厳しい財政状況であると言われているセリエAのチームが移籍市場でやたらと活発に動いているのには理由があります。それは『セリエAの2015年問題』とも呼ばれるほど、リーグの規約が大きく変更されるからです。
変更の骨子と言われるのはおそらく次の3点でしょう。
- トップチームの最大登録選手数に25人枠を制定
- EU 域外選手の獲得条件についての変更
- クラブ財政での収支均衡化
リーグとしてはドイツを参考に各クラブが財政的に健全で競争力を持ち、なおかつ代表チームも強いことを期待したものだと思われます。
財政力という点で他のチームより優位であるユベントスとしては「25人枠」による影響が最も大きいものと予想されるため、対応に乗り出す必要があります。
この「25人枠ルール」には育成組織出身選手4名とイタリア出身選手4名を含めなければならないという通称 “4+4ルール” という付帯条件があるため、ただ良い選手を獲得すればいいという話では終わりません。必要に応じて、選手を放出しなければならないのです。
昨シーズンのユベントスに所属していた選手をベースに「25人枠」をどのように活用していくべきかを考察していくことにしましょう。
1:GK 編
まずは GK です。登録枠の上限が25名ですので、おそらく3人制が採用されることでしょう。
選手 | 国籍 | 重要度 | 特記事項 |
---|---|---|---|
ブッフォン | ITA | ◎ | キャプテン&先発GK |
ストラーリ | ITA | ー | カリアリへ移籍 |
ルビーニョ | BRA | 2014/15 シーズンの第3GK | |
ネト | BRA | ○ | 第2GK(新加入) |
アウデロ | ITA | ユース所属選手 |
ブッフォン選手とネト選手は確定だと思われますが、第3GK をどうするかがポイントです。
出場機会が非常に限定的であることを考えると、アウデロ選手をトップ登録することで育成出身選手を1人増やすことも十分にあり得ることだと思われます。
2:DF 編
次に DF 登録の選手は8名が基準になると思われます。
選手 | 国籍 | 重要度 | 特記事項 |
---|---|---|---|
ロムロ | ITA | ー | ベローナに返却済 |
キエッリーニ | ITA | ◎ | 副キャプテン |
カセレス | URU | ○ | CB、SB、左右問わず |
オグボンナ | ITA | △ | 移籍の噂あり |
バルザーリ | ITA | △ | 34歳 |
ボヌッチ | ITA | ◎ | DFの実質的リーダー |
リヒトシュタイナー | SUI | ○ | 右サイドの要 |
エヴラ | FRA | △ | 34歳 |
マッローネ | ITA | ユース出身 | |
イスラ | CHI | QPRからレンタル復帰 | |
ソーレンセン | DEN | ベローナからレンタル復帰 |
昨シーズン、ユベントスに DF として登録されていた選手のほとんどが「25人枠」に入ることになるでしょう。ただし、そうなるとユース出身選手がいないことが問題点となります。
ダニエレ・ルガーニ選手(エンポリ)の加入が盛んに言われる理由はルガーニ選手がユベントス育成選手としてのプレー経験があるからです。その結果として、トリノの育成選手であるオグボンナ選手が押し出される形にもなると見られています。
おそらく、バルザーリやエヴラといったベテラン勢のポジションを(ユース出身の)ルガーニやマッティエッロが掴み取って欲しいという希望をチームが持っていると考えられます。
3:MF 編
MF についても DF と同じく8名が基準で、DF や FW でもプレーできるユーティリティ選手が数名という形が基本になるでしょう。
選手 | 国籍 | 重要度 | 特記事項 |
---|---|---|---|
ポグバ | FRA | ◎ | 移籍の噂あり |
ペペ | ITA | ー | 契約満了に伴い退団 |
マルキージオ | ITA | ◎ | ユース出身の主力選手 |
コマン | FRA | ○ | FWとしてもプレー可 |
デ・チェーリエ | ITA | ユース出身 | |
パドイン | ITA | ○ | 貴重なユーティリティ選手 |
ピルロ | ITA | MLS移籍の噂あり | |
アサモア | GHA | ◎ | 左SBかWB |
ビダル | CHI | ○ | 移籍の噂あり |
ビターレ | ITA | ユース所属選手 | |
ストゥラーロ | ITA | ○ | 将来の主軸候補 |
ペレイラ | ARG | ◎ | ウディネーゼから買取 |
ケディラ | GER | ◎ | 新加入 |
ユース出身で、レギュラーポジションを確保しているのはユベントスではマルキージオ選手だけです。つまり、育成出身選手をあと3選手確保しなければならないことを意味しています。
昨シーズンはジョビンコ選手が在籍していましたが冬の移籍市場で MLS へと活躍の場を移したことで、同じく育成出身のデ・チェーリエ選手がパルマから復帰しました。しかし、出場機会は得られず “育成枠を満たすだけの選手” という状態でした。
マルキージオ選手に加え、第3GK としてアウデロ選手を登録し、ビターレ選手を引き続きトップチームに加えたとしても、育成選手がもう1人必要です。
「25人枠」が適用されることを考えると、選手を新たに獲得するのであれば、どの選手を放出するかを先に決めておく必要があると言えるでしょう。
4:FW 編
最後に FW 登録の選手ですが、4名が限度でしょう。
選手 | 国籍 | 重要度 | 特記事項 |
---|---|---|---|
モラタ | ESP | ◎ | レアルが買取権を保有 |
テベス | ARG | ボカ復帰の予定 | |
ジョレンテ | ESP | ○ | 残留希望 |
マトリ | ITA | ー | ミランに返却済 |
ディバラ | ARG | ◎ | 新加入 |
マンジュキッチ | CRO | ◎ | 新加入 |
新加入のディバラ、マンジュキッチ両選手に加え、モラタ選手は「25人枠」に入ることが既定路線です。
ザザ選手をチームに加えたいのであれば、ジョレンテ選手を放出しなければなりません。仮にそれがクアドラード選手であったも同じことです。
最悪の場合はユース出身選手を数合わせとして25人枠に登録しなければならなくなることも考慮に入れる必要があります。
トップチームに定着できるユース出身の選手を確保できるプロセスが出来上がるまでは少しドタバタした補強戦略であっても目をつぶる必要があると言えるでしょう。