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2024年夏の移籍市場におけるジュントリ FD (とチアゴ・モッタ監督)への中間査定

 2024年夏の移籍市場が閉幕するまで1ヶ月を切りました。折り返し地点は過ぎているため、ユベントスのジュントリ FD が行なった交渉に関する中間査定としたいと思います。

 「『機能美を兼ね備えたアグレッシブかつソリッドなチーム』を作ろうとするも予算が底を突いたことで計画は1年以内に頓挫する」という現状であり、厳しい状況と評さざるを得ないでしょう。

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ジュントリ FD は就任1年目で経営指標を悪化させている

 まず、ジュントリ FD は今年で就任2年目。ユベントスの “責任者” として、通算3度目の移籍市場を迎えます。

表1: ユベントスの決算状況【単位:百万ユーロ】
2021/22 2022/23 23/24
前期 通期 前期 通期 前期
売上高
… (A)
223.1 443.4 276.2 507.7 173.3
選手年俸・
スタッフ費用
161.7 310.8 131.3 255.4 128.2
選手登録権
への費用
13.4 31.9 4.9 12 10.4
選手登録権
の償却
84 173.4 74.6 159.1 60.1
Squad Cost
… (B)
259.1 516.1 210.8 426.5 198.7
(B) / (A) 116.1% 119.1% 76.3% 84% 114.7%

 そのジュントリ FD が引き継いだチームのスカッドコストは 84%。

 過去に指摘した片野道郎氏の記事を根拠に「ジュントリ FD はスカッドコスト 112% のチームを引き継いだ中で良くやっている」との主張は事実誤認です。

 むしろ、問題なのは「ジュントリ FD の就任1年目の 2023/24 シーズン前期の人件費(選手年俸・スタッフ費用)が前年同期と300万ユーロしか変わらないこと」です。

表: 高年俸と目されるユベントスが保有権を持つ選手
Po 選手名
推定年俸(税別)
22/23 23/24 24/25
FW ヴラホヴィッチ 24 €7m €7m €12m
GK シュチェスニー 34 €6.5m €6.5m €6.5m
MF アルトゥール 27 (€5m) (€5m) €5m
DF ブレメル 27 €5m €5m €5m
FW キエーザ 26 €5m €5m €5m
DF ダニーロ 33 €5m €5m €5m
MF ポグバ 31 €8m (€8m) 🚫
MF ラビオ 29 €7m €7m
DF A・サンドロ 33 €6m €6m
WG ディマリア 35 * €7m
DF ボヌッチ 36 * €6.5m 🚫
MF パレデス 29 * €5m
DF クアドラード 35 * €5m

 ユベントスは2023年夏に契約満了などで “推定年俸500万ユーロ以上と目される高給取り” が4選手も退団。ドーピング問題の件でポグバ選手の年俸も支払停止に踏み切っていれば、5選手分の年俸が浮いているはずだからです。

 しかし、実態は「隠れ年俸が支払われている」と言わざるを得ない決算内容が浮き彫りとなったのです。責任者であるジュントリ FD の手腕が問われることは避けられないでしょう。

 

構想外を通告してしまうと “買い手優位” の市場での取引を強いられる

 移籍市場でのジュントリ FD の振る舞いとして不味いのは「クラブが構想外を告げた選手が『市場評価額』または『クラブの希望額』で売却できる」と勘違いしていることです。

 選手に構想外を告げるのは『ご自由にどうぞ』の値札を付けることと同義であり、移籍金が欲しい場合は「 “チームの構想に入っている選手” である」とクラブの対応で示さなければなりません。

 ユベントスでは “ジュントリ FD が2年連続で構想外の扱いにした” マッケニー選手とコスティッチ選手が『クラブ希望額』で売却できることはないでしょう。

 「出場機会の少なさに不満を覚えている市場評価額との乖離のある選手」ではなく「ユベントスが不要戦力と認定した市場評価額のある選手」であり、買い叩かれてしまうことになるからです。

 

“スカスカの選手層” と “空っぽの金庫” で2025年夏以降の移籍市場はどうするのか

 ジュントリ FD はチアゴ・モッタ監督と『機能美を兼ね備えたアグレッシブかつソリッドなチーム』を作ろうとしているのでしょう。ただ、現状では「選手層の薄さ」は無視できません。

表1:トップチーム登録の選手(2024年8月初旬時点)
  選手名
戦力 GK (3) ディ・グレゴリオ、23: ピンソーリョ、36: ペリン
DF (5) 3: ブレメル、4: ガッティ、6: ダニーロ、27: カンビアーゾ、32: カバル
MF (5) 5: ロカテッリ、19: テュラム、20: ミレッティ、21: ファジョーリ、26: D・ルイス
FW (3) 9: ヴラホヴィッチ、15: ユルディズ、22: T・ウェア
  選手名
売却可

構想外
GK 1: シュチェスニー
DF 2: デ・シリオ、24: ルガーニ、33: T・ジャロ
MF 11: コスティッチ、16: マッケニー、41: ニコルッシ、アルトゥール
FW 7: キエーザ、14: ミリク

 『戦力』に認定されているトップチームの選手だけでは「セリエAに専念」するのが関の山。チャンピオンズリーグやコッパ・イタリアは早期敗退すべき選手層の薄さです。

 しかも、新戦力を獲得しようとしても余剰戦力の選手には構想外を通告済み。彼らが多額の移籍金をクラブにもたらすことはないでしょう。

 また、Bチーム(= Next Gen)から輩出された若手超有望株は今夏の移籍市場で売却が敢行され、“次の若手超有望株候補” は見当たりません。

 2025年夏以降の移籍市場で新戦力を獲得したい場合は「現時点で『戦力』と見なされている選手を高値で売却すること」が不可避であるため、「ユベントスを取り巻く現状は好ましくない」と言わざるを得ないでしょう。

 33歳のダニーロ選手との契約は2025年夏で満了しますし、来夏には “即戦力の右 SB” を確保する必要性があるなど「今夏の移籍市場で資金投入は概ね完了」とはならないからです。

 

 チアゴ・モッタ監督のチーム作りは『サッリ監督』と同様になるでしょう。『ナポリで 2022/23 シーズンにスクデットを獲得したスパレッティ監督のチーム』も実際には「レギュラー選手の属人化」で連動性を担保していたからです。

 「チームの標準化」で連動性を担保する前に「レギュラー選手の属人化」で実績を残そうとするアプローチは間違いではありません。まずは及第点に相当する結果を残すことができるのかに注目です。