4月26日に行われたセリエA第32節のトリノ対ユベントスの1戦はホームのトリノが 2-1 で、20年ぶりのダービー戦での勝利を収めました。
この試合の注目点として、移籍市場でも評価の高いトリノの両サイドの選手(ダルミアンとブルーノ・ペレス)をどのように抑えるかが鍵であると戦前に予想を立てていました。3-5-2 (見方によっては 3-3-2-2 とも表現可能)のトリノに対して、ユベントスのアッレグリ監督が選択したのは 4-3-1-2 でした。
GK: ブッフォン
DF: リヒトシュタイナー、ボヌッチ、オグボンナ、パドイン
MF: ビダル、ピルロ、ストゥラーロ、ペレイラ
FW: モラタ、マトリ
前線のFW2人とトップ下に入ったペレイラの3名で相手の3バックにプレッシャーをかけて、ボールを捨てさせショートカウンターを狙うというプランを用意していたのですが、思惑は即座に外れました。理由は単純でユベントス守備陣がラインを上げ切れなかったことで、間延びが発生していたからです。
相手ペナルティエリア近くでボールを保持する3バックにまでプレスをかけるのであれば、ユベントスの守備陣もセンターライン近くにまで押し上げる必要があります。ですが、スピードのあるブルーノ・ペレスに裏のスペースを与えるのが怖いということでラインを低く設定したことが裏目に出ました。
ラインを低く保ちたいが相手の3バックにも圧力をかけたいというのなら、相手の3バックを(わざとプレスをかけないで)センターライン近くまでおびき寄せれば良かったのです。そうすれば、相手3バックの裏のスペースをモラタ、マトリ、ペレイラといったユベントスのFWたちのスピードが威力を発揮できる舞台があったと言えるでしょう。
つまり、中途半端なプランであることが試合序盤の段階でわかり切っていたにも関わらず、有効な修正ができなかったことがダービー戦での敗戦の要因であると言えます。『試合巧者』と称されるユベントスの姿はこのダービー戦では見ることができませんでした。
トリノとのダービー戦に出場したユベントスの選手への個人的な採点は次のとおりです。
GK: ブッフォン 5.5
失点したシーンはどちらもGKの責任ではない。防げたらラッキーというレベルのものである。だが、キャプテンとして試合全体を通して今ひとつだったチームを鼓舞することはできたのではないだろうか。
DF: リヒトシュタイナー 5.5
1失点目の時はファーにいたマキシを押さえ込んでおり、ダルミアンを見る責任は彼のものない。試合を通して守備に追われており、得意の攻め上がりはあまり効果を発揮することができなかった。
DF: ボヌッチ 5.0
クアリアレッラに鼻先でボールを逸らされ、それが先制点に結びつくなど良いパフォーマンスではなかった。ラツィオ戦で見せた安定感をどこかに置き忘れて来たようである。
DF: オグボンナ 6.0
トリノの下部組織育ちということもあり、ダービー戦への意気込みがプレーで示されていた。相手FWにやられたのは1対2の状況で2点目を決められた時だけであった。今日のプレーで失格の烙印が押されるのであれば、レギュラー陣が出た全試合はクリーンシートが続いているであろう。
DF: パドイン 5.0
ブルーノ・ペレスのスピードを気にするあまり、何もすることができず。
MF: ビダル 5.5
体調面にもう不安はないようだ。だが、どれだけ体力面に問題がなくても、間延びしたスペースを1人で埋めることができる選手は存在し得ない。ストレスを溜め込んだことでゴール前での冷静なプレーが鳴りを潜めていた。仮に1失点目でダルミアンを止めれた可能性があったとすれば、ビダルだけだっただろう。
MF: ピルロ 6.5
FK、視野の広さ、パスの精度が依然として世界最高峰であることを証明した。だが、それは個々の評価。守備でクアリアレッラにあっさり突破された所を見ると、オープンな展開やスペースが生まれやすい展開での起用に不安がよぎる副作用があることも合わせて証明する結果となった。
MF: ストゥラーロ 5.0
良く言えば、荒削り。悪く言えば、雑。走力とスピードがチームでも有数なのはプレーから伺い知ることができる。しかし、トラップが大きくなりがちであり、そこを狙われ逆カウンターの起点になっていることも事実である。現時点で実力不足であることを否定できないが、厳しい局面で繊細なボールコントロールができるようになれば目に見える成長を遂げたと賞賛されるだろう。
MF: ペレイラ 5.5
チーム戦術に従い、トップ下のポジションから猛然と相手CBのグリクにプレスをかけ続けた献身性は評価できる。だが、最前線で躍動するタイプの選手ではないだけに空回りだった感は否めない。
FW: モラタ 5.5
相手チームの研究が進んだことで、徐々に脅威が失われつつある。ボールを持ち出すスペースを消される守備網を引かれた時に、どのようにシュートまで持ち込めるかが評価基準となるだろう。
FW: マトリ 4.5
(フリーでの)ボレーシュートの空振り。これが彼のハイライトだった。アッレグリはマトリを評価しているが、ミラン時代に15試合1ゴールの記録だったFWをフル出場させた理由を説明する方が困難だ。
FW: テベス 5.5
モラタと交代で65分から出場。しかし、トリノが人海戦術でゴール前を固めており、スペースを作り出すことすらさせてもらえなかった。テベスにチチャリートのようなスーパーサブ的な働きを期待することが間違っている。
MF: ペペ 6.0
ペレイラと交代で78分から出場し、右サイドからクロスを供給するという役割はできていた。だが、高さのあるトリノCB陣に空中戦一辺倒のクロスでは得点チャンスは少ないだろう。グランダーの速いクロスやマイナスの折り返しで、2列目からのシュートといったバリエーション不足が露呈する結果となった。
FW: ジョレンテ ー
86分にパドインと交代で出場。出場時間が短いため、評価の対象外。
アッレグリ監督 4.5
チャンピオンズリーグ後の試合であり、主力選手たちのコンディション不良もあり、ターンオーバーを選択した理由は理解できる。だが、トリノ用に準備したゲームプランは明らかに失敗であった上に修正することも出来なかった。ジェノアに今シーズンの初黒星を喫したときに「リーグが終わった時に2位より1ポイント上にいれば問題ない」と自分が発言したことを忘れていたのだろう。勝ちを意識しすぎるがあまり、足下をすくわれるという典型的な試合であった。