ユベントスが株主総会に向けて先行公開した 2024/25 シーズンの年次報告書(PDF)で「アルトゥール選手との契約を当期中に延長した」と明記していましたので紹介いたします。

2024年12月31日時点では2026年夏までの契約であったため、ジローナへの期限付き移籍を機に契約を1年延長したと言えるでしょう。
今回の契約延長により、アルトゥール選手の減価償却費は下表のように変化しました。
| 契約 | 減価償却費 の総額 |
償却済 | 残存簿価 | ||
|---|---|---|---|---|---|
| 額 | 変化量 | ||||
| '23年12月末 | '26年夏 | 80.6 | 53.4 | 27.2 | (5.5) |
| '24年6月末 | 58.8 | 21.8 | (5.4) | ||
| '24年12月末 | 64.3 | 16.3 | (5.5) | ||
| '25年6月末 | '27年夏 | 67.6 | 13.1 | (3.2) | |
従来では「年間1090万ユーロの減価償却費」でしたが、契約期間が1年延びたことで「年間655万ユーロ」に減少。
年間435万ユーロ。半期で200万ユーロ強の圧縮となりました。ただし、減価償却費の計上時期と期間が変わっただけです。この点に留意しなければならないでしょう。
アルトゥール選手の『立場』ですが、契約期間に関わらず構想外であることに変わりありません。
2025年夏の移籍市場で袂を分かつことをしなかった理由は「その時点での残存簿価が 2024/25 シーズンの決算で追加計上されてしまう」から。UEFA から FFP 違反で調査されることが濃厚だった状況でそれはできません。
しかし、2025年夏の移籍市場閉幕後にアルトゥール選手との契約を解消した場合は「2025/26 シーズン以降の決算期で清算」することが可能になります。
この狙いでアルトゥール選手を母国ブラジルのグレミオに貸し出したのでしょう。アルトゥール選手の獲得に費やした移籍金は “ユベントスが” 償却するしかないからです。
そもそものミスはピアニッチ選手とアルトゥール選手の交換トレードを敢行するに至った『補強戦略』です。その影響が2027年夏まで尾を引くことは現フロント陣も認識しなければならないでしょう。
“高額な移籍金を費やして獲得に至るまでの経緯に問題があると見られるオペレーション” を反面教師になることができるのかに注目です。