コロナ禍で中断していたシーズンが再開してからの2試合を 0-0 で攻撃が機能しなかったことを受け、サッリ監督への逆風が強まっています。攻守両面で致命的な問題を抱えている点が大きなマイナスと言えるでしょう。

■ アッレグリ前監督が抱えていた “ほぼ唯一の問題” はサッリが解決した
アッレグリ監督がユベントスで抱えていた唯一の問題は「下図の状況を意図的に作れなかったこと」でしょう。

アッレグリ監督時代は相手がハイプレスを仕掛けた際に脱出することに苦労していました。つまり、「4バックと中盤3枚で相手6枚(4MF+2FW または 3MF+3FW)を剥がして前進できなかった」という問題に集約されます。
2018/19 シーズンにアトレティコと対戦した際はハイプレスの餌食になったものの、ほぼ同じメンバーで臨んだサッリ監督のチームがプレスを苦にしなかったことが代表例と言えるでしょう。
これがアッレグリ監督のチームが抱えていた数少ない問題の1つでした。そのため、「自陣(の深い位置)からのビルドアップ」と「得点力のアップ」を “上乗せ” することが期待され、サッリ監督が招聘されることになったのでしょう。
■ 問題は解消されたが、攻守両面で致命的な別問題を抱えることに
確かに、サッリ監督によって「自陣からのビルドアップ」が可能になり、ユベントスの CB が前を向いた状態でセンターライン付近でボールに触る機会を頻繁に見るようになりました。
ところが、その先に(複数の)問題を抱えることになったのです。
- 攻撃: 相手が守備ブロックを構築して待ち構えるとお手上げ
- 守備: 前線の FW にハイプレスをサボる(or 免除される)選手がいる
- 守備: CB がスピード不足でカウンター攻撃に脆弱
特に、『攻撃』を期待されて就任した指揮官のチームが「得点力不足」に陥っているのです。「守備力が低下した」とは違う批判の強さが異なります。
「得点力で守備力をカバーする」という前提が崩れかけているのですから、早急に解決策を示して結果を残すことができるかがポイントと言えるでしょう。
■ 「相手の守備ブロックは崩れない」という前提で “ゴールをもぎ取る形” を準備していたアッレグリ
サッリ監督のチームが得点力不足に直面している理由は「クロス攻撃が単調な上、エリア内で勝負するのが実質的にロナウドだけ」だからです。

上図はコッパ・イタリア決勝ナポリ戦の32分にA・サンドロ選手がクロスを入れる場面ですが、エリア内で勝負を仕掛けているのはロナウド選手だけ。他の選手は誰も間に合っていません。
「カットインからのシュートかクロス」で相手 GK を惑わせる攻撃は形作られていない状況ですし、高さ勝負ができる FW はロナウド選手だけです。これでは中央を固められるとユベントスの攻撃が行き詰まるのは当然の結果と言えるでしょう。
一方でアッレグリ監督時代にゴールが決められていた理由は「相手の守備ブロックがある状況で得点をもぎ取るパターンを確立していたから」です。
- サイドの深い位置から精度の高いクロスを入れる
- ボックス内に複数選手が侵入して勝負を挑む
- CB との単純な高さ勝負は極力回避する
- 手前に侵入した選手は「ダミー」や「フリック」も念頭に置く
- 斜めの動きで「SB と CB の間」や「逆サイドの SB の背後」を狙う
この形は「『再現』は難しいものの『得点の確率』は高い」という特徴があります。だから、試合最終盤の土壇場に1点をもぎ取ることができたのです。
ただ、相手の守備ブロックを崩す訳ではないため、大量得点があまり期待できない攻撃でもあります。(しかし、アッレグリ監督のチームはコンスタントに2点を決めていた)
チャンスらしいチャンスが作れずに得点力が乏しくなっている現状は守備力の脆弱さが既に浮き彫りになっているサッリ監督の立場がさらに危うくすることでしょう。無冠が現実味を帯びているだけに立て直し策があるのかに注目です。