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戦術分析: より効果的なパスコースが存在した場合のビルドアップをどうするか(2023/24 セリエA第4節ラツィオ戦)

 9月16日に行われた 2023/24 セリエA第4節ラツィオ戦でユベントスは鎌田選手のプレッシングで生じたボールロストからのカウンターで失点を喫してしまいました。

 この場面では「状況判断」で失点を防げた可能性があるため、チームとして成長できるかが今後のテーマになると思われます。

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ブレメルの「視野」と「足元の技術」は向上中

 ラツィオ戦で失点を許した64分のシーンではボールを持ったブレメル選手に対し、ラツィオは CF インモービレ選手がプレスを仕掛けます。

 ブレメル選手は「シュチェスニー選手へのバックパス」と「ボランチ(の2人のどちらか)への縦パス」の選択肢から後者を選択。右足アウトサイドでの切り返しから『縦パス』を出します。

 ブレメル選手が切り返した時点で(偽 WB として)ボランチの位置にいるカンビアーゾ選手がパスを要求しているのですから、ブレメル選手の判断に問題はありません。

 ただ、“自身の前方にいるファジョーリ選手” が見えていれば理想だったと言えるでしょう。『ラツィオの前線4選手を置き去りにする縦パス』を出せた可能性があったからです。

 シーズン後半戦で同様の場面が訪れた場合に『レジスタへの縦パスのコース』だけでなく『自身の前方に陣取る味方への縦パスのコース』も見える視野の広さを習得することがブレメル選手のレベルアップに直結すると思われます。

 

カンビアーゾは「ボールを受けるまでのポジショニングと身体の向き」は良かった

 ブレメル選手からの縦パスを受けたのはカンビアーゾ選手でしたが、縦パスを受けた際のポジショニングや身体の向きに問題はありませんでした。

 『カンビアーゾ選手からのパスコース』が複数存在していたからです。

  1. 『チームが想定するビルドアップ経路』
    1. カンビアーゾが “左足で” ロカテッリに落とす
    2. ロカテッリは左 CB のダニーロに展開
    3. ダニーロが左サイドのスペースを持ち上がることで前進
  2. ピッチ上に発生した『より効果的なビルドアップ経路』
    1. カンビアーゾが “右足で” ファジョーリに展開
    2. ファジョーリが右サイドを持ち上がることで前進を試みる

 カンビアーゾ選手が『右足でL・アルベルト選手とロヴェッラ選手の間を通すワンタッチパス』でファジョーリ選手にボールを届けられる自信があったのなら、そちらを選択すべきでしょう。

 局面を一気にひっくり返せるからです。

 もちろん、実際に選択した『左足のワンタッチパスで(サポートに入った)ロカテッリ選手にボールを落とす』も間違いではありません。ただ、マークに来た鎌田選手のボール奪取技術が想定外でした。

 

「背後から回り込んで右足を伸ばしてくる」は想定外

 カンビアーゾ選手にとって誤算だったのは「鎌田選手のプレッシングがセオリー通りではなかったこと」でしょう。

 セオリーは「鎌田選手はカンビアーゾ選手の正面からプレッシャーをかけ、展開先のロカテッリ選手にも追加のプレッシャーをかける2度追い」だからです。

 しかし、鎌田選手のプレッシングは「カンビアーゾ選手の背中側を回ってバックパスのコースに右足を出す」ものであり、カンビアーゾ選手はボールロストをする結果になってしまいました。

 ただし、カンビアーゾ選手が『右足でのファジョーリ選手へのワンタッチパス』や『右足でのトラップから反時計回りの90度ターンで前を向く』を選択していた場合は “鎌田選手のプレッシング” が批判されていたことでしょう。

 それだけに「刻々と変わりゆくピッチ上の状況を正確に把握して的確な判断を下せるか」は重要なのです。

 

 シーズン前半戦は『ビルドアップの型』を確立させることに重点を置き、シーズン中盤からは徐々に「『チームのビルドアップ経路』よりも効果的なパスコースが存在する場合は “上書き” が可能」とする習熟を図ることも重要になるでしょう。

 その際に重要となるのは「状況判断力」であり、これは慣れの部分が大きいと思われます。チームを成熟させるためのプロセスを上手く機能させることができるのかにも注目です。