「ユベントスは2024年1月の移籍市場で中盤 MF の補強に動く」とメディアが有力視していますが、イリング選手のパフォーマンス次第では補強戦略そのものが変わってくるでしょう。起用方法に小さな変化が見られるからです。
『5-3-2 の守備ブロックの標準化』を求めるアッレグリ監督
アッレグリ監督は相手チームに押し込まれた際は『5-3-2 の守備ブロック』で応戦します。
“WB の選手” は担当エリアに WG など相手選手が不在なら、中盤 MF 陣の高さにまで進出。『4-4-2 の守備ブロック』にも変化するオーソドックスな守備体系を採用中です。
ポゼッション重視のチームでも「相手陣内でのボール奪還に成功しなかった場合」は『5-3-2 か 4-4-2 の守備ブロック』にシフトします。
「クロスや斜めのパスを入れられる前に止めようとする」のか「シュートを打たれる前に止めようとする」のかで対応順は変わりますが、どの選手が出場しても同じ強度の守備ブロックが『標準化』の形で求められていることは同じと言えるでしょう。
実は “誤算続き” で不祥事がなくても補強戦略の修正が不可避のユベントス
ナポリからジュントリ FD を招聘した 2023/24 シーズンのユベントスですが、補強戦略は「誤算続き」です。
- コスト削減を狙ってマッケニーとコスティッチの放出に動く
- 交渉は妥結せず、両選手とも残留
- ラビオの抜きん出た守備力
- 左サイドでポジションチェンジをすると『中盤での攻守の厚みが消滅する副作用』が判明
- 左 WB は「サイドライン側のレーンで単騎での貢献度が高いコスティッチ」がポジションを奪取
- マッケニーの成長
- 右 WB として「体躯とサイドラインを活用してボールを守る術」を披露
- ボールロストの確率が劇的に低い “安全地帯” を確立したことで評価と出場機会が高まる
- 中盤 MF 陣が不祥事で手薄になる
- マッケニーが希望する『インサイドハーフ』での出場機会を得る
- 残っていた右 WB のT・ウェアが故障離脱
- プレシーズンに右 WB でテストされていたカンビアーゾが出場機会を得る
- 長所と短所が真逆でポジションチェンジが可能なマッケニーとカンビアーゾのコンビに補完関係が生まれる
不祥事は「完全な誤算」ですし、フロント陣の責任を追及する声は出ないでしょう。
一方で「(フロント陣が)選手の目利きをミスっていたこと」は事実です。「オーソドックスな守備体系だからラビオの代替は可能」との見積もりが誤りだったことで『左 WB の序列』に大逆転が生じたのです。
そのため、「ジュントリ FD が率いる強化部門の判断は常に的確である」と盲信すべきではないでしょう。
『メッザーラとしての基礎的守備』に励んでいる最中と思われるイリング
2023/24 シーズンのユベントスは中盤 MF 陣を「5+1」でスタートしましたが、2023年12月下旬の現時点で「3.5+1」と手薄になっています。だから、WB で最も序列が低いと目されているイリング選手の放出が噂されているのです。
当初の想定 | 現状 | |||
---|---|---|---|---|
MF 陣 | WB 陣 | MF 陣 | WB 陣 | |
ラビオ ロカテッリ ファジョーリ |
カンビアーゾ T・ウェア |
主力 | ラビオ ロカテッリ |
コスティッチ |
マッケニー | ||||
ポグバ ミレッティ |
イリング | 準主力 | ミレッティ | カンビアーゾ T・ウェア |
ニコルッシ | 育成 | ニコルッシ (イリング) |
||
マッケニー | コスティッチ | 放出可 | ー | イリング |
(デ・シリオ) | 出場停止 (離脱中) |
ポグバ ファジョーリ |
(デ・シリオ) |
しかし、これはイリング選手が「左 WB としての出場機会の増加」を強く求めた場合に限られます。
実際に移籍するかは『先方から提示される移籍金』も関係するため、アッレグリ監督は『プランB』の準備を始めていることでしょう。
- イリングが2024年1月の移籍市場で退団した場合:
- A・サンドロを『左 WB の控え』としてスタンバイ
- 後半戦ではデ・シリオも起用可能になる予定
- イリングがシーズン後半戦も残留している場合:
- 『右インサイドハーフ(メッザーラ)』としての「走力」と「右 WB とのポジションチェンジ」は現時点で “既に” 問題なし
- 課題は「『右インサイドハーフ』としての標準化された守備」
- 機能すれば、サマルジッチ獲得の必要性が下がる
2024年1月の移籍市場では「足元を見た移籍金でのイリング選手の獲得オファー」に留まる可能性は十分にあります。その場合は交渉が成立する可能性は低いため、アッレグリ監督は「現有戦力でのやりくり」を強いられることになるでしょう。
だから、イリング選手を “手薄な右インサイドハーフ” の頭数に加えようとすることが『プランB』になり得るのです。
イリング選手の(移籍金で折り合いが付いて)移籍がほぼ内定しているのであれば、負傷による移籍破断のリスクを避けるために起用を見合わせることでしょう。
それが起きていないことは「現状は獲得に関心あり」の段階と思われます。イリング選手が『左右のインサイドハーフ』として計算できれば移籍戦略そのものに影響が生じるため、どれだけのパフォーマンスを示すことができるのかにも注目です。