーロ選手がドリブルのスペースを消し、キリアコプロス選手のボールロストを発生させることに成功します。
ただ、ボールの転がった先にいたのはサッスオーロのカプート選手。ボールは回収したものの、シュートコースは消されているため、右サイドへの展開を選択します。
ベラルディ選手は縦に持ち出して右足で GK と DF の間にクロスを供給。
CK にすることができたルガーニ選手がボールに触れずに見送ったことで結果的にファーにまで流れることになります。
その結果、ファーに詰めていたカプート選手が押し込んでサッスオーロが逆転に成功。ユベントスは反省点の多い失点を喫することになりました。
3失点目の場面では「ジュリチッチ選手への縦パスが入った瞬間」の守り方は問題ではありません。また、空いたスペースに気づいて即座に埋めたダニーロ選手の守備も評価されるべきことです。
むしろ、問い質されるべきは「ルガーニ選手がクロスを CK に逃れるためのクリアをせずに見送った理由」でしょう。シュチェスニー選手が「(俺が)取る!(から触るな)」と指示していれば、失点の責任は GK になるからです。
アンラッキーな部分を批判することはナンセンスですが、問題点は改善する必要はあります。サッリ監督が中途半端な対応で生じている DF 陣の “穴” をどのように埋めるのかに注目です。