新たにユベントスの監督に就任したピルロ監督が就任会見やインタビューで「チームの方向性」を言及したことで、大まかな戦略像が見えてきました。
『サッリ監督が解決できなかった課題』に挑むと明言したも同然ですから、「どのようなアプローチ策を採るのかは必見」と言えるでしょう。
■ ピルロ監督が口にした方向性
ピルロ監督はトップチームの主任会見やユベントスTVでのインタビューで「チームが目指すべき方向性」を口にしました。
- 攻撃性(= 攻撃的なサッカー)
- ボール喪失時の即時奪還
これらは現在の欧州サッカーのトレンドです。サッリ監督もトレンドに合致するスタイルを志向する指揮官であるから、フロント陣はアッレグリ監督を切ってまで招聘したのでしょう。
しかし、そのスタイルをユベントスで実現することはできませんでした。サッリ監督が頓挫することになった原因は今も残ったままです。
ピルロ監督は「サッリ監督と同じ方向性のチーム作りをする」と宣言しているのですから、「お手並み拝見」と言えるでしょう。
■ バイエルンやリバプールなど、直近のチャンピオンズリーグを制した王者と何が違うのか
「ボール喪失時の即時奪還」はネガティブ・トランジションという言葉で表現され、「攻撃から守備への切り替えの速さ」で計られる指標です。「ボールを失った際にどれだけ即座にプレスをかけて奪い返せるか」が代表例と言えるでしょう。
リバプールは「クロップ監督のゲーゲンプレッシング」が有名ですが、今季のバイエルンもハイケンス監督時代を彷彿させるハイプレスでチャンピオンズリーグを勝ち取りました。
高い位置でボール奪取に成功すれば、そこからショートカウンターを発動させることが可能です。そのため、現代サッカーではハイプレスの精度と回避能力が重要になっているのです。
ただ、ユベントスは『ハイライン・ハイプレス』を志向するサッリ監督のスタイルが全くと言って良いほど機能しませんでした。この問題は残ったままですから、ピルロ監督が乗り越える必要があるハードルは高いと言わざるを得ません。
■ 「プレスをサボる FW 陣」と「ハイプレスを回避された場合のプランB」が問題だった
では、サッリ監督がやろうとした “欧州の最新トレンド” がユベントスでは頓挫したかと言いますと、チーム編成に問題を抱えていたからです。
- プレスをサボる FW 陣
- 前線からプレスをかけ続けるマンジュキッチは構想外
- 寵愛されたイグアインの運動量はロナウド未満
- ハイプレスを回避された場合の『プランB』が脆弱
ビルドアップは「センターバックが起点」になるのですから、プレッシングは「センターフォワードが起点」になるのが当たり前です。そうしないと機能しないでしょう。ところが、サッリ監督時のユベントス FW 陣によるプレッシングは明らかに強度不足でした。
また、ハイプレスを突破されると相手のロングカウンターを受けることになりますが、その備えは脆弱でした。ファン・ダイク選手のような “完全無欠のCB” はいませんし、バイエルンのように俊足 DF が最終ラインを形成しているのではありません。
“サッリ監督が志向するスタイルに必要不可欠な能力を持っていない選手” がレギュラーとしてプレーしていたのですから、守備が崩壊するのは当たり前でしょう。この問題はピルロ監督が引き継いだ現チームにも残ったままです。
ピルロ監督が “聖域” に手を付ける度胸があるなら、問題を解決できる可能性はあるでしょう。それができなければ、サッリ監督の再現を見せられることになるはずです。
どのようなチームが 2020/21 シーズン開幕戦でお披露目されるのかに注目です。