得点力不足の解消まで「あと1歩」と言えるユベントスですが、そのためには「CF にシュートを放つためのスペースと時間を提供すること」が必要です。
ヴラホビッチ選手は相手 DF との駆け引きで何度も前後に駆け引きを繰り返すことで『スペース』と『時間』を確保するタイプであり、ボールを持つ味方選手がその動きに合わせて『横パス』を付けられるかが今後のポイントになるでしょう。
4月9日に行われたセリエA第32節カリアリ戦でのプレーを例に挙げたいと思います。
前半46分のカウンターでのプレー選択
まずはデ・リフト選手の先制ゴールの直後に起きたプレーです。デ・リフト選手がボールをヘディングで跳ね返し、下がって来たディバラ選手のポストプレーを予想したクアドラード選手が動き出します。
DF の背後にボールが出ることを確認したクアドラード選手はスピードアップ。
“相手陣内にドリブルで侵入したクアドラード選手” を確認したヴラホビッチ選手はゴール前に向けたスプリントを開始します。
一方のクアドラード選手は「正確なクロスがゴール前に届く位置」まで持ち上がるとスピードダウン。中の状況を確認します。
ゴール前には『ヴラホビッチ選手が勝負をするためのスペース』があったのですが、クアドラード選手は『クロス』を選択せず。『切り返し』を採ります。
カリアリの GK クラーニョ選手は「ゴールエリア内に留まったまま」でしたので『クロス』に賭けても良かったでしょう。この状況で『クロス』が入って来なかったことは CF がフラストレーションを溜める大きな理由になるからです。
良い崩しでシュート寸前まで持ち込めた66分のプレー
次に、シュート寸前まで持ち込めた良い崩しを見せたシーンです。66分にキエッリーニ選手がボールを保持し、ヴラホビッチ選手が “裏抜け” を狙ったことでカリアリの守備陣が下がります。
それによってディバラ選手を見ていた DF が遠くなったため、ディバラ選手をボールを要求。キエッリーニ選手が縦パスを通します。
ディバラ選手がボールを受けたことでカリアリはカルボーニ選手がチェック。右ハーフスペースに空白地帯が生じ、そこへクアドラード選手が突進します。
“左利きのディバラ選手” は「時計回りのターンで左足を使ってパスを送る」との予想に反し、『反時計回りのターン』を選択。カルボーニ選手の背後にパスを送ります。
スルーパスを受けたクアドラード選手はシュートコースは消されたため、『切り返し』を選択。
ただ、それでもシュートコースはロバート選手に切られており、『ラストパス』でヴラホビッチ選手に託します。
ここで残念だったのは「ヴラホビッチ選手の足下にボールが入らなかったこと」でしょう。クアドラード選手は「ヴラホビッチは右に動いて時計回りのターンからワンタッチシュート」を予想したのかも知れませんが、ヴラホビッチ選手は『トラップからのシュート』をイメージして待っていたからです。
この最後の部分が噛み合えば、ゴール期待値(xG)は高まるため、得点力も必然的に向上するはずです。選手間での相互理解が順調に進むかがポイントと言えるでしょう。
ケーンは『カウンター時の走路』を選択する際にクレバーさを見せる必要がある
カリアリ戦のプレーで反省する必要があるのはケーン選手です。82分にカウンターを仕掛けようとした場面で採った走路が良くなかったからです。
ユベントスはアルトゥール選手がボールを持ち上がり、前線に残るヴラホビッチ選手に付けます。
ボールを収めて味方の上がりを待つヴラホビッチ選手は「ケーン選手のサポート」を見て『パス』を選択します。
この時、ヴラホビッチ選手は『サイドライン側への落とし』を選択し、ケーン選手は『中央の走路』を選択。結果として無人のスペースにボールは転がり、ベッラノーバ選手(カリアリ)がボールを回収しました。
このプレーは「ケーン選手の判断の不味さ」が指摘されても仕方のないことでしょう。中央では「相手のライン間でボールを受ける」ことになるため、ボールロストの可能性が高くなります。
また、“左利きのヴラホビッチ選手” は相手を背負った状態では「ケーン選手から見て左側にパスを出しやすい」ため、左サイドのライン側にボールが出やすいことが理由です。
デ・シリオ選手が左サイドでプレーする際にヴラホビッチ選手のポストプレーを巧みなタイミングでサポートしており、連動した攻撃を展開しているコンビは存在します。
したがって、他の選手たちが成功例をどれだけ模倣できるかが鍵になるでしょう。
ヴラホビッチ選手への『縦パス』に関しては「球足の速いボールが追い付く」ため、ヴラホビッチ選手の動きを何度も確認しなくてもパスは通ります。しかし、『横パス』はこれまで以上に確認しないとズレてしまうのです。この部分を改善し、チームの得点力を向上させてくれることに期待です。