ユベントスは公式サイト上で一部報道に対する声明を発表しました。報じられた内容がマフィア関連のものだっただけに、明確に否定する必要があったと言えるでしょう。
抗議した記事は『Fatto Quotidiano』が掲載したもの
ユベントスが声明を発表したのは『ファット・クオティディアーノ』が1月26日に掲載した記事に対してです。
マルコ・トリバッリョ氏が「アニェッリがマフィアと会い、検察当局がその行為に不快感を示している」と記事に書き、ユベントスが公式サイト上で「事実と異なる」と真っ向から反論したのです。
クラブの顔として多くの人と公式の様々な場所であるのですから、“フロント企業” に属する人物がそうした場に出席していたとしても不思議ではありません。マフィアと手打ちする必要がないことを考慮しても、報道内容自体が飛ばし記事に該当する可能性が高いと言えるでしょう。
ただ、この報道が出た背景は知っておく必要はあるでしょう。
発端は1人のウルトラス
“チッチョ” こと、ラファエロ・ブッチという名前を聞いたことがあるでしょうか。ウルトラスの中で存在感を示していた人物なのですが、2016年7月7日に亡くなっていたことが発見されました。
自殺だったのですが、ブッチが置かれていた立場からマフィア勢力がウルトラスの中に食い込んでいる疑いが強くなり、トリノ検察が本格捜査に乗り出したという経緯があるのです。
イタリアでは “危険試合” が指定されることがあるなど、スタジアム観戦にリスクがあります。ウルトラス同士の抗争も存在しており、ボディーガードとしてマフィアがウルトラスに接近する動機になり得るのです。
ピエモンテ州はンドランゲタ ('Ndrangheta)にとっての重要地
イタリアマフィアの本拠地は南部が中心ですが、北部はマフィアビジネスの “ハブ” として各勢力がしのぎを削っている状況です。
トリノがあるピエモンテ州はフランスやジュネーブ(スイス)に繋がる道路が存在することもあり、イタリア半島のつま先部分に当たるカラブリア州を根城とするンドランゲタ ('Ndrangheta)の勢力圏と位置づけられています。
マフィアが北部に来た理由の1つは「南部の州が対策として、マフィア構成員を追放したこと」と言われていますが、“仕事” の多い北部へと自主的に動いた構成員もいたはずです。
ユベントスがウルトラスやマフィアに便宜を図るメリットはありません。しかし、ウルトラスやマフィアは収益を上げるという目的では便宜を図って欲しいという理由が存在しているのです。
“プラチナチケット” の転売は金になる
組織が活動にするには資金が不可欠です。その際、“プラチナチケット” であるユベントススタジアムでのユベントス戦のチケットは格好の資金源になるでしょう。
完売が続くチケットですので、元値以上で転売できれば、儲けが出ます。
ナポリ対レアル・マドリード戦ではマフィアがチケット転売による収益を目論んでいるとして、地元当局が捜査に乗り出したと報じられています。そのため、ユベントス戦のチケットでも同じことが行われていたとしても不思議ではありません。
例えば、名義借りをして年間チケットを(大量に)確保し、それをマフィアが転売することで “利ざや” を稼ぐことが可能になります。こうした不正行為への対策を行うことはユベントス側が必須と言えるでしょう。
ユベントスがマフィアやウルトラスに便宜を図る理由はない
ユベントス側がマフィアやウルトラスに便宜を図ることによるメリットはありません。しかし、マフィアやウルトラスにとってユベントスは魅力的なクラブなのです。
チャントやバナーの内容でスタジアム閉鎖や罰金を科されるリスクのあるウルトラスは “迷惑な存在” になりつつあります。暴力行為に手を染めるウルトラスは容認できませんし、マフィアが絡むなど論外と言えるでしょう。
ユベントスは公式サイト上で「クラブの従業員や関係者が検察から調査をされたことはない」と発表し、捜査要請に対しては積極的に協力するとコメントしているのです。
自前の最新スタジアムを保有するユベントスは設備を上手く利用することで最高の安全性を提供し、チケットの不正転売を防ぐことが可能です。それによって、マフィアやそれに協力するウルトラスを締め出し、完全に袂を別つこともできるでしょう。
ももクロが導入済みのマッチングシステムが1つの解決策と言えるでしょう。ユベントスがどういった対策を講じるのかに注目です。